表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/226

第6話 心の欠片『オム焼きそば』

お待たせ致しましたー

 不思議な(えにし)がこの店にはある。


 ぬらりひょんの間半(まなか)は、本当に度々しか訪れていないのだが。


 今日の客人は、皆タイプは違うが可愛らしい人間の女性ばかり。


 中でも、今日界隈デビューしたばかりの田城(たしろ)と言う女性。


 他の二人に比べるとかなり明るくて、好奇心旺盛。


 彼女が、最近界隈では話題になっている、火車(かしゃ)風吹(ふぶき)と付き合うことになった。あの根暗でメカクレな陰湿野郎が、まさか、とは思ったりもしたけれど。


 対照的な女性を想うことになったとは。まったく、ヒトではなくとも、ヒトが好きなのに、ヒトの臭いはダメだったのが。


 大した進歩だ。かく言う、間半の孫も似たような感じではあったが。


 今日は久しぶりにひ孫の顔を見に行けたので、上機嫌だった。かつて、総大将の孫とは言え、ぬらりひょんが人間とどうのこうの言われたりもしたが。


 十年と短い期間経った今では、その騒動なども落ち着いている。そして、半妖となったひ孫はぬらりひょんの血を濃く受け継いでいるので、どちらかと言えば妖寄りだ。


 彼女達が将来的に、妖達と契るかは未だ不明ではあるが。少なくとも、沓木(くつき)と言う女性は確実だろう。多少濃いが、赤鬼の妖気が身体に染み付いているからだが。



「ごめんください」



 猪口を傾けていたら、見知った声と妖気を感じたのだ。



櫂斗(かいと)



 何故、今考えていた孫がここに。


 しかも、一人じゃなくて小さな影も。



「じぃじ!」

「……咲穂(さきほ)まで」



 可愛い可愛い、ひ孫の少女が。


 きちんとした格好で間半のところまで歩いて来ようとしていた。



「わ、可愛い!」

「さっき言ってらした、ひ孫ちゃん?」

「ちっちゃい!」



 咲穂を抱き上げると、女性達は可愛い彼女を見てはしゃいでくれたのだった。



「すみません、お祖父様。咲穂がどうしても今あなた様に会いたいと泣きわめくもので」

「……そうか。ダメだよ、咲穂? じぃじとはいつでも会えるんだから、お父さんを困らせてはいけないよ?」

「むぅ〜、じぃじに会いっちゃかったんだもん!」

「嬉しいけど、もうお前は寝る時間じゃないか」

「にゅ〜……」

「まあまあ。可愛いらしいわがままではないですか? 櫂斗さんもよかったら、オム焼きそばはいかがです? 咲穂ちゃんも」

「あ。ありがとうございます」



 席はカウンターにあと一席空いてたので、櫂斗が座り。咲穂は間半の膝に座ったのだ。そしてすこぶる上機嫌になってくれるのだから、許してしまうのは仕方がないだろう。



「お待たせ致しました。美兎(みう)さん達からいただいた心の欠片で作りました、オム焼きそばです」



 艶々のオムレツ風卵焼きに、ソースにマヨネーズに鰹節。


 湯気が立っていて、とても熱そうだ。それぞれの前に置かれると、咲穂は首をひねったようだ。



「じぃじ。これなーに?」

「これはご飯だよ?」

「ごはん?」

「まだ、咲穂には焼きそばは食べさせていませんからね?」

「咲穂、見ててごらん?」



 間半が箸でオムレツを割ると、中からはこれまた美味そうな焼きそばが顔を出してきたのだった。


 まずひと口、と間半が食べれば。


 さすがは心の欠片。上質な霊力を感じつつも味は一級品の焼きそば。麺の硬さも、ソースの濃さも。卵と合わせれば、ちょうど良い調和を口に与えてくれたのだった。



「じぃじ、咲もー」

「はいはい。熱いから少しお待ち?」



 息を吹きかけて、程よく冷ましてから口に入れてあげたら。



「おいちー!!」



 くりんと振り返りながらも、笑顔が全開で。


 ああ、ひ孫もやはりいいものだ、と思わずにはいられなかった。



「咲穂。それはお祖父様のご飯だから、あんまり食べ過ぎてはいけないよ? 明日の朝ご飯が食べれなくなるよ?」

「はーい」

「咲穂ちゃんはりんごはお好きですか?」

「? はい。普通には」

「でしたら、長野の蜜りんごがあるので。サービスしますよ」

「お気遣い、ありがとうございます」



 そして、咲穂は出されたりんごに満足したら眠ってしまい。


 まだ飲みたりないが、彼女達は彼女達で時間を過ごしてもらおうかと、ぬらりひょん一行として帰宅することにしたのだった。

ぬらりひょん編、続編終了


次回から新章スタート!


また明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ