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第3話 謝罪から

お待たせ致しましたー

 芙美(ふみ)の一方的な思い込みで、.美作(みまさか)と接触出来ないでいる。


 その誤解をどう解くべきか、第三者としてわかりかねていた美兎(みう)だったが。せめて、仲直りのようなものが出来たらいいなとは思ったのだ。


 芙美はホットモカを飲み終えると、またテーブルに顔を伏せていた。



「……芙美さんは、美作さんと仲直りしたいと思ってますか?」



 美兎が質問すると、芙美はこくりと頷いた。



「……仲直り……したい」

「だったら、会いましょう? LIMEでもいいかもしれないですが、謝るにしても直接の方がいいと思います」

「……楽庵(らくあん)とかでー?」

「それは芙美さん次第ですが」

「…………うん」



 と。決断したら早いのか、芙美はポケットからスマホを取り出して。おそらく、美作にLIMEでメッセージを送ったのだろう。


 のんびり屋に見えて、流石は情報屋と言うべきか。


 美兎も美味しいブレンドコーヒーを飲みながら待っていると、芙美が小さく声を上げた。



「来ました?」

「……うん。今楽庵に向かっているって〜」

「行きます?」

「…………行く〜」



 季伯(きはく)に勘定をお願いしようとしたら、芙美がささっと払ってしまい。彼女からは『相談のお礼』と言われたので受け取るしかなかった。


 とりあえず、楽庵に行くと。引き戸を開ければ、珍しく煙草の香りがしたのだった。



「あ」

「あ」



 奈雲(なくも)三兄弟はいなかったが、カウンターで美作が煙草を吸っていたのだ。吸うのを見るのは初めてかもしれない。


 美作は芙美と目が合うと、すぐに煙草をやめて灰皿に入れて消したのだった。



「こ、こんばんは〜……」

「ども……」



 少々気まずい雰囲気ではあるが、美兎もいるので中に入ることにした。



「いらっしゃいませ」



 火坑(かきょう)は火坑で、いつも通りの涼しい笑顔のままだ。何か聞いているかもしれないが、本人達がいるので聞くのはやめておこう。


 とりあえず、手土産のフィナンシェは渡しておいた。


 まだまだ寒いので、すぐに熱いおしぼりと煎茶が出てきた。


 芙美は必然的に美作の隣に腰掛けることになったので、ギクシャクしている状態。



「そ……その……」



 けど、謝るつもりでいたらしく。すぐに声をかけようとしていた。



「……いや。俺の方が悪かったです」

「え?」

「俺が……曖昧な態度したから、芙美さんに誤解を招くことしちゃったし」

「え、だって……美作さん、困っていたから」

「いや。照れてただけですよ?」

「はえ!?」



 おっと。これはもしかして、もう切り出すつもりか。


 美兎もだが、火坑も聞いてていいのかと思ったが。火坑から目配せで座敷席にと言われたので、湯呑みとおしぼりだけを持って移動することにした。


 二人は自分達の話に夢中になっているせいか、美兎の行動に気づいていなかった。



「だって、あれカップル限定商品だったじゃないですか? 俺は彼氏じゃないのに、勘違いされて……まあ、しばらく彼女いなかったからどう反応すればいいか困っただけですよ?」

「いやじゃ……なかったんですか〜?」

「嫌だったら、誘われる時に断っていますよ?」

「よ……よかった〜……」



 座敷席から、そろっと後ろ姿を確認すると。芙美はカウンターに突っ伏していたのだった。



「……俺。逆に芙美さんも嫌だったんじゃないかって。勘違いしてました」

「ふぇ?」



 これはまさか、と美兎は覗きながら唾をごくんと飲んだ。



「俺が彼氏だって勘違いされて。嫌な思いしたのは芙美さんじゃないかって」

「そんなことないです!」

「え?」

「お……おこがましいと思ってます……けど。美作さんが彼氏だったら、いいんじゃ……ないかって」

「……芙美さん?」



 顔を上げた芙美が美作を見ると、大胆に美作の手を掴んで、ぎゅっと握ったのだった。



「こんなダメダメのっぺらぼうですけど! 美作さんが……辰也(たつや)さんが好きなんです! 付き合ってください〜!」



 まさかの大胆な告白。


 火坑はよく向かい側の厨房で、調理しながら聴けるものだ。と、少し感心してしまった。


 美作の方は、顔を真っ赤にしていたが。すぐに、掴まれてた手に空いてる手を重ねたのだった。



「……俺も。芙美さんが好きです! 俺の彼女になってください!」

「はい〜!」



 無事にハッピーエンドとなったわけである。


 よかったよかった、と美兎もだが火坑も拍手で祝い。


 四人でささやかだが、お祝いの席を開くことになったのである。

次回はまた明日〜

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