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第6話『変わり種ソフトクリーム』

お待たせ致しましたー

 お土産屋で、八つ橋の試食をしたりしてから購入して。


 真穂(まほ)にはトイレでこっそり彼女の分を渡すついでに、その購入した紙袋を預けてから。


 ほぼほぼ手ぶらに戻り、火坑(かきょう)と二年坂に向かう。もちろん、手は繋いで。


 石造りの小径だと転けやすいので、まだ慣れない腕組みだと足元がおぼつかないから。けれど、指を絡めてしっかり繋ぐのも美兎(みう)は好きだった。



「疲れていませんか?」

「全然です!」



 着物だったら疲れてたかもしれないが、普通の服装に加えて靴はスニーカーだ。火坑から事前に服装については言われたので、たしかにこの格好で正解だった。可愛くピンヒールにしていたら、絶対音を上げていたはず。


 二年坂に行く途中の大きなカフェで、軽くランチをして名物のコーヒーを堪能して。


 ほどほどに小腹を満たしたら、少し急な石畳の階段を降りて到着した二年坂は。


 清水寺やここまで来るまでに見たお土産屋さん達とはまた違った、華やかな雰囲気の通り道になっていた。



「どうです?」

「いっぱいお店がありますね!!」

「一応八つ橋も売っていますが、雑貨屋がメインの通りですからね? あと、少し変わったソフトクリーム屋さんも」

「ソフトクリーム屋さんですか?」

「ええ。食べたばかりですし、軽く見て回ってからにしましょう?」



 火坑がそう言うので、竹細工だったり、美兎が以前美樹(みき)から贈られたのとは全然違う造りのかんざしだったり。


 美樹達のお土産を買ってから、その例のソフトクリーム屋さんに行ったのだが。


 普通のソフトクリームとは違う店構えと、広告のタペストリーには。


『かぼちゃと栗のソフトクリーム』と『抹茶ソフトクリーム』が名物らしいが。


 受付兼会計の窓の横にあるメニュー表にも、そのソフトクリームの写真があったが普通のソフトクリームとは違っていた。



「ラム酒にハチミツ……? オリジナルペースト?」



 ただソフトクリームに混ぜるだけでなく、ペーストがコーンの中に載せてあるらしい。なんだかとっても美味しそうだった。



「いらっしゃい」



 店員は、男性ひとり。しかも、初老の男性だったのが意外だった。



「こんにちは、松村さん。ご無沙汰しています」

「! ああ、香取(かとり)さん! 十年ぶりですね? あの頃より大人になられて」

「それは……さすがに三十手前ですしね?」

「はは!」



 どうやら知り合いらしい。


 この男性は人間なのかどうなのか美兎にはわからないが、人通りが多いので話を合わせようと思った。



「はじめまして」

「! はじめまして、店長の松村と言います。香取さんの彼女さんですか?」

「は……はい!」

「可愛らしいですね? そうだ、うちの目玉商品。少しおまけしちゃいましょう」

「い、いいんですか?」

「せっかくの再会と、香取さんに彼女さんが出来た記念です。うちのメインはこのメニューにもある通りかぼちゃのと抹茶があるんですが、普通のも出来ますよ?」

「あ」



 抹茶は、手作りのペーストを使用しているらしく。しかも、三時間限定の賞味期限で売れなかったら一回一回廃棄処分するそうだ。


 もったいないと聞くと、松村は目を輝かせたのだった。



「コーヒーの出来立ての味が際立っているように、抹茶も鮮度などがあるんです。その分こだわっているので、自信はあります!」

「そうなんですか?」

「……じゃあ。抹茶は僕が。美兎さんはかぼちゃにしませんか?」

「はい!」

「では、早速作りますね?」



 そして数分後。


 ワッフルコーンからあふれんばかりのソフトクリームに、かぼちゃと栗のペーストは本当に美味しそうで。


 火坑の抹茶も、仕上げに抹茶がたっぷりふりかけてあるなど、豪華だった。


 付属のスプーンでペーストを少しソフトクリームと一緒にして口に運べば。


 今まで食べてきた、ソフトクリームはなんだったかと思うくらい、美味しくて飛び跳ねてしまいそうだった。



「美味しいです! ラム酒の風味も程よくて、すっごく甘くて滑らかで。アイスの方も美味しいです!」

「ありがとうございます。僕の手作りなんですよ」

「わあ」

「……やはり、ここのソフトクリームは食べやすいですね。甘いものがあんまりな僕でも食べれます」

「はは。自信作ですからね?」

「美兎さんもひと口どうです?」

響也(きょうや)さんも」



 とシェアしてたら、松村がさらにニコニコし出した。



「仲がよろしいことで。……………………菅公(かんこう)から聞いていますよ?」

「え?」

「ふふ。こちらの松村さんも、実は……なんですよ」

「ええ!?」



 やはり、人間ではなかったのか。


 こっそり事情を聞くと、妖ではなくて神の使いのような存在らしく。


 でも、わりかし暇なので、少し離れたこの二年坂で商売を始めたら。テレビなどでも取り上げられるくらい、有名になったそうだ。


 だが、少人数で経営したい意思を変えずに、今の店舗で満足しているらしい。



「さ。飲み物も欲しいでしょう? 春と夏限定ですが、ノンアルコールのソーダカクテルがあります」



 そちらはサービスしてもらい、美兎はラベンダー。火坑はライチをもらい。ゆっくりソフトクリームとカクテルを楽しんでから、松村の店を後にしたのだった。

次回はまた明日ー

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