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14 第二次ダンジョンアタック

 何も舗装されていない坑道のような道をただ歩く。

 この辺りはヒカリダケという発光するキノコが群生しており、カンテラいらずだ。


 そしてヒカリダケがない場所というのは特に気を付けないといけない場所、と言われている。


 知性のある魔物、ゴブリンがそれらをもぎ取って、自分たちが奇襲をしやすいように陣地を作成しているからだ。

 実際、新人冒険者はゴブリンの奇襲によってやられることが多いのだとか。


 俺を先頭に、アリアリア、エレオノーラ、レイストフの順番で並んでいる。

 レイストフを一番後ろにしたのは奇襲対策だ。


 そんな中、エレオノーラは不安そうな表情を見せず、淡々と意見を述べる。


「……ボクとしてはやっぱり前衛がもう一人欲しいところだね」

「やっぱり厳しいかな」


 俺が問いかけると、エレオノーラは静かに頷く。

 仕入れた情報によると、前衛は普通は三人。よほど質が良ければ二人が鉄板だそうだ。


 翻って見ると、俺もレイストフも遊撃が主体で誰かを守るような防御の厚みはない。

 そう考えるとエレオノーラの言葉は正しいし、むしろよくこのメンバーで迷宮に潜ることを許可してくれたほどだ。


「自分の身は自分で守れるけど、それも最低限だ。だから、期待しているよ」


 エレオノーラがウインクを飛ばすと、レイストフが感極まって大声を出そうとしたので口をふさぐ。

 色仕掛けというか、そういうのは控えて欲しい。主に俺のために。


 アリアリアはずっと辺りを観察しながら地図を書いている。

 だが、どうにもまだ探索していないところをまで書き込んでいるように見えるのだが……。


 不思議に思って彼女に訊ねると、あっけらかんと答えを返す。


「前潜ったところを書き写しているだけよ。まだ行っていないところは書いてないわ」

「……よく覚えてるな」

「〈スキル〉のおかげだけどね」


 〈スキル〉様様ってところか。随分と有用なスキルではあるようだけれど、アリアリアはそれで悩んでいる節があるし、なんとも難しい話だ。

 そんなことを考えていると、アリアリアが「止まって」と小さい声量で制止する。

 こちらが疑問を発する前に、彼女は淡々と告げる。


「……近くにゴブリンの巣があるわ。ほら、足跡」


 彼女の指示したところを見ると、たしかに複数の人間以外の足跡が残っている。

 どうするか、と言外に問われているのだろう。


「規模は分かるか?」

「まだ分からないわ。巣の近くにいけば音で分かるよ」

「……とりあえず、魔結晶を手に入れないと金にならない。勝てそうなら行ってみよう」



 ヒカリダケが少なくなってきている。これはゴブリンが巣を隠すためだ。

 ゴブリンは夜目が利くし、そもそも夜行性だ。光はわずかでいいのだろう。


 アリアリアはぴたりと止まって、しゃがみこんで神経を研ぎ澄ませている。


 足跡だけではなく、聴覚や嗅覚を使ってどの程度の規模なのかを測っていた。

 まだか、と思っているとアリアリアは突然立ち上がる。


「おおよそ十数体。キャスパードと戦うよりははるかに楽、かな」

「じゃあ行こう。俺とレイストフが巣穴に入って暴れるから、アリアリアたちは大丈夫だと思ったら巣穴に入ってサポートをしてくれ」

「了解」

「わかったわ」


 巣穴の出入り口は二つあるが、挟撃するだけの人数もない。してもいいかもしれないが、分散で余計なリスクを負うことは避けたい。


 巣穴の前に待ち構えているのは見張りのゴブリン一体。

 即座に倒さなければ逃げられる可能性だってある。


 アリアリアが先頭に立ち、俺たちを制する。


「ここは任せて」


 言うと、闇と視線を縫うようにアリアリアは歩き――そしてゴブリンの後ろを取る。

 そのままゴブリンの口を塞いで、短剣で喉を掻き切った。


 視線が合う。


 次にやることは分かっていた。

 巣穴へと飛び込んでいく俺とレイストフ。


 巣穴は暗く、そして臭い。

 土を掘りぬいて作った、竪穴式住居だ。


 ゴブリンの数はざっと十五体。

 やれるか――?


 圧倒的な個を侮ることはないが、弱い集団を侮って痛い目を見ることはある。

 負ける気はしない。それでも油断大敵である。


「オ、オオオオッ!」


 叫んだのはどちらだったか。あるいは両方か。


 緑色の肌をした子鬼が一斉に襲い掛かる中、俺たちはまず互いに当たらないように武器を横薙ぎに振るう。


 それだけでゴブリンの半数が削れていく。


 残りは四体。そのどれもが雑兵と違い、杖を持ち、あるいは剣と盾を持っている。

 金切り声に似た音を鳴らし、杖持ちゴブリンに魔力が集中する。


 直後、人の頭ほどの大きさの火球が胴体に当たる。


「がっ――」


 ――こいつ、魔術を使いやがる!

 魔術を使う魔物というのは珍しくないが、ゴブリンでそういった存在は珍しい。


 しかも、それが第一層で出るとは。


 たたらを踏んで攻め手を止める俺に、ゴブリンが襲い掛かる。

 防戦に追い込まれるが、相手はそこまで恐ろしくない。むしろ次の魔術が飛んでくることが恐ろしい。


 時間はかけられない。槍の柄で足払いをし、ゴブリンを転ばせると、そのまま槍を杖ゴブリンに投擲する。

 魔槍ほどの威力はないが、それで十分だった。たちまち魔物は絶命する。


『〈ゼロ〉の発動を確認。〈魔術Ⅱ〉を複製します』


 神の声を聞いて、驚きに身体を硬直させた瞬間。

 戦士ゴブリンがこちらの心臓を狙う。回避は難しい。


 ――直後、風切り音と共にひしゃげる音。


「随分と苦戦したじゃないか」


 エレオノーラがイタズラっぽい表情を浮かべ、こちらに声をかける。

 彼女の杖には血が付着しており、助けてもらったのだと遅まきながら理解する。


 レイストフのほうを見やると、アリアリアの手を借りるまでもなく二体の戦士ゴブリンを片付けていた。


「まさか魔術を使えるゴブリンがいるとは思わなくてさ」

「たしかに外では珍しいけれど、ここじゃ普通に出てくるよ。……経験値不足だね」

「返す言葉もない」


 ふう、と息をつく。エレオノーラはそのまま〈神聖術〉でこちらが負った傷をいやしてくれた。


 そのまま休まずに、俺はみんなに指示を出す。


「他の魔物が来る前に魔結晶の回収をしよう」


 そう言って、俺たちは作業に取り掛かる。

 この階層で採れるものは売っても二束三文にしかならないが、それでも量があれば少しは違う。

 ここを卒業できない冒険者はゴブリンスレイヤーと言われるようになるらしいが、そこの辺りについてはどうでもいい。


 まずは力をつけることが大事なのだから。


 力と言えば、先ほど杖ゴブリンを倒した時、〈ゼロ〉が発動した。

 二年前はゴブリンを倒しても〈スキル〉を得ることができなかったというのに、今回は違った。


 ということは、俺が今まで倒してきたゴブリンは〈スキル〉を持たないもので、今回は〈スキル〉を持つものだということだ。

 なぜ魔物が〈スキル〉を持つのかは分からないが、とにかく魔物でも〈スキル〉を持つことはあり得るのだろう。


 人間、もしくはそれを素体としたものからしか手に入れられないと思っていたが、どうやらそれは違うようだ。


 ならば、もっと奥にいる魔物は〈スキル〉を持つ可能性が高くなるのではないか。


 その考えが正しかったことを、後ほど俺は知る。

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