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君を救う死生活  作者: 鈴先壮 ゆっクリ
第一章 絶望に満ちた三日間
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第一章12『サヨナラ無力』

「……王家の血?」

「そうだ! 僕は王家の血を引く者王になるはずだった可哀想な魔法使いだ!」

「は? でもお前が世界を壊そうとか思って勝手に死んだんだろ?」

「それには理由があってね。まだ答える気は無いけどさ」

「そこが大事なとこなんだよ!」

「知らないね! 僕の事無視してたのに!」

「まだ言うか! ガキかよお前!」

「ガキだよ! まだ18歳のガキだよ!」

「……マジかよ。魔法使いとか言うんだから60とか行ってんのかと」

「君は僕の事どこまで侮辱したいんだい?!」

「とりあえず話を進めてくれるかしら?」

「全部君のせいだろ?!」

「話してる中に勝手に入ってきて話の邪魔をしたのに無視されたら怒るのはないんじゃ無いかしら?」

「君は僕の名前知ってるだろ!? 一々魔法使いって言い方しなくてもいいじゃないか!」

「あら? 貴方も私の事を君って呼んでるじゃない」

「それはまだ木葉に君の名前を言っちゃいけないと思う僕の配慮だろ?!」

「あの〜すみません。話の続きを」

「君は黙ってて!」

「貴方は黙ってて」

「ごめんなさい」

 木葉がここに残っている理由は、レイや女王から話を聞く為、しかしその2人の女は木葉の話をするどころか2人で言い争う始末。

 有り得ないことに遭遇し少しでも時間が欲しいのにつまらない事で喧嘩する2人に木葉は怒りを覚えていた。

「だから僕は木葉に自分の名前を言っていいと言ったのに君は僕の事を魔法使いって言ってるじゃないか!」

「あら? それがいけない事かしら? 事実貴方は魔法使いでしょ?」

「僕はそこらの魔法使いとは別物なんだよ! 僕は三大英雄を殺した人物なのにただの魔法使い呼ばわりはやめて欲しいね!」

「傲慢な考えはやめた方がいいわよ? 三大英雄を殺したくらいで粋がるのもどうかと思うわ」

「……なぁ」

「三大英雄を殺したぐらいだって!? なら君の自慢の娘に殺してもらえば良かったじゃないか! そうか君はその娘に殺されてしまったからそう言うのも恥ずかしいのか!」

「貴方身の程を知った方が良くてよ? 貴方と私なら私の方が強いのだし」

「それは君の能力だろ? 能力無かったら弱いクセに!」

「……おい」

「能力あってもそれは自分の力でしょ? 能力と強さは違うというのなら貴方だって違わない?」

「何も違わなくないだろ?!」

「だって貴方の魔法は所詮付け刃、能力は生まれ持った力なのにそれを否定するなんて無理があるわ」

「その付け刃を付けるために努力したんだ! 努力もせずに強くなった君には言われたくないね!」

「お前らいい加減にしろよ!」

「ん?」

「?」

「そんなくだらない事で喧嘩して楽しいか? 大体俺をここに引き止めたのは、女王! お前だろ? ならちゃんと話しろよ! 俺には時間が無いんだ!」

「あら? 貴方私達が喧嘩してる間に何もしなかったのに?」

「だよね。君は僕達が喧嘩してる間に何か打開策を考えてたかい? 考えてたなら聞きたいものだね」

「……んな物ねぇよ。でもよ! それを考えてくれるって言ったのはお前達の方だ! なら本人達がそれでどうすんだよ!」

「君の言い分も分からないことも無いが、それは少し違うんじゃ無いかな?」

「は?」

「僕達はあくまで一緒に考えると言っただけで、君の考え無しに何か考えるなんて言ってないよ?」

「そうね。私達は貴方の事を深く知らないから私達だけで何でもかんでも考えるなんてのは無理ね」

「なら話してやるよ! 俺は嘘つきで他の奴らなんかどうでもいい! 自分が楽できればそれでいいと思うただのクズだ! さぁ話したぞ! なにか考えろよ!」

「嘘だね」

「嘘ね」

「お前ら一体何が言いたいんだよ!」

「貴方が嘘を言ってるって言ってるだけでしょ?」

「俺がいつ嘘を言ったんだ!」

「全部だね」

「はぁ?!」

「君は自分が良ければなんでもいいなんて思う人間じゃない。僕達はそれを知ってる」

「知らねぇって言ってたのはどこのどいつだよ!」

「僕達だね……待って僕の言葉を訂正させてくれ。君の言葉は全部嘘ではない。嘘ついたから嘘じゃないね」

「……俺には時間が無いんだろ? 三日しか無い! のにここで時間を無駄に使わせないでくれよ!」

「あれ? 君まだ気づいてないの?」

「何がだよ?」

「ここは時間の流れが止まってるんだよ」

「はい?」

「君がここにいる限り無駄にされるのは君の精神の時間だけ。向こうでは止まってるんだから」

「……はい?」

「だから、起きたら君は1秒も経ってない状態でスタートするの」

「……はい??」

「要はカクカクシカジカね」

「そういう事か!」

「君達やっぱり僕の事バカにしてるよね?!」

「してない、してない」

「する訳ないわ。する訳ないわ」

「大事な事だから二回言ったの?!」

「ならここで喧嘩しても向こうでは時間が止まってるから、普通に喧嘩してたわけな?」

「僕の話を無視しないでくれよ……」

「えぇそうよ? だから無駄は無いでしょ?」

「なら喧嘩してても良いぞ」

「君やっぱりクズだね!?」

「はぁ? ふざけんなよ! お前らが仲良く喧嘩してるから見届けてやろうってだけじゃねぇか!」

「男として止めるべきじゃないかな?」

「そんなの差別だ! 俺が止めても結局メリット無いからいいだろ!」

「……君は僕が悲しくて泣いてる姿が見たいのかい……?」

「泣いてる姿が見えないからなんとも思わないね」

「確かに! 僕が手を貸してあげなきゃお先真っ暗だね!?」

「お前の手を切ってやるよ!」

「ここまで来れるなら来てみなよ! 僕は動かないからさぁ!」

「なら行ってやるよ!」

「やめた方がいいわよ?」

「……はい?」

 そう言われるより少し前に木葉は足を前に出してしまった。そこには地面がない。少しの段差なら安心できたが木葉は勢い余って落ちてしまう。

 木葉は頭から真っ逆さま。そんな木葉に抵抗できる術など無く、勢いも変わらぬまま地面へ体が急ぐ。

「嘘だろ!!!!」

 落ちて数十秒で地面に辿り着けると思っていたが、そんな木葉の思いは心から逃げていく。

「もし地面があったら俺は怪我で済むのだろうか?」

 そんな事は絶対にありえない。

 ビル15階から落ちたら3秒で地面に着くと聞いたことがある。木葉は体感ではあるがもう数十秒も地面と出会えていない。簡単な計算、木葉は45階以上から落ちていると考えられる。

「助けて欲しいかい?」

 先程まで喧嘩をしていた奴の声が聞こえる。

「走馬灯か」

「走馬灯だよ。それで助けて欲しい?」

 木葉は秒ではあるが長時間の死を体験している。精神的にやられている木葉はその問に対し当たり前の回答をする。

「……助けてくれ」

「なら今誓ってよ。君の救いたい者を救い、僕の目的を代わりに果たすと」

「……わかった。誓うよだから助けてくれ」


「その言葉を待ってたよ」

「やっぱり君は僕が認めた男だ」

「君のためなら僕は喜んで」

「僕の命を売ろう!」

「ようこそこちら側の世界へ」

「そしてサヨナラ無力の木葉」

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