第9話:勉強会を開催しようか
「「…………え?」」
俺とヤスは、同時にそう言った。……先生、今なんておっしゃいました?
「だから、もう来週から中間テストだ。赤点とったやつは補修。そんだけだ」
めんどくさそうに言いながら、乙女先生は教室を出て行った。…………なんてこったぁぁ!テストだとぉぉぉ!?すっかり忘れてたぁぁ!
「……キコエナイ、キコエナイ」
ヤスは、耳を押さえながらなにやらブツブツ言っている。……あの野郎、現実逃避してやがるな。
「ってか、やべぇな……勉強しねぇとぉ……」
幸い、土日は何も用事はないから勉強する時間は結構ある。
「いやぁ〜テストかぁ〜、ヤス君ヤバそうだね〜」
「そう言う琴音はあんまりヤバそうじゃないな。自信あるのか?」
琴音は笑いながらヤスを見ている。琴音は頭が良かったのか……?そんな話聞いてないぞ……
「正直ヤバい。でも自信ならあるね」
意味がわからん……。ハッ!……まさか、カンニングか!?そんなことする子だったなんて……。
「ちょ、ちょっと。そんな蔑んだ目で見ないでよ!カンニングとかじゃないからね!?」
「違うのか?じゃあ、どういうことだ?」
俺がそう聞くと、琴音は『よくぞ聞いてくれました!』と言わんばかりに、満面の笑みを浮かべた。
「フフフ……。私には家庭教師がいるのよ!」
「……ふ〜ん」
「あれ……反応薄いね。なんかひどくない?」
いや、そこまでビックリすることでもないでしょうよ。家庭教師を雇ってる人もそう少なくないって。
「とりあえず、土日に家庭教師の人と勉強するってか?」
「うん。まぁ土日勉強した分は、一週間後にはデリートされちゃうけどね……」
いや、琴音の事情は知らんけどさ。しかし、参ったな……。
「俺とヤスと琴音で、勉強会でもしようかと思ってたんだけどな……。ヤスと二人になっちまうか」
まぁどうせ、頭があまり良くないのが(けっしてバカとは言わない)3人集まっても変わらないからな。
「え?じゃあ、修司君達も一緒に勉強する?」
「……なに?いいのか?」
ヤスが返事をする。やっと現実を見る気になったらしい。しかし、目が赤い……。ヤスがマジ泣きしてたのはツッコんじゃいけないんだろう。
「全然オッケー!今日から勉強しちゃう?」
「ん。そうだな、場所は琴音の家?」
「うん。私の家の方がいいかな」
ふむ、じゃあ早速お邪魔させてもらうか。
で、色々あって今俺達3人は琴音の家へ向かっている。しかし気になることが一つ……。
「へ〜、琴音の家って俺の家から近かったんだな」
「そだね。そんなに離れてないよ」
そう、琴音の家は俺の家から、歩いて5分程度の場所にあるらしい。
「ホラ、着いた着いた。ここが私の家〜」
「「……なに!?」」
俺と、ヤスが同時に声を上げた。まさか……。これが、琴音の家だったのか……!?そうだったのか……なんかごめんな琴音。
「ちょっと!どっち向いてんの!うーしーろ!」
「え?後ろ?」
「当り前でしょ!ってか勝手に、可哀想な人だって思ってたでしょ私のこと!」
なんだ、言ってくれないとわからんよ。てっきり公園に住んでるもんだと思っちゃったから。
「はぁ……いいから、入って」
「「おじゃましまーす」」
「はい、じゃ早速お勉強タイムにしたいと思います」
「え〜」
琴音が勉強道具を出しながら言うと、ヤスが不満を漏らした。
「あのなぁ、ヤス。今日は勉強が目的で来たんだぞ?」
「いや、家庭教師の先生が来てからでもいいじゃん」
ヤスは、そう言うと畳の上に寝そべった。まったく……。こいつこんなんで大丈夫なのか?
「うーん……じゃ、それまでみんなどれくらい勉強できるかチェックしとく?」
「ん?まぁ、いいけど。どうやってチェックすんの?」
「適当に問題出すから、答えてみてよ」
琴音は、社会の教科書を広げながら言う。まぁ、そんだけなら簡単だな。
「じゃあ修司君から、歴史の問題!三民主義を唱え、1911年の辛亥革命で中華民国をたてたのは誰?」
「あー……孫文だっけ?」
「……ファイナルアンサー?」
うわっ……。めんどくさ……。
「ファイナルアンサー……」
「…………………………………………………………………………」
あぁぁ!溜めが長ぁぁぁぁい!いらんわぁそんなん!
「……正解っ!結構やるねー。んじゃ、ヤス君行くよー!」
……あってたか。しかし、ヤスは本当のバカだからな。歴史とか無理なんじゃないか?
「なるべく簡単なのでお願いします」
「オッケー!んじゃ〜……1853年:4隻の軍艦を率いて浦賀沖に来航し、日本に開国をせまったのは誰!?」
「えっと……俺のひいおじいちゃん?」
バキッ
「いったぁぁぁぁ!綾川ぁ!な、なんで殴るのさ!」
いや、ヤス。今のはお前が悪かったと思う。お前はひいじいちゃんがペリーだったと言うのか?
「ふざけないで答えて……?」
「いや、本当に真面目に答えたって!」
それはそれでヤバいって!重症だよ!?ペリーとひいじいちゃんの区別つけようぜ!?
「もういいよ……。じゃあ次は―――――」
ピンポーン
「あ、もう来たのかな!?」
琴音は、ドタドタとせわしなく玄関に走って行った。
「家庭教師か……どんな人だろうなぁ」
「まぁ、いい人だったらいいよな」
優しい人だったらいいんだけど……。鬼家庭教師とかじゃないよなぁ……。なんかいまさら緊張してきた……。
「今日は、私の他に二人勉強教えてあげてよ」
「あら。誰か来てるの?」
「うん。こっちこっち」
廊下の方から、声が聞こえてきた。なんだ……女の先生か……。優しい先生っぽいし、大丈夫かな……。
ガチャッ
「「「…………え?」」」
俺とヤス……そして家庭教師の先生が同時に声を上げた。
「な、なんで……?」
先生が驚いた様子で言う。いや、俺もビックリ……その先生とは―――
「はい!この人が先生だよー!修司君達も知ってるでしょ?」
―――我らが学級委員長『桐嶋早弥』だった。
しばらく、更新遅れると思います。