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prologue
青く広がる空と海が、この世界には僕ら二人だけしかいないと錯覚させる。
‥‥本当にこの世界に二人だけだったら、どんなに良かっただろうか。
僕らは浜辺に並ぶようにして座った。
すると波の音に合わせるように、隣に座る彼女が口を開く。
『知ッテイマスカ?海ガ青色なノハ、空ニ恋ヲしてイルカラなンデスヨ』
彼女の声にはノイズがかかっていた。
けれど、その壊れたラジオのような拙い発音は、彼女の持つ優しい微笑みによって不快なものにはならなかった。
『ダカら、私ハ。。。』
そんなことを考えていると、彼女は話を続けながら顔を覗き込んできた。
僕の瞳に彼女が映る。
人の姿をしているけれど人では無いもの。
涙のでない緑色の瞳。
胸元以上に伸びることのない灰色の髪。
うなじの丁度下辺りに取り付けられた四角形の装置。
自分の人ではない部分を順番に眺めながら、僕を見つめる。
涙は流していなかったけれど、その表情は悲しみに満ちている気がした。
『マダ貴方ニ、恋ヲシテいまセン』
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