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君を救う死生活  作者: 鈴先壮 ゆっクリ
第一章 絶望に満ちた三日間
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第一章4『エリス』

「うーん……ん? どこだここ?」

 見覚えのない壁。

 当たり前だが全然知らない天井。


「天国か?」


「何言ってるの?」


 すぐ近くで女の子の声がした。


「うわ……! 君も死んだのか……」


「失礼でしょ! まだ死んでない!」

 流石に失礼すぎたか。そうだここは。


「なぁ君ここどこ?」


「ここはノアニール王国より西の森の中にある屋敷」


「森……? そこまで俺を?」


「うん」


「運んで?」


「うん」


 ひとつ聞かなくてはいけない事がある。


「この屋敷には君が1人?」


 そうとても大事なこと何故なら、女の子と2人。こういうのは大体屋敷に閉じ込められて脱出しないと、いけないホラーゲームみたいな展開が。


「ここにはメイドと私1人」


 無かった。


「……じゃあ二人しかいないの?」


「うん」


「見た感じ結構広そうな屋敷だけど」


「屋敷のほとんどは手入れされてない、使われるであろう部屋以外、それに広いからね」


「そうか……大変そうだな」


「ううん全然」


 名前が分からない、名前とは会話する上で最も大事な物だ。それはどんな世界でも共通の事。


「君名前は?」


「私は……ハーフエルフのエリス」


「ん……? ハーフエルフ?」


「そう私は、ハーフエルフ世界を怯えさせた最悪の……」


「そうか……なんかごめん」


「ううん別に大丈夫」


【ハーフエルフ】それはオッサンに聞いたことのある言葉、だが一つだけだ【この世界を憎み、共に崩壊を望んだ女】


「……やっぱり怖い?」


 エリスが聞く。

 確かに怖い、オッサンはその女が死んだとも、なんとも言ってない。

 目の前にいる子がそのハーフエルフかも知れない。でも俺は。


「全然怖くない! そうだ自己紹介が遅れたな! 俺の名前は水瀬木葉! 由来は木のように育ち、いつか落ちる葉という意味で付けられた!」


「……ミナセ…………木葉?」


「そう! 水瀬木葉!」


「いい名前だね」


 エリスが笑う。

 いい名前なんて言われたのは、何年も前の事、最後に言われたのは、小学生入って間もない頃だ。


「いやいや! 君の名前の方こそ素敵だよ! エリス!! いい名前だ!!」


 自分の自己紹介をして暗い顔になっていたエリス。

 その暗い顔が笑みに変わる。


「いい名前なんて言われたの生まれて初めてありがとう、木葉」


 早速二人とも呼び捨てだがここから呼び捨てしてもおかしくないような仲のいい関係になれればそれでいい。


「そう言えばエリス」


「何?」


「親御さんは? 聞くからにメイドさん以外とは住んでないみたいだけど」


「……うん、私の両親は亡くなったの」


「え……? あっ! ご、ごめんそんなつもりで言ったわけじゃ無いんだ」


「……え? わ、私もそういう訳で言ったわけじゃなくてそこまで謝らなくても」


 親がいない。俺はエリスの事が痛いほどわかる。寂しいんだろう。


「な、なぁエリスはメイドさんと住んでるんだろ。メイドさん紹介してくれないかな?」


「いいよ! ちょっと待ってて!」


 笑顔で走って行ってしまった。

 白髪の長い髪、赤い瞳、会話から考えるにお人好し。

 だがしかし俺の脳裏には【ハーフエルフは危険】という言葉が流れてる。でもあの子は普通の女の子。

 ハーフエルフだからって差別したら悲しい顔をする。


「そんな顔あまり見たくないな」


 悲しまないように気をつけなくてはいけない。


「木葉! 連れてきたよ!」


 エリスが戻ってきた。1人のメイドを連れて。

 そのメイドは目つきが悪く。

 目があったと思ったら思いっきり睨んできた。


「エリス様この方がエリス様に心配をかけた方ですか?」


「えっと? 心配はかけたけど……うん」


「よっ! 俺は水瀬木葉エリスに救わr」

「そうですか、それだけで結構です! エリス様に心配を掛けさせた挙句失礼な言葉遣い! あなたは何をしたと思っているのですか!」


 すごい怒られた。理不尽いや確かに俺はエリスに心配させたかもしれない。でも言葉遣いはコミ障である俺が頑張って出した努力の結晶なのだ。いくら何でも酷すぎる。


「すまん俺実は人と喋るの苦手でこういう言葉遣いで喋らないとまともに話せないんだ」


「そんな事どうでもいいです! 早くエリス様に面倒事が降りかかる前に出てってください!」


「……言い過ぎだよメア」


「……申し訳ございませんエリス様」


「それに私は別に面倒事が降りかかるなんて思ってもないしむしろこうしてメア以外の人と話せるのは新鮮で」


「そうですか、すみませんエリス様」


「えっと? 俺もなんか悪かったメアって言ったか? 悪い」


「あなたが謝る必要はありません。私はただあなたを私のご主人様になりうるに当たる器か確かめただけです」


 すごいこと言われた気がする。

 いや確かに言われた。ご主人様と。


「え? 俺がご主人様? 何言って?」


「これはエリス様のご意向です」


「うん急にごめんね木葉だって木葉何も持ってなかったし凄く大変そうだったから」


「俺がこの屋敷で住むの?」


「え? 嫌だったら良いの。これは私が勝手に決めたことだし」


 確かにこの屋敷で住むのは悪くない。でも流石に何者かも分からない俺を住まわせていいわけがない。

 エリスは多分天然なのかもしれない。


「エリス」


「え? な、何?」


「その気持ちは嬉しいんだけど」


「うん」


「俺は住めない」


「え?」


「エリスの気持ちを踏みにじりたいわけじゃない。でもエリス知らない男を住まわせたらだめだ。それこそエリスが危険だ」


「そうだよね……」


「そこで相談だエリス!」


「……え? あ、はい!」


「俺を雇ってくれ!」


「え?」

「え?」


「ここからもう1度上手くやるんだ。今度は失敗は許されない」

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