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13 リーダーと目標

 カツン、カツンと階段を下りる音が響く。

 前回と違い、それぞれ心持ちもかなり変わってきているようだった。


 アリアリアはまだ緊張が取れていないのか表情が強張っていて。

 レイストフはかなり慣れたのかエレオノーラに話を振りながら、けれども剣の柄に手をかけることなく。

 エレオノーラは教会の階段でも降りるかのような自然体。


 翻って、俺の状態は自分では分からなかった。

 緊張もしているし、けれど前よりは楽になっているとも思う。


 けれどこれを他の人が評価した時にどう見えるかは分からない。

 そこまでの冷静さと客観性を身に着けてはいないということだろう。


「随分余裕そうじゃないか、イリアス」


 レイストフがにいっと笑って話しかけてくる。

 彼から見れば俺は余裕を持っているように見えるのか。


「余裕はないさ。いつ前回みたいにメンバーを失うかを考えると……正直怖い」

「おー、リーダーの心構えができてきたじゃねえか」

「え……?」


 レイストフが口角を上げる。

 俺は彼の言葉が理解できずに、レイストフとアリアリアを見やる。


「アリアリアがリーダーじゃなかったっけ……?」


 こちらの問いに、アリアリアは小さくうなずく。


「〈肉切り〉キャスパードと遭遇したとき、一番に立ち上がったのがイリアスだったでしょ? 貴方が居なければあたしたちは全滅してた。……だから」

「まー、気にするなって。オレたちだってお前がやりやすいように支えるつもりだ」

「いや……でも」


 困る、というのが率直な感想だ。自分にはそんな器は備わっていない。

 あの時、殺意に委縮しなかったのも偶然だ。


 逃げるようにニーナのパーティから飛び出してきた俺に、命を預かる資格などない。

 こちらの困惑を読み取ったのか、エレオノーラがこちらの肩に手を乗せる。


「いいじゃないか。やってみてどうしてもだめならまた考えてみればいい。何事も経験だよ」

「……分かったよ。ただ、期待はしないでくれよ」


 投げやりに言うと、アリアリアは落ち着いた様子で返事をする。


「未熟なのはみんな……エレオノーラ以外一緒。だからみんなで足りないところを補っていきましょ」


 アリアリアの言葉に熟考する。

 エレオノーラは隔絶した経験がありそうだが、たしかにそれ以外のメンバーはどんぐりの背比べと言ったところ。


 なら、やってみるのもいいかもしれない。


「……そうだね。やるだけやってみるから、フォローはよろしく頼むよ」

「任せとけ」


 レイストフは親指を立ててサムズアップ。

 エレオノーラは話はまとまったねとばかりにポンと手を叩く。


「ところでアリアリアは金策以外でなにかやりたいことでもあるのかい?」


 突然の指名に驚きを隠せないでいるアリアリア。

 彼女はうんうんと唸ったあと、ぽつりと話し始めた。


「法国でマフィアとトラブルがあったから、それの解決。あとはゆっくり休める場所が欲しいわ」

「マフィアと? なかなかスリリングな体験してるな、ちみっこ」

「ちみっこ言うな」


 マフィア。アリアリアを助けたときに敵対した男たちのことだ。

 ここでの生活がなかなか楽しかったので忘れていたが、これも大事なことだ。

 相手の力も規模も未知数な以上、そう簡単に解決できる問題ではない。


 ふむ、と顎に手を当ててエレオノーラは思案する。


「拠点も欲しいとなると、なおさら間を置かずに迷宮に潜るべきだね。魔力を取り込むことによって能力が向上するし、なにより金が手に入る」

「オレも迷宮に潜るのは賛成。金も強さも欲しいからな」


 レイストフの言葉にエレオノーラはそうか、と頷く。

 たしかに強さも金も欲しい。けれども直近で一番欲しいものはなにかと聞かれると――


「俺は、本当の仲間が欲しい」

「……というと?」


 エレオノーラは興味深いとばかりにこちらの話を聞く姿勢をとる。


「いま酒場で集めている仲間って、とりあえず頭数が足りないからって理由で募集しているじゃないか」

「……そうね」


 アリアリアは「仕方ないと思うけどね」と呟く。


「もちろん、打算から始まるものもあると思う。実際、俺たちだってそうだったと思う。だからこそ、互いに命を預け合える仲間が欲しいし、そうなっていきたい」


 寄せ集めではなく、心を預けられる仲間が。

 現状、わずかばかり縁があったからこうして行動しているだけに過ぎない。


 だからこそ、この縁を強くしていかないといけないのだ。

 そして新しく入ってくる人にも信頼関係を構築できるようにならなければいけない。


 冒険者なんて打算と見栄で組んでいる人間の方が多い。

 けれど、それだけではいつか必ず打算と見栄にまつわる不幸がやってくる。


 そうはなりたくなかった。


「……それは長くかかりそうな目標だね」


 エレオノーラは真顔で答える。

 たしかに、これは長期的な展望だ。

 アリアリアやレイストフのように近いうちに叶えられるものではない。


 だから言葉を続ける。


「直近の目標としてはギルドのランクを鉄等級(最下位)から銅等級、一つ上に上げたいかな」


 ニーナに上げてもらったランクは下がり続け、最下位の鉄等級が最終ランクだった。

 ここはやはり自分の力で階級を上げてみたいものだ。


 そうすることでようやく自分が前に進めるはずだから。


 こちらをじっと見つめてアリアリアは言う。


「……じゃあなおさら迷宮に潜るしかないんじゃない? あと依頼を受けてさ」

「……そうだな」


 おしゃべりもそこそこに、俺たちはようやくたどり着いた。

 迷宮第一層に。


 二度目のダンジョンアタック。

 次こそは誰も失わせない。

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