第一章15『魔法は来世から』
「え?」
「だから私も泥舟に乗ってあげましょうと言っているのですよ」
木葉が想定していそうでいなかった事が起こった。メアは確かに口にした。木葉が味方だと。
「え? マジで? 今の話信じるの?」
「えぇそうですよ。信じてあげます。なので早く話を進めていただいて貰いたいのですが?」
「……お前あまり人を信用しすぎるのも良くないぞ」
「信じると言っても少しです。貴方が敵であろうと貴方を盾として使うだけです」
「おう〜まあでもありがとよ。こんな事態になってるのに味方いなかったからさぁすげぇ嬉しいんだ」
「悲しい人間ですね」
「なんだとコラ?!」
「ふふ、冗談です。ですがどうするのですか? 私達だけでは到底倒せる相手ではないと思うのですが?」
「なら大丈夫だ! 相手は全く魔法を打てないそうだ! 近距離での戦闘は出来るだろメア」
「確かにできますが相手が魔法を打てないという根拠は何ですか?」
「魔物召喚出来る奴は魔法が打てないんだろ?」
「えぇ確かに魔物召喚出来て魔法が打てるなんて並の者じゃ無理ですね。出来てもケットシー位です」
「だろ!?」
「ですが世界を滅ぼすほどの魔物を召喚するのでしょう?」
「魔法が打てたらか? なら中級魔法しか打てないだろ」
「貴方、魔法持ってる相手に素手で挑むというのですか?」
「……どうにか出来ませんか? メイド長様」
「できないことは無いです。ですが勝てる確率は0に等しいでしょう」
「助っ人って呼べないか?」
「誰も信用できません。こんな事態になっているのなら尚更です。2人で行動をしていた方がより安全です。敵にもバレにくいでしょうし貴方が敵なら簡単に倒せます」
「助っ人は呼べませんか……にしてもまだやっぱり俺のこと信用出来ないんだな」
「少しだけなら信用してます」
「わかって聞くがエリスを助っ人して呼ぶのはダメなんだよな?」
「もちろんです。私はエリス様に傷1つでも付けば私は自害します」
「そこまでかよ。中級魔法ってどれぐらい強いの?」
「例えるのなら第14騎士団の新入りが使えるくらいですね」
「それって強いの?」
「一言で言えば弱いです」
「それって勝ち目あるよな?」
「相手の属性にもよります」
「属性って何ですか?」
「属性とは炎、雷、水、風、闇の5つあります。勝てる属性は水と風、闇ですね」
「炎と雷って何が出来るの?」
「炎は5つの属性の中で1番の高火力を持ちます。雷は範囲攻撃ですね」
「あれ? 雷なら勝てそうな感じがする?」
「雷に勝てない理由は私が苦手だからです」
「何で雷苦手なんだよ……」
「私は過去に嫌な体験をしているからです。聞きたいですか? 長くなりますけど」
「また今度聞くことにします。でもとりあえず勝てる確率の方が高いってことでいいんだな?」
「えぇもちろんです。ところでその首謀者の居場所ってわかるのですか?」
「……分かりません」
「……無能ですね。ですが今はもう暗いです。戦うとしても準備が出来ていません。とりあえず今日は寝ましょう」
「……はい」
「なにかご不満でも?」
「いや何でもない。出来れば早く首謀者を倒したいだけだ」
「やる気は褒めてあげます。撫でて欲しいですか?」
「いやお前に撫でられると首が曲がりそうだからいいや」
「そうですね。それでは明日お話しましょう。おやすみなさい」
「おう! おやすみ!」
メアが歩くのと同時に足音が聞こえる。ごく当たり前のことだ
そんな当たり前の事でも木葉の心の支えになる。メアと話すことも含め、なんと言われても、それは木葉にとって嬉しい事だ。そしてその足音が遠のいていく
自分の命がどんどん遠くなるかのような感覚に襲われる。
もしこれで負ければまた最初からやり直しこの1秒1秒を大事に生きなくてはいけない。
最初の死は木葉が寝てから日が昇る間、今の時間はこの世界に来て1日目世界が終わってしまうのは、残り1日半位。死ねばやり直しと痛み
勝てばやり直しも無し痛みも無し
エリスとメアの顔が見れる
選択肢は1つだけ……後者しかない
「考えてても仕方ねぇか……もう寝よっと」
眠気はすぐ近くに来ている。
木葉が目を閉じるともう1度開けるのが難しくなる。80kgの重りを上げるより瞼が重たくなっている。
木葉が寝ている部屋のドアが開く音が聞こえる。そして足音がゆっくり木葉に近づき木葉に顔を近づける。木葉の顔に息がかかる。撫でるのかのように【それ】から発せられた。
「愛してる」
---???---
「おはよ木葉……いやおやすみ木葉かな?」
「うわ! 気持ちわり!」
「急にそれは酷くないかな?」
「顔を近づけるな!」
「僕はこの場から動けないから君に顔を近づける事も触れることすらできないんだよ?」
「え? マジで?」
「うんマジだよ。僕は君に顔を近づけるほど悪い女じゃないよ」
「ホントか?」
「ホントだとも君は僕の事を全く知らないのに急に顔を近づけるななんて女心が傷つくな。僕はそんなに安い女じゃないよ!」
「確かに……言えてる?」
「それで何か収穫はあったかい?」
「あるちゃあるがやっぱり首謀者の場所が分からないとどうしようもない」
「教えて欲しいかい?」
「……タダで教えてくれるわけないよな?」
「いやいやタダで教えるよ」
「マジでか?」
「マジでだよ」
「そりゃいい! 教えてくれ!」
「首謀者はノアニール王国の中心部にいると思うよ。何より闇神獣を召喚するのだろ? なら闇神獣が眠ってる中心部で召喚する方が楽だろう」
「中心部か……ありがとよ!」
「どういたしまして。としてもどうやって国の中心部に行くんだい?」
「……中心部ってどこだ?」
「はぁ〜国の中心部にある物は三大英雄の墓だよ。闇神獣の寝床の上に三大英雄の墓を置くなんて不謹慎だね」
「三大英雄の墓ねぇーところでお前の墓は?」
「僕の墓があったところで卵を投げられるだけさ。そんな事されるといくら僕でもイラつくよ」
「だよな分かるよその気持ち。……後闇神獣って召喚されたらどうしようもないのか?」
「逆に教えて欲しいね。そんなこと出来たら君は死ななかっただろうね。何より彼女のペットだからね。そんな簡単に倒せるほど弱くないよ」
「そうか。やっぱり倒すしかないのか。まあでもメアいるし勝てるよな?」
「それを僕に聞かれてもね。僕は予言者じゃないし。君魔法打てるでしょ? 後ろから援護すれば?」
「魔法打ち方知らないんだよな俺」
「手を前に出して手の平に」
「力を込めてみて」
「そこに魂を集めるように」
「慣れれば簡単だよ」
「僕から貰った。魔力だからね」
「簡単に打てるよ」
「出口はあっちだよ。健闘を祈る」