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29 パーティ会議

 いつもの酒場にパーティ全員を集める。

 酒場のマスター、ガーフに水と料理を頼み、しばし待つ。


 俺たちの視線はアリアリアに向けられる。

 もぞもぞとせわしなく動く彼女。視線に耐えられなくなったのか、


「実家の者に捕捉されました!」


 たはー! と息を吐いて困っていますという立場をアピールする。

 それを見てエレオノーラが静かに言う。



「あのね、ボクが言えることじゃないけど、もうちょっと考えて行動しないと自分の首を絞めるよ?」

「ガチ説教はつらい……」

「説教されないほうがつらいと思うよ、アリアリア」

「それもそう……」


 本気でへこたれるアリアリア。

 落ち込み始めると身体を丸めて小さく見せようとする。

 いたたまれないが、こちらとしては聞いておきたいことがある。


「で、アリアリアはどうしたいの」

「……あたしは、皆と一緒に冒険したい。あたしのスキル〈盗賊の加護〉は冒険者じゃないと善いことに使いづらいし」


 初めて聞くスキル名だ。

 なにか知っていないかとエレオノーラに目くばせをすると、彼女は意をいたりとばかりに説明をする。


「〈盗賊作法〉の効果が上がる珍しいスキルだね。歴史上でこれを得たのは大盗賊と呼ばれた人ばかりさ」

「それが実家と折り合いが悪くなるんだな。アリアリア、お前の家ってなんなの?」


 レイストフが切り込んでくる。

 言いたくないとは言わせないとばかりに圧をかけて。

 実際、パーティに迷惑をかけているのだから説明責任は果たさないといけないだろうが。


 唸るアリアリアに、エレオノーラは心配そうな視線を送る。


「神官の……家」

「本当に?」


 レイストフの追及に押し黙るアリアリア。

 そんな彼女にエレオノーラが助け舟を出す。


「嘘じゃないよ。彼女はエイレーン教の敬虔な信徒の家の子さ」

「……元々知り合いなのか」

「うん。まさかレグナンスに来ているとは思わなかったけどね」


 しみじみと語るエレオノーラに、レイストフはそれ以上の追及をやめる。

 だがわだかまりは解けていないようで、彼はやや不満そうにテーブルを指で叩く。

 それに気づいているアリアリアは申し訳なさそうに肩を丸める。


「気になる点もあるだろうけれど、今はまだ待ってくれ。こういうのは自分から言わないと禍根になる」

「引きずりすぎてもわだかまりになるだろ」

「それはそうかな。ただ、知ってしまうと後戻りはできなくなるからね、好奇心は猫をも殺す」

「……わかった。オレはそれで今のところは手打ちにする。で、どうすんの、フェリノーツさんとの決闘」


 レイストフはじっとこちらを見据えている。

 暗に勝てるのかと聞いているのだ。


「……正直、十回やって一回勝てればいい方だと思う。その一回をなにがなんでも拾いに行く」


 こちらの意見に対して、エレオノーラは頷く。


「その見立ては正しいだろうね。初心者が簡単に勝てるほどフェリノーツ君は甘くない」

「……どうするんだよ、イリアス」


 呆れ混じりのため息を吐くレイストフ。

 彼我の戦力差は圧倒的であるということに焦っているのか。


「まず、フェリノーツさんのスキルを知って、そこから対策を立てる。

 アリアリア、エレオノーラ、彼女のスキルを教えてくれ」

「フェルは……育ってなければ〈剣術Ⅴ〉と〈防御術Ⅵ〉、あと〈剛力Ⅳ〉を持っているわ」

「フェリノーツ君は……騎士として実地訓練も行っているだろうけど、スキルの成長はないとみて良い」


 スキルは一つ級位が違うだけで隔絶した実力差になる。

 槍と剣では単純な比較はできないが、苦戦を強いられることになるのは間違いない。


 エレオノーラは言葉を続ける。


「この前、彼女は一人でキマイラを屠れるくらいには強いと言っただろう?」

「ああ」

「それは〈剣術〉の攻撃力、そして〈防御術〉の防御。二つのバランスが取れているからなんだ」


 攻防のバランスが取れている、というよりは防御に傾いている。

 防御がキマイラの火力を上回っているから一人で倒せるくらいだとエレオノーラは見積ったのだろう。


「そんなに優秀ならさ、どうにかして引き込めねーかな。それに可愛いし! オレそれに賛成!」

「アレは置いておいて、フェリノーツさんとはどういう関係なんだい」


 俺はレイストフの発言を半ばスルーして、アリアリアに訊ねる。

 非常に言いにくそうに彼女は言葉を連ねていく。


「……幼馴染。たしかに、パーティに入ってくれたら言うことはないけど……」

「そこについてはあまり期待しないでおこう。

 いきなり騎士団を辞めるなんて、余程大切な理由がないとできないし」


 俺やアリアリア、レイストフはともかく、フェリノーツさんは社会的にしっかりとした身分を持っている身だ。

 その責任も相応に重くなっていく。

 とりあえず、今はそれどころではない。

 エレオノーラは間延びした声を上げる。


「んー、じゃあとりあえず戦術を決めようか」

「戦術と言っても、やれることは限られているだろ?」

「今からだとね。とりあえず、フェリノーツ君を破るためには〈防御術〉の防御力を越えないといけない」

「盾は衝撃を流すのが厄介だな」

「基本的には仲間を庇うための大きな盾だけどね。今回は攻撃を受け流すための小楯を用意してくるんじゃないかな」


 そんな大きな盾を持てるのか。さすがは〈剛力〉のスキル持ちというか。

 だが話は依然単純なままだ。

 エレオノーラの言う通り、フェリノーツの防御を突破する一撃を放てばいいのだ。


「受け流せないほどに速度と威力があればいいんだな?」

「少なくともボクの結界にヒビを入れたものであれば何も問題はないよ」


 だが、それは一撃しか入れられない欠点がある。

 視線や動きで狙いがバレて避けられる可能性があるのだ。

 そう考えると、投擲のゲイボルグは使えない。


 今から迷宮に潜って新しいスキルを獲得しても使いこなせるかは全く分からない。

 分の悪い賭けだ。


 そう考えると、今ある手札を練り上げて勝負したほうがまだいい。


「みんな、二日だけ時間をくれ。二日で突破口を開く」

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