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第3話『お返しのフロランタン』①

お待たせ致しましたー

 まさかまさか。


 ダイダラボッチと共に菓子作りをすることになるとは。


 ろくろ首の盧翔(ろしょう)は、畏れ多いとまだビクビクしているが。


 更紗(さらさ)は更紗で。これから作るフロランタンの材料に目を輝かせていた。


 妖でも特殊な位置。総大将のぬらりひょんともまた違う位置にいるダイダラボッチは、ほかの妖と一線を画している。


 そんな彼が、恋人へのお返しを手作りしたいと言い出したのだ。位はなんであれ、彼も一人の存在に変わらないのだろう。



「更紗様、まずは手を洗いましょう?」

「うん」



 料理初心者に等しいが、手を洗うくらいは認識しているようだ。長い金と水色が混じった不思議な色合いの髪を、火坑(かきょう)が結えてやって。隆輝(りゅうき)からエプロンを借りて着込んだ。



「えーっと。バターは常温のを買えたからすぐ取り掛かれる。グラニュー糖は、きょーくん。計っておいてくれるかな?」

「いいですよ」



 ジャンルは違えど、料理人は料理人。さすがに手際がよかった。


 盧翔には、バターを切ってもらい。更紗には初心者なので、粉を振るう作業をしてもらうことに。



「ここに粉を入れます。で、ここを握ると、下のボウルの中に綺麗に振るった粉が出てくるんです。全部落ちるまでお願いします」

「わかったよ〜」



 隆輝がちょっと見本を見せただけで、子供のように目を輝かせたが。振るうとなると、真剣に向き合っていた。やはり、ただの妖ではないからだろう。


 その間に、隆輝はレモンの皮をすりおろして。専用のビニール袋を棚から持ってきた。



「じゃ、次は。バターにグラニュー糖を入れて切るように混ぜていくよ?」



 ここからは、全員それぞれ自分の分を作るようにするので。全員同じ工程をするのだ。


 更紗が一番心配だったが、隆輝がすぐ隣にいたお陰か真似て同じように出来ていた。飲み込みが早い。



「次は。卵黄、俺がすりおろしたレモンの皮。バニラビーンズに、更紗様が振るった薄力粉を入れて。また同じように混ぜていくよ?」



 順番に入れて混ぜていけば、綺麗な卵色の生地が出来上がる。まとまってきたら、手でまとめて。隆輝が持ってきたビニール袋に入れて。



「本当は十二時間とか寝かせたいけど。そこまで時間がないから、あとで妖術使うね?」



 その間に、少し後片付け、と。ここも初心者の更紗に教えながら進めていき。生地に時短の妖術をかけてから、袋ごと麺棒で伸ばす方法を教えていく。



「直接でもいいけど。袋の上からだと汚れにくいし綺麗に伸ばせるので。だいたい厚みは3mmくらい。ほんと薄いって思うくらいかな?」

「ねえねえ、隆輝。これどんなお菓子になるの〜?」

「クッキーみたいなお菓子ですね? けど、残りの材料で飴の部分を作って。生地の上で焼いちゃうんです」

「? うーん。食べたことないなあ〜?」

「まあ。店で作るとこも少ないですしね?」



 とりあえず、生地を薄く伸ばして。順番にオーブンで焼いていく。隆輝は仕事柄試作を自宅でもするので、二段式オーブンが二つもあるのだ。


 焼いたら、次はアパレイユと言う飴の部分である。



「生クリームも入れるんですね?」



 改めて材料を見て、火坑が感心していた。



「口当たりが滑らかになるしね? スライスアーモンド以外を鍋に入れて、すこーし色づくまで鍋で煮ていくよ?」



 軽く煮立って、色がほんのりついた瞬間を逃さず。アーネストスライスを入れて混ぜて。


 出来上がったら、焼いた生地の上に流し込み。広げたら、また少し焼いていく。



「粗熱が取れたら切り分けるよー? 完全に冷めてから切ると、アパレイユがガチガチになって割れちゃうから」

「じゃ、僕がコーヒーを淹れましょう。更紗様はコーヒーで大丈夫ですか?」

「ん〜〜……牛乳とか砂糖欲しい」

「カフェオレですね? 盧翔さんは?」

「お、俺はブラックで」



 まだまだ、若造故か更紗に対して緊張しているのだろう。見てて微笑ましく感じるが。

次回はまた明日〜

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