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8.

「ンアーッ」


 悲鳴なんだか喜んでんだかわっかんねー声が早朝の山奥にンアーッンアーッンアーッて何度も何度もリフレインする。俺はそれを聞きながら久々に突っ込みから解放されて『目覚めたな』『ああ……』ってネルフの偉い人ごっこしながら糸目作って遠い空眺めて元砦の今道場んの庭ン中を歩いてく。


 その先っちょもといちょっと先では大佐殿プレゼンツ人類M性感計画の真っ最中──砦から庭から炊事場から宿舎からドシフン一丁の野郎どもがどやさどやさと現れては、蹴られて踏まれて寄せては返す波のように喜びと苦痛の中で散華していく。しかしどっからこんだけ沸いてくんだよ何で全員ふんどしだよ岸和田かよココは。そんなだんじり真っ盛りのトコに痴態丸出しのパツキンベイブがいきなり出てきてガッツンガッツン蹴たぐってくんだからそりゃフェスにもなるわな。娯楽なさそーだもんよココ。終いにゃドシフンどもは襲い掛かるのをやめて仲良くケツ並べて一列んなって大佐殿にキックオフされんのをブリブリしながら待っている。おいなんか趣旨変わってんぞそういうイベントじゃねーからコレ。でも大佐殿はお優しいからいちいち律儀に蹴ってスパァーンてやたらいい音鳴らしてまたンアーッ。ンアーッ。


 やがてあらかた制圧っつうか性圧すると大佐殿は一仕事終えたっつう風情で額の汗をさわやかに拭う。柔軟剤のCMみてえな雰囲気だが足元見るとひっでぇぞホント。


「フフ、他愛のない。父上でももう10発は耐えて果てるぞ」

「親子そろって何してんだよ。似たもの好きもの同士かよ」

「まあ肩叩きのようなものだ。それに国王自らフリーダムだからこそ、我が国の気風は自由に満ち溢れているのだぞ」


 そんな真実知りたくなかった尻だけに。がっくり来る俺を差し置き大佐殿は男尻(だんじり)踏み踏み奥へと進む。あーもう罠とかあるかもしんねんだから俺が先行きてえのに尻が邪魔して歩きにくいったらありゃしねぇ。


「構わん。レディファーストと言う奴だ」

「知るかよ。露払いぐらいさせろっての」


 俺は余裕たっぷり一戦かましてつやつやしてる大佐殿を押しのけ砦の扉をくぐっていく。右よし左よし真っすぐよし、罠も控えのM男もナシ。俺が合図すると大佐殿も中に入り、凛々しくやらしく肩を並べる。相変わらず盛りのついたサキュバスみてえな雰囲気で何考えてんだかわからねーが、疲れた様子は見受けられない。しかも大佐殿は俺の見立てじゃまだ魔法を使ってねぇ。それであの強さっつうなら近衛兵団最強もタダのホラって訳じゃなさそうだ。


 だからって気ィ抜く訳にゃあいかないんだが、今ここで働いてもらわにゃ俺の苦労が水の泡だ。キチンと完勝頼みまっせとこんな時だけ神おじに祈る。そう言やアイツは娘の彼ぴっぴ殺れたのかねぇなんて考えてたらいつの間にやらどん詰まりだ。分厚い壁、どでかい鉄扉。


「フフ……どうやらここが本丸かな?」

「だろうな。今までとは空気がちげぇわ」


 具体的には匂いと湿気と熱気とが扉の奥からムンムン漂いそこはかとなくオラついたオーラっつうか汚裸(オーラ)が駄々洩れてやがる。え、ココに今から突っ込むの? 大丈夫? 中にグロ肉詰まってない? ノクターン送りになったりしない? 


「フフ。心配無用だ。むしろ私は絶好調、暖気も済んでコートの下もムレムレだ。貴官も少し触ってみるか?」

「いーよバカ、ホカホカしてろ。真面目にやんねぇと帰るぞ俺は」

「それはダメなのだ。貴官は最後まで見届けるのだ。じゃないと私は拗ねてやるのだ」

「分かった、わぁーったから汗拭いてお水飲んで身だしなみチェキしてちゃんとキリッとしつつエロっとする!」


 俺は殺っとこハム太郎と化した大佐殿にタオルだし鏡出し水を出し、晴れ舞台を控えた大佐殿をかーちゃんよろしく世話を焼く。焼いてるそばから俺の脳裏に即堕ち(ンホォ)の三文字がチラチラしやがり見たいようなそうでないような微妙な気分で悩ましい。くそっ、こんな事なら姫様ふん縛って俺だけここに来るんだったぜ。このエロ大佐の事だからはい悦んでってなっただろうし緊縛姿がさぞお似合いだろうよ。けどまぁコイツは俺を信じた。俺を信じてこの仕事につかせてくれた。だったら気持ちよく送り出してやらにゃ、信じた相手に失礼ってもんだろ。


 だから俺は大佐の肩に両手を置いて正面を向かせて目線を合わせる。エロツヤしていた大佐はキョトンとしてから急にもじもじ。


「な、なんだいきなり。貴官の真顔は不敬だぞ」

「失礼なやっちゃな。気合入れてやるだけだよ」


 チューすると思った? 残念ただの激励でした。


「Yo Say! 絶対グルグリに負けたりなんかしない!」

「しない!」

「万一負けてもくっ殺せって言わない!」

「言わない!」

「悔しい……!でも感じない!」

「感じない!」

「よし、ラストバトル頑張っといで!」

「フフ、了解!!」


 激励したのがよかったのか、大佐はご機嫌マックスハートでノック代わりに前蹴り一発、クソ重たそうな鉄の扉がバチコンとド派手に開いてギーコギーコ。そうしないと部屋入れないのアンタって思うけどまいーやこういうのは景気が大事、筋肉ランド開園だよーわぁい^^って二人そろって乗り込んだ。


「こ……これは……!!」

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