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違憲判決~如何なる法も条文だけでは、誰も救いません~

作者: 冥海の石猫

 最高裁判所判事が15名全員結託したら、多分、どんな判決でも作れるんだろう。

 僕ら、話したことも無い、裁判官を信じて本当に良いのかな?


「主文

 被告たる、佐藤友美及び若山和樹を死刑と処す。また、共犯者の三名を無期禁錮とする。


 理由

 佐藤友美は法務大臣として、また若山和樹は東京都知事として、憲法遵守義務を負う立場にありながら、あえて憲法の定めを無視し、隷下の職員をして憲法の秩序の破壊行為をさせた事は……」


 裁判長の判決朗読が始まった瞬間、法廷に絶対零度の風が吹き荒れた。幾ら何でも無茶苦茶だ。二人とも現職だぞ! しかも、これは民事裁判だ! 何故、主文が『死刑』なんだ! 訳が分からなさ過ぎる。

 誰も、そんな立札を用意していないから、速報すらできやしない。


 何故、『15歳同士の結婚を認めろ!』という裁判の判決が『死刑』なんだ‼


「憲法第二十四条の『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立』する定めに反し、単に年齢だけで結婚を認めなかったのは、憲法秩序の破壊行為である。なお、民法の定めが憲法に違反しているのは明らかであることから、民法に従った事をもって被告らの罪が軽くなる訳ではない。

 さらに、白昼堂々憲法に違反する形で、多数の無辜の民衆に狂権を行使している事から、当法廷は、本行為が刑法77条の内乱に該当すると判じた。また、同条項の『暴動』が、傷害又は殺人を伴わなくても成立する事は論ずるまでもない」


 は! 民法に従って、普通に婚姻届けを受理しなかっただけで、内乱だと! 狂ってやがる。そもそも、そんな罪状で訴えられた訳じゃない。


「本法廷、最高裁判所は、憲法第七十六条の規定により、『訴訟に関する手続き』の『規則を定める権限を有する。』ものである。また、同九十八条の規定により、刑事訴訟法より上位に位置する事は明らかである。

 本件の重大さ悪質さから、当法廷は検察官の訴追を待たず、被告を裁くものであり……」


 解釈が強引過ぎる。無茶苦茶だ。そんな理屈を構成したら、誰でも何時でも死刑に出来るって事じゃないか!

「クーデタ」

 隣にいた男が、そう一言こぼして、法廷から足早に飛び出して行った。いや? クーデタって? 軍隊がやるものだろ? 可笑しくないか?


「また、当法廷は、本件については、再審請求を禁ずる事を規則として定めた」


 何が何でも殺すつもりか? 狂ってやがる。


「憲法はおろか全ての自然の権利を蹂躙された、原告らの苦痛は察するに余りあるものがある。当法廷としては、死刑の基準を判示した所謂(いわゆる)、永山基準を本件に適用するべきか慎重に検討した。ここで、永山基準が刑法第199条の殺人罪に適用する基準である事を考えると……」


 一体何を言っているんだ?


「本件に、死刑を適用するのは、法の要請にかなうものである」


 誰がどう考えてもこの判決は無茶苦茶だろうが!


「しかし、死刑は人の命を奪う、過酷な刑である事を鑑み、さらに一層の検討が必要である」


 なんだ、流石に冗談だったんだ。しかし、悪質過ぎる、法廷侮辱罪を構成していないか?


「しかしながら、被告らに一遍の反省の色もなく、また影響も重大であることも鑑みると、やはり死刑の適用はやむを得ない物と判じた」


 裁判長の判決理由朗読が終わり、法廷には空虚な空気が流れていた。これは大法廷だぞ? 最高裁の判事が全員狂ったって事なのか、今後日本はどうなるんだ。



           ◇  ◆  ◇



「主文

 最高裁判事15名全員を弾劾し、罷免を宣告する。」


 あの衝撃の判決から、半年、これも衝撃の判決が行われた。今度は国会だ。


「理由

 本、弾劾裁判所は、憲法第四十一条の要請に従い、『国権の最高機関』としての責任を果たすため、本件を担当するものである。訴追委員会による、裁判官弾劾法、第二条第一項および第二項を理由にした訴追を受け慎重に審理を行った。

 本件訴追の事由は、法の適正行使を怠った意味で、『職務上の義務を著しく違反』しているのは明らかである。また、裁判に関する信頼を著しく棄損した意味で、『裁判官としての威信を著しく失うべき非行』に該当することも明らかである。

 以上

 なお、裁判官弾劾法第三十七条の定めにより、即時効力を発行する」


 慎重な審理??? 何処がだ? 被告人の尋問すら行われていない。この国はどうなっちまったんだ。



          ◇  ◆  ◇



 それから、約20年、立憲主義を放棄するまでの期間、日本国で内閣や最高裁判所がマトモニ機能する事は無かった。


 何故、我々はこんな欠陥だらけの憲法を奉じていたんだろう。こんな、解釈の余地があり過ぎる、憲法を何故、有難がっていたんだろう。歴史家達は面白がって『暗黒法時代』なんて呼んでやがる。


 最悪の結末だぜ!



 逆に、国会議員の大半が結託したら、裁判官を自由自在に脅す事も可能なはずだよね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文句無し!裁判に条約を認定し裁定に取り入れる事は 三権分立を無視する行為である、といのが無いけど 共感100%
2019/03/18 10:44 退会済み
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