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第4話 北野天満宮②

お待たせ致しましたー

 神となった人間からの施し。


 元飼い主だった菅原(すがわらの)道真(みちざね)。通称、菅公(かんこう)


 結界の中に、美兎(みう)火坑(かきょう)を招き入れてから装いを本来の装束に戻して。


 可愛らしく慌てる美兎を、驚かせているばかりだった。



「……こちらにおいで?」



 閉じた扇子で来い来いと手招きしたので、火坑は美兎の手を軽く引いた。



「行きましょう、美兎さん?」

「は、はい……」

「大丈夫。終わったら、元の時間に戻してあげるよ」



 さあ、こっちだ。と、案内された場所は(やしろ)の中で。やっぱり誰もいなくて、火坑達だけだった。


 道真には、開けた舞台のような広間に到着するなり。木と布で出来た椅子に座るように言われた。火坑はただの猫だった頃は、たまにこのような椅子の上で昼寝をしていたと思い出した。


 まだこの空間に慣れていない美兎はそわそわしていたが、そんな様子もとても可愛らしかった。


 キョロキョロと首を動かしている彼女を見ていたら、道真が(さかき)の枝で作られた玉串(たまぐし)を持ってきた。


 二本を美兎と火坑にそれぞれ渡して、これからの作法を教えてくれた。



「えっ……と、えっと」



 慣れない神事の儀式の作法に、美兎は戸惑っていたが火坑が教えればわかったようだ。



「私はヒトから成った神だが、祝詞(のりと)は特にない。君達が終えたらすぐに行おう」



 と言われたので、美兎とタイミングを合わせて玉串を回して。最後に道真の横にある台の上に、それぞれ置いたのだった。



「……険しき道がないとは言わん。だが、君達が手を取り合えば、その道が越えられると言えよう。幾年経ようとも、君達の絆は(ほど)かれまい」



 道真が扇子を使いながら、舞うように舞台を歩くと。火坑の目には扇子から紫色の粒が生じ、こちらに浮遊してきたら美兎と火坑に降り注いできた。



「……綺麗」



 空木(うつぎ)滝夜叉姫(たきやしゃひめ)のお陰で、霊力と妖力が高まった彼女にも見えていたのだろう。


 ちらっと横を見れば、まるで少女のように顔を赤らめていた。


 光が全部二人に降り注いだら、道真はゆっくりとまた扇子を閉じた。



「簡易に見えて強固。これで、妖などからも引き離されはしない。未来永劫とまではいかないが、余程の神でなければ大丈夫だよ?」

「……大神(おおかみ)はどうでしょうね?」

「彼なら、君達を応援しているから大丈夫だと思うよ?」

「……そうですか」



 それならよかった、と火坑は安心出来た。何気に、美兎は妖や神には好かれているからだ。


 だが、生涯の伴侶と認めた彼女を、誰にも渡すつもりはない。


 儀式を終えて、社から元の玉砂利の参道に戻ったら。道真は手を振りながら扇子を開いて、彼は姿を消して美兎と火坑の元いた時間に戻したのだった。



「わ、わ!?」

「美兎さん、あまり驚かれないように」

「そ、ですけど」

「ふふ。(まこと)さんの粋なはからいでしょうね?」



 火坑の目に飛び込んできたのは、まだ花嫁行列が終わっていない列だった。


 もし、美兎と将来結婚式をする予定になったら。


 どう言う式で開くかはわからない。


 まだまだ数年以上先なので、ゆっくりと決めて行けばいい。


 とりあえず、道真に直接会ったが参拝はきちんとしようと、美兎の手を握ってから参拝客の列に混ざったのだった。

次回はまた明日〜

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