第一章11『レイ・ノアニール』
「……話がややこしくなる!」
「それも仕方ないかもしれないわね」
「どういう事だ? 魔法使い!」
「僕にも名前があるのだけれどね?」
「答えろ! お前が言っていた。女王はこいつの事なのか?」
「こいつと言わないでくれよ。一応僕の友人なんだから」
「じゃあこいつが女王でいいんだな?」
「だから……まあいいや。そうだよ。僕の言っていた女王は君の言う『こいつ』の事だ」
「こいつって呼ばれ方とても嫌のだけれど」
「『こいつ』は少し黙っててくれないかな?」
「……」
「それで? 他に質問ある?」
「ある。俺が導き、導かれるとか言っていたがどういう事だ?」
「それを僕に言われてもね?」
「なら答えろ。女王」
「……」
「あっごめんもう喋っていいよ?」
「なら言ってもらわないと分からないわ」
「それで答えてもらえるか?」
「もちろん答えるわ。でもいいの? 答えを知って今の貴方じゃ何も出来ない気がするのだけれど」
「それでもいい。このわからない状況の中ちゃんと質問に答えてくれる奴は必要だ」
「僕も充分質問に答えてた気がするけどね?」
「……」
「……」
「ごめん。僕もう黙るよ」
「それでうるさい奴が黙ったが、質問には答えてくれるんだよな?」
「もちろんうるさい奴が黙ったから教えてあげるわ」
「……別にうるさくないもん」
「……それで質問の答えなのだけれど、事情があってこれからすぐに起きることしか言えないわ」
「は!? さっきと言ってることが違うじゃねぇか!」
「私はあくまで質問に答えると言っただけ。どの範囲答えるかは言ってないわ。それに私が質問に答えるのだから、それで充分だと思うのだけれど?」
「……分かった。答えられる範囲で答えてくれ」
「分かったわ。まず貴方の能力の説明をするわ。巻き戻りの発生条件は、貴方が死ぬ事または貴方が巻き戻りたいと思うことそれと人に話すことね」
「ん? それだけ聞くと凄く嬉しい能力なんだけど?」
「話はまだあるわ。黙ってて」
「ごめんなさい」
「巻き戻りをすると貴方が死んだ分だけ激痛を伴うわ」
「はい?」
「今日起きた時に何もしてないのに、痛くなかったかしら?」
確かに木葉はその体験をしている。
そのせいで余計にエリスに心配を掛けてしまっているし、その激痛により疲れて眠ってしまっている。
「その顔は痛みか何かあったのね。なら話が早いわ。巻き戻りを使う度に貴方が伴う痛みは増え続ける。いつかそれは貴方が巻き戻りや死ぬ事や生きる事も諦めさせる物になる」
「……」
「なら最低限の巻き戻りで済ましたいと思うでしょ?」
「ああ確かにそうだ」
「その為にはここで嫌でも私と魔法使いの話を聞かなくてはいけない」
「僕の名前は魔法使いじゃないよ……」
「……」
「……」
「……」
「それで女王とやら話の続きをしてくれ」
「……」
「構わないわ。貴方が元の世界に戻ってする事は、貴方に呪いを植え付けた人物を探す事と世界を壊そうとしてる馬鹿を倒す事ね」
「……世界を壊す?」
「えぇどっかの魔法使いに片想いしてる奴がどうやら世界を壊したいそうよ」
「……僕の名前は魔法使いじゃないって」
「……」
「……」
「……」
「それで呪いはどういう事だ? 俺ってこの世界に来て人に恨まれることした覚えないんだけど?」
「……僕が恨んでやる」
「……」
「……」
「……」
「貴方を恨む恨まないじゃなくて誰これ構わず植え付けてるそうよ?」
「それじゃあ俺以外にも呪いが掛かってる奴がいるって言うのか!?」
「そうよ?」
「それでその呪いを植え付けられるとどうなる?」
「呪いの発動は呪術師次第、まあ1回目の死は馬鹿の勝手な行動に巻き込まれただけでしょうね」
「だけって相当すごいことだぞそれ。それでその馬鹿を止めても呪いが呪術師の気分次第で襲いに来て、呪術師を止めても馬鹿が世界を壊すと」
「そういう事よ。猶予は3日。3日目は寝ちゃいけないと思っといた方がいいわね。四日目は訪れないのかもしれないのだし」
「そうだな」
たった3日の間に呪術師と世界の崩壊を止めなくてはいけない。
家に引きこもりゲームばかりしていた木葉には難問だった。
「ここで魔法使いの力が役に立つわ」
「どんな風にだ?」
「出来ても戦闘で自分の身を守る程度だけれど」
「……それって馬鹿に遭遇した場合のみにしか使えないよな?」
「えぇそうね。だって呪術師は呪いをいつでも発動できるのだからね」
「その自分の身を守る程度って何が出来る?」
「魔法ね」
「魔法?」
「そう魔法。出来ると言っても最下級魔法だけれどね」
「そうか……」
「後は助っ人を探すも良し、その3日の間で最上級魔法を覚えるも良し」
「最上級魔法ってそこまで簡単に覚えられるのか?」
「最悪10年以上掛かるわ」
「……それって俺の死何回分?」
「考えない方がいいと思うわ」
「そうだよな。俺だって考えたくないよ」
「そこまで言ったら分かると思うけど、貴方は助っ人を探すしかないわね」
「確かにそれしかないな。……いや待てよあんたが助っ人としてこればいいじゃないか!」
「私はここから出る事は出来ないからそれは無理ね」
「なんだよ……なあ」
「何かしら?」
「世界を壊す馬鹿はどうやって壊そうとしてるんだ?」
「……闇神獣の召喚」
「闇神獣?」
「そう。この世で1番召喚が難しいとされてる。いえ出来ないとされてるわ」
「でもその馬鹿は召喚できると?」
「そうね」
「馬鹿じゃねぇじゃねぇか!」
「そう言われても貴方が召喚できないだけでしょ?」
「……そうでした。ごめんなさい。って事は最上級魔法も軽々使えるって事だよな?」
「召喚と魔法は別物よ? どんだけすごい魔物が召喚出来ようとも、魔法が使えるってことではないわ」
「ほうほう」
「でも使えるって可能性も視野に入れといた方がいいと思うわよ」
「一応入れとくぜ。中級魔法は使えるって事を頭に入れとけばいいだろ」
「まあそれでいいわ。それで対抗するにはこの魔法使いの力が必要なの」
「それでその魔法使いはすっごく不機嫌なんだけれど?」
「ごめんなさいね? 貴方が黙ると言ってたのに口を挟むから」
「それでも無視は無いよね! 無視は!」
「悪い悪い。別に悪気があった訳じゃ無いんだ」
「その表情で言っても説得力ないよ!」
「それでも貴方は木葉に諦められたら困るのでしょ?」
「確かにそうだけど……」
「貴方の力を使わなくては木葉は今回の事を乗り越えられないわよ?」
「ぐぬぬ」
「ここで貴方の力無しに挑んでも木葉の精神が削れるだけだと思うわ」
「ぐぬぬぬぬ」
「俺からも頼むよ魔法使い。あんたは最初に俺に言ったよな? パートナーになれって」
「なれとまで言ってなかった気がするんだけど?」
「でも同じ事だろ?」
「ええ確かに今回の事で木葉に好感を持って貰えれば貴方だって嬉しい事でしょ?」
「確かにパートナーに近づくには信用も得なくてはいけない。けれど! 名前を覚えてもらえないのも癪だ!」
「もう1度君に言う! 僕は三大英雄ではなく四大英雄になれたかもしれない人物! 名はレイ・ノアニール、王家の血を引く者だ」