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1 生まれ変わったら……

「俺の体死ねぇぇぇ!」

 叫ぶのは羽がはえた黒をメインにしたセクシー衣装のツインテ美少女。

 俺、高木誠は、この美少女に命を狙われている。ファンタジー世界に、日本人名だと違和感?

 これにはれっきとしたわけがある。

 高木誠。これは俺の前世の名前。今の俺の名前は、ランド=カークイン。勇者ランド。世界を救う勇者だったりする。……身体はな。

 今の俺の話をする前に前世の話を少ししようか。

 高木誠、三一歳。ゲーム会社でプログラマーをしていた。完徹五徹当たり前。エロゲの地味な下請け会社には、ブラック企業なんて言葉は存在しない。

 馬車馬のように働くか潰れて路頭に迷うか、だ。

 そんな俺会社に勤めていた俺は万年寝不足で、一週間の睡眠時間がついに一1時間を切ったある日、ついうとうとと船をこぎ……船をこいだ場所が悪かった。人通りの多い交差点。信号は赤。身体は半分以上意識がぶっ飛んでいて抵抗もできず。いた場所も悪かったと反省しても遅い、信号待ちの最前列で、押されて簡単に車の行き交う中に放り込まれ……後は覚えていない。

 つまり、高木誠の人生はそこでジ・エンドというわけなのだろう。気がついたらランドとして生まれ変わって勇者をしている俺がいた。

 しかも、だ。

 この世界ってやつは、俺がプログラムを組んでいた「ドキドキ☆ファンタジア」のゲーム世界じゃねーか!

 たまに会社に「このゲームは僕の前世の話だ!」とか電話がかかってきて変な奴もいるもんだなんて思っていたけど、まさか自分がその立場、この場合逆か? の立場になるなんて思いもよらなかった。

「何感傷に浸ってやがらる。今日こそは俺の体、キッチリ殺させてもらうぞ!」

 危ない。すっかりセシリアの存在を忘れていた。彼女はセシリア。死神だ。

 彼女が言うには、この体は本来なら彼女が転生するはずだった体で、俺が横取りしてしまったせいでセシリアは人間に転生することができず死神になってしまったらしい。

 それで、俺が(正確に言うと俺の体が)消えれば人間に転生できるらしく、あの手この手で俺の体を狙ってくる。

 お前が狙っているのは、お前を世に出した親だぞ!

 まぁ、主人公のランドに食われるルートがあるから何とも言えないが。

 そんなこんなで、プログラムを組んだ俺はキッチリとセシリアの対処の仕方は分かっている。彼女の苦手な物を召喚すればいいのだ。

 マジックポイントが溜まるまであと少し。

 街を抜け、人に迷惑がかからない森まで誘い込み、後は魔法をぶっ放せばいいだけだ。

「いでよ、サラマンダー!」

 ザワリと、森がざわめくと、俺を中心に魔方陣が生まれ光が溢れた。無数の魔方陣が空中でやがて一つになり、大きなドラゴンの形に変わる。

「ひ、ひとかげ!」

 みるみるセシリアの顔色が青ざめていくのがこちらからでもはっきり分かった。

「き、今日のところはここまでで、か、か、か、勘弁してやらぁ!」

 ばさぁ、羽を翻し慌てて空に待避するセシリア。追い掛けようと思えばできなくもないが、追い掛けてしまえば彼女のルートに入ってしまう。

 俺はなるべく安全なルートに行きたいのだ。

「イフリート、下がれ」

 俺の言葉を聞くと、サラマンダーが猫のようにゴロゴロと喉を鳴らし、消えて行った。

「俺、生まれ変わるならエロゲみたいになかわいい女の子がたくさんいる世界がいいわ~」

 誰が言った台詞だったか。ああ、同僚の佐藤だ。

「冗談じゃねーつぅの!」

 俺の叫び声は誰もいない森にこだました。

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