序章 スケルトンさん、出現する
はいはい、皆様、ごきげんよう。
私は死体。
私、野晒しの死体でございます。
生前は小さな町で商いを営んでおりました。
お世辞でも、裕福とは言えない生活ではありましたが、妻子共々、皆、健康で明るく、楽しく毎日を過ごしていた次第でございます。
しかし、ある日、少し離れた大きな町まで買い付けに出かけた所、野盗に襲われた私は誰にも助けられることもなく、無惨に斬り捨てられ、暗い森の土の上に捨て置かれたのでありました。
商品や金銭は、我が家の唯一の財産である幌馬車ごと奪われた上、身ぐるみまで剥ぎ取られた私。
残された妻子の身を案じながらも無念の死を遂げた私は、やがて、暗い森の木々の糧となり土へと還───
「るわけあるか───っっ!!」
俺は起き上がると、鬱蒼と木々が繁った森の中で叫んだ。
許さん!
許さん!あいつら!
絶対に許さん!
よくも、愛しの妻と娘とのハッピーライフを強制終了させやがったな!
俺のお気に入りの下着まで奪って行きやがって!
つか、他人が履いてる下着まで盗るなよ!必死過ぎか!
変態野郎が!
絶対に、仕返してやる!
末代まで祟ってやるからな!!!!
こうして、長い時間を経てぐずぐずに身を腐らせ、恨みつらみを沸々と育て溜め込んだ(わたくし)は、白骨化が完了すると同時に、魔物・スケルトンとして目覚めた次第でございます。
『スケルトン LV.1が黒き森に出現しました』
──なんだよ、この声。