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君を救う死生活  作者: 鈴先壮 ゆっクリ
第一章 絶望に満ちた三日間
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第一章16『希望は一瞬、絶望は永遠』

「……誰かいるか?」

 木葉は目を半開きにし、周囲に人がいるか確認する。

「誰もいないなら言ってくれよ」

「いませんよ」

 帰ってくるはずのない返事が帰って来る。

「いたのかよ。メア」

「居て何が悪いのでしょうか? 貴方が起きるのが遅いから来てみれば、共犯者にいたのかよとは?」

「悪い悪い」

 軽い謝罪をし、木葉は1度心を整える

「確か手を前にやって魂を集めるようにすれば……」

「はい?」

 レイの言葉道理に木葉は【それ】をやってみたがしかし手から何かが出たような感覚も視界の中で何かが起こった様な様子はない。ただ1つ除いて

「ぷぷ」

「あ? 何笑ってんだよメイド長様!」

「いやいや貴方が真剣にやっているもので、少し笑えてきたのですよ」

「馬鹿にすんな! 魔法はこうやったら打てるんだろ!」

「私も最初貴方と同じように魔法を使おうとしましたが、出来ませんでしたよ?」

「え? マジで?」

「はい。私はエルフでありながら魔法が打てない出来損ないでして、ですが人間の貴方が出来ないのは別に不思議な事ではありませんよ? できない人がほとんどですし」

「エルフって全員魔法使えんの?」

「貴方私が目の前にいる事をわかって言ってるのですか?」

「エルフでも使えない奴はいるという事だな」

「えぇそうですよ」

「じゃあエリスは使えないの? ハーフだし」

「いえエリス様はエルフの血を多く受け継いでおりますので魔法は完璧とはいきませんが使えます」

「どれくらい使えるの?」

「1回使うとしばらく魔法は打てなくなります」

「それって結局使えないのと同じじゃねぇか」

「全く使えない私とは違いますよね?」

「ごめんなさい」

 いつも通りなのか何なのか。長々しいメアと木葉の会話が続く。が木葉が平然としていられるのは、表だけの話。魔法が使えないとなると対抗作が減るということ、相手の戦力がわからない今、これは大きな敗北への道しるべになる。

「それでこんなつまらない何も生まない会話をやめにして会議をしましょう」

「何も生まないって友好関係が生まれてるじゃねぇか」

「どうでもいいです。会議を始めましょう」

「はい……とりあえず首謀者の居場所だが奴は闇神獣を召喚しようとしてる。闇神獣が眠っているのはノアニール王国の中心部、そこで召喚を行う可能性がある!」

「どこで情報を手に入れたかは聞かないことにしますが、闇神獣ですか? そんなもの初めて聞きましたけども?」

「あれ? 結構有名じゃ無いのか?」

「残念ながら私は聞いたことがありませんね。闇神獣がどんなものなのかなんて、もちろん場所もです。その場所も存在も知ってる貴方に対する疑いは更に上がりました」

「うっ! せっかく情報を手に入れたのにこのざまかよ。俺の努力は一体何処?」

「ですが貴方に対する感謝の気持ちも多少上がりました。米程度ですがね」

「……お前に疑うなって言うのは無理があるのですね。わかります」

「それで召喚はいつ行われるのですか?」

「今の時間は?」

「約12時です」

「あと1日くらいだな」

「……はい?」

「あと1日くらいだな」

「そこまでしか時間が無いのですか!?」

「無いのです。具体的な召喚時間は分からないけどな」

「そこが1番大事だというのに……仕方ありません、今すぐノアニールに向かいましょう」

「え?」

「ここからノアニールまで相当時間が必要です。今から行って中心部までギリギリ辿り着ける位です」

「マジですか!」

「馬の準備をします。早く準備してて下さい」

「この世界にも馬っているのな! どうでもいいけど!」

 メアが慌てて部屋を出るのと比べ木葉は意外に落ち着いている。

 ここで負けても結局犠牲になるのは、木葉のみ今メアが死んでも木葉がやり直せ、ばそれすらも無かったことに出来る。さっき交わした会話も何もかも

「現実ってのは酷いもんだよな」

 木葉が悲しげにそう呟く

 その言葉に返事をしてくれる者が居たとしても誰も理解はしてくれないだろう。レイでも女王でも

 理解できるのは1人自分だけ、努力を理解してとは言わない、認めてとは言わない。ただこれで正解なのだろうか?

 世界で1番難しい問題の答えを木葉はその小さな頭で考える。

 負ければ激痛

 勝てば幸せ

 傍から見れば勝つ方がいいように見える。だが木葉の黒い色の瞳には勝つ事こそが地獄への片道切符のように見える。ただ負けても永遠に続く地獄、木葉に逃げ道は無い

 救うしかない、救われるしかない

「また今度一緒に出掛けようね」

 木葉の脳内に言葉が響く

 思い出せない大事な記憶

 だが今思い出してしまえば何もかも壊してしまうのでは無いかと感じれるそんな記憶。

「奴にとって私達は所詮その程度だったんですよ」

 1人の少女がそう呟く

 この世界には木葉の知らない謎が多すぎる。自分の身に起きている事すら理解していない、出来るわけがない

「君が諦めれば全てが終わる。何事も無かったかのように何もかも……ね」

 頭の中で様々な言葉が木葉を苦しめる。何も知らない、何も覚えていない

 知らないというのは罪

 生き続けるのは大罪

「愛する人を苦しめるのが君のしたかった事かい?」

 だから何度でも死んで変える

 木葉が望んだ未来に

「私ね。木葉の事とても信じてる……だから諦めない。またどこかで会えるもんね」

 理解が出来ない、聞いたことのない言葉。だが確実に木葉の頭を締め付け今にも頭蓋骨が割れ木葉が生きるために必要なものをすべて引きずり出す様な、呪いのような言葉

「準備出来ました。早く行きましょう!」

 1人ネガティブな思考をしてる中で1人の少女の声が木葉の思考を止めた

「悪い悪い、チャッチャと行って片付けてくるかメイド長様!」

「もちろんです。悪の1人や2人倒せなくてはメイドが務まるはずがありません」

「そりゃ頼もしいねぇ!」

 馬車に乗り込む。

「目的地はノアニール王国の中心部だメイド長様! 俺、場所分からないからお前を頼りにしてるぜ!」

「戦闘も移動も私頼り、貴方ろくな大人になれませんよ?」

「んなこと俺が1番知ってるわ!」

「はぁ〜とりあえず座ってください。落とされますよ?」

「だからそれも分かってるっての」

 馬車が動き始める。木葉を1度殺した犯人の元へこの戦いは木葉にとって

 復讐であり、世界を救う事、とても重要な事だ。

「もうこれ以上被害は出させねぇぞクソ野郎」

 木葉は人が聞き取れるか聞き取れないかギリギリの声で呟く

「あの痛みは忘れねぇからな何ひとつ忘れねぇからな」

 木葉はそう最後に呟き口を止める

 今からは覚悟を決める時間

 無駄口を叩いている暇はない。忘れない。木葉はそう言葉で表した

 忘れるはずもないあの絶望を

 これから起きる木葉の戦いを


 ただ1つを除いて

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