最初の一歩は大股で
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◇ティーミス・エルゴ・ルミネア◇
・LV1
・HP 103
・攻撃力 1(+200)
・防御力 2(+200)
・俊敏性 1(+200)
・魅力 731(+200)
次のレベルまであと
8EXP
パッシブスキル
《強靭なる怒り》攻撃力+200
《怠惰の持続本能》防御力+200 毎秒2の体力自動回復
《王の早馬》俊敏性+200
《魅了してやまぬ花》魅力+200
《強者への嫉妬》自身よりレベルの高い敵と遭遇時、レベル差分1につき、体力以外の全能力値に+50のボーナスを付与
《強欲の神殿》アイテム所持上限が無制限になる。
アクティブスキル
《残機奪取》
QETスキル。行動不能、又は不意打ちによって敵を一撃で倒し、【奪取した命】獲得。敵のレベルが自身より高ければ高いほど、成功率が下がる。
《晩餐》
スキル終了時まで武器【招かれた客】を装備。
所持アイテム
【奪取した命】
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ティーミスが、パラメーターと呟き手を掲げると、数字や文字が書かれた、ガラスかホログラムらしき物が宙に浮き出た。
これはジッドがティーミスに注射した、『ルッキングパロメーターナノチップ』略して『Lpnt』によって獲得した能力だ。
それを見たジッドが、腹を抱えて笑っている。
「……ひっひっひ…くっくっく…」
「何か、おかしな所でもあったんですか?」
「ちげーよ。…お前、体力もかなり多いが何より……魅力たっけ!」
「!」
魅力の初期値は、種族差や個人差が顕著に現れるとされる。
それと同時に、仮に初期値が低くとも、努力次第ではどうにでもなるパラメーターでもあった。
幼い頃から、可愛らしい美しいと言われ育ってきたティーミスは、それが親が子に良く話すお世辞だと思っていた為、いざ数字として目の前に出さた時には、照れに似た奇妙な感覚に襲われた。
「いやこんなたっけえの中々居ねーぞ!装備…どころか、一糸も纏って無え状態でこれだろ?
まさに、絶世の美少女って奴だな!」
「そう…ですか…」
ティーミスはこの時始めて、自分の見た目に対する褒め言葉をお世辞では無く、客観的事実として捉える事が出来た。
「ま俺はロリコンじゃねーからー、あと10年は待てるけどよ…って、無駄口叩いてる場合でも無えか。次行くぞ次!」
ティーミスは、パロメーターボードに手を触れて、そのまま左にスライドする。
と今度は、ボードには石板の様な模様が映し出された。
中心にトパーズを象った大きな縁があり、そこから七本に枝分かれしていて、丸や四角、六角形のマークが所狭しと密集していた。
この石板はどうやらボードの枠に収まっていないらしく、かなりの大きさである事がうかがえる。
目を白黒させながらそのボードを見つめるティーミスに、ジッドが解説を入れる。
「スキルツリーって奴だ。まあ方法は簡単だ。なんかして経験値貯めて、レベル上げてポイント突っ込んでマーク解放する。そうやってツリーと能力を伸ばしてくんだ。
スキルメイドで入手したスキルってのは、ほぼほぼオリジナルの劣化版だからな。こうやって元の状態まで再生し、最終的にはオリジナル超えなんて例もある。お前はそれを…現時点では7人分やんにゃならねえからよ。一回一回の上がり幅もちっせえし、苦労すると思うぜ?」
「それでも良いです。弱いまま死ぬよりは、ずっと良いです。」
「へ、真面目かよ。…まあ良いぜ。じゃ、また様子見にくっからな。」
ジッドが軽いノリでひらひらと手を振る。
次の瞬間には、牢はティーミス一人の状態に戻っていた。
ティーミスはふと、先程の物が気になった。
「アイテムボックス。」
ティーミスの目の前に、比較的小さめなウィンドウが現れる。
その中にはマスがぽつんと一つだけあり、マスの中には青白い炎のアイコンがあった。
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【奪取した命】
強欲なる鉤爪によって奪い取られた、生者の命の輝き。
死亡時にこのアイテムは任意のタイミングで消費され、あなたはHP全快の状態で復活出来ます。
又は、スキルポイントの代わりとしても使用可能です。
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所持数は一つ。
看守の分は、蘇生に一度使った為だ。
(これで、スキルもあげられるんだ…いっぱい集めないと…)
ティーミスは、そのよく働く頭もさることながら、前世の知識を朧げながら持っている為か、この手の知識の飲み込みは異常なまでに素早かった。
と、牢に向かってくる複数の足音が聞こえて来る。
「…いえば、ここに来るまでにマークスって見たか?」
「いや?恐怖の拷問官のことだ。どうせ死体でも虐めてんだろ。」
ジッドの読みより少し早めに、清掃員と祈祷師達が到着した。
数はざっと5人。対して、今のティーミスが一体どれだけの力かはまだ未知数。
ここは本来、戦闘は避けるべき局面だ。
『…欲しい…奴らの魂…』
『……腹が減った……喰いたい…喰いたい喰いたい喰いたい!!!』
(な…何…?)
不自然なまでに生々しい衝動が、ティーミスの頭に響く。
ティーミスはふと、自分の指を見る。やせ細り、少しの力で折れてしまいそうだ。腹の虫も鳴り止まない。
ふと、先ほどのスキルツリーを思い出す。あれだけ広大なスキルを埋めるのに、多分だがレベルアップだけではとても足りない。奪取した命が大量に必要になるだろう。
『早く殺せ!奪い取れ!全員まとめて灰にしちまえ!』
『全員は駄目だ!何人か喰わなければ駄目だ!飢えて死んでしまうぞ!』
頭の中で響く、衝動の声。
どちらも、ティーミス自身の増幅された意思だった。
(分かった…分かりましたよ、私。)
悪魔の様に囁く、衝動。
しかしそれは、どちらも今のティーミスに必要な助言だった。
ティーミスは付近にあった亡骸から布を借り、傷の無い体を布で隠して、牢の中心に横たわった。
拘束具から外して一先ず置いておいた死体、を演じるのだ。
「此処だ。」
「ガキ一人のために一年以上も開けれなかったんだろ?全く良い迷惑だぜ。…しかし、やっぱマークスは居ないな。」
「あんまり大声でその名前呼ぶなって。聞かれたら殺さるかも知れないぞ。」
「おおこわ。」
祈祷師一人、清掃員四人。
清掃員はさておき、問題は祈祷師の方だ。
牢に湧いたアンデッドを駆除したり、万一で生き残った囚人を処分する為に清掃員と同行している。
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パッシブスキル《強者への嫉妬》が発動しました。
HP以外の全パラメーター+850
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恐らく祈祷師に反応し、ティーミスのスキルが発動する。
「お、これが噂のガキか。どれどれ…」
清掃員の一人が粘っこい笑みを浮かべながら、ティーミスの被る布を剥ぎ取ろうとした瞬間だった。
「《残機奪取》!」
「ぎゃひ!?」
布を貫通した悪魔の腕が、最初の犠牲者から命を抜き取った。
「おいどうした、変な声だし…ぐぎゃあ!?」
次いで、油断した様子の二人目の清掃員からも命を奪取する。
「クソ…こいつ生きてるぞ!」
「離れろ!…っち、どんだけしぶといんだよ…」
《残機奪取》は、あくまで敵が無防備な状態にのみ有効な技である。
警戒し、距離をとった清掃員二人と祈祷師には、もう通用しないだろう。
しかし、ティーミスは悲観しなかった。
「《晩餐》」
今のティーミスにはもう一つ、スキルがあった。
僕は小学生の頃、てんかを良くやりましたね。
はじめの一歩!で股がグキってなる人が大勢いましたね。僕もそうでしたが(笑)。