1、いつもの朝
朝、目を覚ますとまずは洗面所に行き顔を洗い、その後は慣れた手つきで化粧を済ませていく。30分もかからないうちに鏡の前には一人の美少女が立っていた。しかし、厳密にいうと少女ではない鏡に映っているのは梧夏楓という少年なのだ。夏楓は昔から可愛いものが好きだったし憧れてもいた。だから、ずっと可愛くなるための努力は惜しまなかった。その結果、もとから女顔なのもあって夏楓は学校の女子の中にいても群を抜いて可愛かった。クラスの中には夏楓が男ってことを知ってながらも好意を寄せているものもいた。しかし、恋というものは難しい。夏楓には秋田啓という好きな人がいたが啓からそれを向けられたことはほとんど、いや全然なかった。ただ、彼から夏楓にむけられるのは友達としての好意だけだった。
時計が8時を指しているのが見えた。そろそろ行くかと思いボクはリュックを背負った。それを見ていたのかお母さんが僕に「いってらっしゃい」と微笑みかけながらいった。ボクは「いってきます」という。ボクのいつも通りの日常がはじまる。ボクはバスと電車を駆使し学校へむかう。駅に着くと後から声をかけられた。
「おはよう、夏楓。今日もかわいいねっ!」
僕の幼馴染の宮城翔太はいつも決まってこういってくる。僕は「おはよう」とだけ返した。すると翔太が気になることを言ってきた。
「最近聞いた話なんだけどさ、啓に好きな人がいるらしいんだよね。」
「どこから聞いたんだよ、その話は。」
「風の噂だよ」
なんだよ、風の噂ってと思っていると思ってるとボクたちが乗る予定の電車が駅にやってきた。ボクは啓くんが好きな人がどんな人なのかすごい気になって仕方がなかった。しかし、翔太とボクは満員電車に押し込まれる時に離れ離れになってしまった。こうなってしまうともう学校まで会えない。ボクは啓くんが好きな人はボクかもしれないなんてありえないことを考えてしまっていた。第一ボクはどんなに可愛くても男子だ。まあ、それ以前に啓くんは頭もいいしかっこいい、それにバスケ部のエースと運動神経もすごくいい。そんな啓くんを女子立ちがほっとくわけがない。そんな啓くんがあんまり目だたないボクを友達だって言ってくれるのですら恐れ多いと感じていた。でも、啓くんはボクにたいしても普通に接してくれている。ボクは啓くんのそういう優しいところがとてもたまらなく好きだ。そんな事を考えているうちに目的の駅に電車が着いた。