⚠︎FICUMENT1.11
この文章を読んでいるみなさまは既にご周知のとおりでしょう。ですが、ここは自分からもひとつお伝えさせて頂きます。
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
前述までの佐藤真による⚠FICUMENT1.0「出会いシステム」〜うそぶ活動記録〜はいかがでしたでしょうか。満を持して次なる彼の作品が完成するのをお待ち頂きたい所ですがその前に、私、本田スイリから余興までのお相手をさせて頂きたいと思います。しかしながら、この話も、もしかするとただの嘘にすぎないのかもしれません。もうお分かりかとは思いますが、この話を信じるか信じないかもあなた次第です。信じたいものを信じて疑いたいものを疑って下さい。嘘は嘘だとわかってこそ楽しめるのですから。
これは私、本田スイリの紡ぐもうひとつの⚠FICUMENT。
時期はそう、かのエイプリルフールの事件から1週間も経った頃でしょうか。私は愚妹と共に渋谷の街を歩いていました。
「ねぇ、ミサキ。あの日、真となんかあったんじゃないの?」
「え?ま、真さんと!?な、なにもっ!なにもないけどっ!?」
お恥ずかしい話ですが、この子は昔からとても嘘をつくのがヘタなのです。それでいてその自覚は本人にはないらしく、つい人に嘘をついてしまう悪い癖がある。彼女自身幼少の頃からこの癖に悩まされていたのですが、まぁこの話はまたの機会があればゆっくりお話させて頂きましょう。
「久しぶりだね、ミサキが僕に嘘をつくの。」
「え…あ、ごめん。でも嘘ではないの。本当になにもないよ…。」
「ふうん、連絡先交換したんでしょ?」
「…してない。」
真は一体何をやっているんだか。もう少し男を見せてほしいものです。
「なんだ、じゃあ今度言っとくよ。連絡くらいしてあげればいいのに。」
「いいの!…別に話す事ないし!私受験生だし。」
どうやらこれはどっちもこじらせてるみたい。まったく手のかかる妹です。
私たちがいま渋谷でこうしているのは、たまたまミサキが部活の用事で東京まで来ていたので、私が大学に行く前に昼飯でも食べようという話になった次第です。先日の事件でミサキも渋谷の街を歩き回ったのでしょう、かの不健康で有名なファーストフード店を彼女は得意顔で紹介してくれました。
「フライド・スパゲッティ・モンスター…良い名前だね。」
「ここ、チェーンぽいけど見た事ないよね。お店のサイトもないし、Googleマップにものってなかったの。」
「へぇ、相変わらずミサキはラビットホールを見つけるのが上手いね。」
「えーやめてよ。べつになんでもないでしょ。美味しいよ。入ろ。ルカさんいるかな?」
「ルカさんって、櫻井ルカ?ここで働いてるんだ?」
「そう。お兄ちゃん中学の同級生だよね。」
ピロリロリロ〜♪という拍子抜けする入店音とともに私たちが店内に入ると、懐かしい顔の店員が奥から出てきました。
「いらっしゃいませー!あれっ!?ミサキちゃん!わーこないだぶりだねぇ!来てくれたの?ありがとー!」
「はは、ども」
「え、てか、もしかして本田君!?うわーっ見違えたねぇ!!身長伸びすぎでしょ!!」
あまり客がいないとはいえ、これほどフランクに店員に話しかけられると逆にこちらが心配になって遠慮してしまうものなのですね。その場では「久しぶり!」と一言小声で返すのみにして、私たちは注文をしました。ほぼ形式だけの番号札を受け取って席につきます。店内では地元のラジオ放送がかかっていました。
”S wave! みなさんこんにちわ〜。4月9日、正午をまわりました。ShibuyaFM道玄坂スタジオよりお届けしてしております。Aikaです。今日のテーマは「もし生まれ変わるなら」です。皆さんからのお便り、ファックス、メール、SNSなどでの声をお待ちしておりますよ。私はそうですねー、男性になってみたいかな?…んーでもやっぱり。、女でいいや。それでは最初にお届けするのは人気アイドルユニットからソロとしてデビューしたmimiの新曲「もうひとつのセカイ」”
「はい、おまたせー!」
揚げたてのフライドスパゲッティーバーガーを櫻井さんが持ってきてくれました。まぁ本来店員ですから当たり前と言えば当たり前ですが、彼女の場合本当に友達感覚で持ってきてくれたという印象になってしまいます。
「あれ?一個多くない?」
「うん!あたしも食べよーと思って。ご一緒しても良かった?」
さすがにこの展開は予期していなかったので面食らいました。
「え、もちろん!でもいいの?」
「いいのいいの。店長もどうせ見てないし。もうすぐシフト終わるし。」
「なんか、わりと自由な職場みたいだね。」
「うん、楽で良いよー。」
この店の中で唯一健康を意識したと思われるフライドグリーントマトバーガーなるものを私も手に取ってみます。
「ね、それはそうとさ。本田くん、ミサキちゃん。突然なんだけどさ。ちょっと相談っていうか、心配事があってね。」
「え、あの、どうしたんですか」
妹が珍しく他人と積極的に会話をしているということと、思いの他このフライドグリーントマトバーガーがいける事に驚きつつ私は何気なく彼女の話を聞いていました。ですが、そんなことも櫻井さんの次の一言への驚きに比べれば些細な事でした。
「まこっちがね、いなくなっちゃったの。」
「え、真さんが!?ですか?」
「どういうこと?」
「4月1日の夜にちょっとお店に顔をだして、なんだかいろいろと大変な目にあったらしいってことは聞いてたんだけど、ちょうどその頃お店が忙しかったのもあってあんまりちゃんと聞いてあげられなかったんだよね。なんだかひどく落ち込んでいたみたいだったんだけど。」
「落ち込んでた?」
なんとなく、私は妹の方の様子を伺ってみたくなりました。すると案の定、何となく気まずそうにハンバーガーを食べるミサキの姿があります。
「…ミサキなんか心当たりある?」
すると彼女は顔をブンブンと横に振りながらうそっぽい否定を示しました。櫻井さんが鈍めのひとなのか気づいていないようでしたが。おおかた、真のことだからミサキに手ひどく振られたのでしょう。意気消沈して引きこもっているのが容易に想像できます。こう見えて私の推理力をなめてもらっては困ります。
「それから何度か連絡してみたんだけど繋がらないし、家にも行ってみたんだけど帰ってないみたいなんだよね。あたし、今回の件についてあまりちゃんと関わってなかったからさ、まこっちになにかあったんじゃないかと思って心配で…ほら、ミサキちゃんあいつと一緒にフィキュメントって小説の謎解きをしてたじゃない?それがなにか関係してるのかなって。」
たしかに、ちょっと女の子に振られたくらいで1週間も自分探しの旅に出てしまうというのは引くレベル。…いくつかの可能性が私の頭をよぎりました。
「ねぇ、あの後何があったのか、知ってたら教えてくれないかな?」
ミサキはさっきからそわそわしています。ここは少し、どいつもこいつも荒療治が必要そうですね。いえ、こちらの話です。
「櫻井さんはどこまで聞いてるの?」
「んーと、説明するのが難しいって言われてほとんど…本田君が私たちと同じ大学だったって事とあの有名なうそまる先輩が絡んでたとかその辺しか…」
「僕はあの日、真と少し話したけど、その後この店に来ているのだとしたら最後に会ってるのは櫻井さんということになるね。」
「なにかまた変な事件に巻込まれてたりしないよね?」
「フィキュメントのオリジナルは読んでみた?」
「うん、一応。なにか手がかりになるかもと思って。でもこれ完結してないんだね。なんだか思ってたより怖い話だと思ったよ。でもこの謎はもう真が解決したんでしょ?」
「いや、まだ解決してないんだ。」
「お兄ちゃん?」
「え、解決してないの?」
「真がたどり着いたのは、小説内で起きた殺人事件の殺害方法を明らかにしただけだよ。小説内に登場するSNSアカウントIDiotの実態についてはまだ不明点が残っている。実は僕自身うそまる先輩の指示にあわせて、この小説を書いたけれどその辺りについてはちゃんと教えてもらっていないんだ。実際にTwitterでアカウントを作っているっていうのはあの時初めて知ったしね。」
「そ、そうなの?私はそもそもまこっちが明らかにした方法っていうのもよくわかんないんだけど。」
「いや、櫻井さんは全部知ってるんじゃないかな。」
「え、どういうこと?」
「お、お兄ちゃん、ルカさんはなにも知らないと思うよ?真さんもあまり詳しく事情を説明してなかったし。」
「全ての黒幕は君だよね。櫻井ルカさん。」
「…」
「お、お兄ちゃん何言ってるの!?」
「そうだね。まずはどこから話せば良いかな。結論から言えばフィキュメントオリジナルの謎解きイベントを企てたのは他でもない櫻井ルカだったってことさ。うそまる先輩の言ってたうそぶの最後の部員っていうのは君の事だね。
だけど、僕が推測するにその計画は半ば失敗に終わったんだ。ここにいる本田ミサキの予期せぬ登場によってね。」
「え、え〜ちょっと、なんでそういう事になるの?ルカさんもなにか言って下さいよ。」
「…」
「じゃあひとつずつ説明して行こうか。最初に僕が気になったのはこの店には不可解な点がやたらと多いってことなんだ。まずはこの注文確認用の番号札。僕たちの注文番号は202だね」
そういって僕は番号札を櫻井さんに見せます。
「なんて事はない普通の番号札だけれども、おかしいのはこの店の客の入りなんだよ。全くと言っていいほど客がいない。」
「ちょっと!お兄ちゃん失礼だよ!」
慌てる妹をよそに、僕は続けました。
「日曜日の昼時にこの客の入り。ということは202という数字が単純に今日来店した客の人数とは考えにくい。そう考えるとこの番号札には何か意味がある。ホテルの部屋番号なんかと同じで100の位が別の意味を持っている数字なんじゃないかな。つまり101番系統の札と201番系統の札の2種類の札がある。僕たちがどちらに属するのかはわからないけれど、この店の客には少なくとも2種類の客層がいる。普通の客と普通ではない客。」
それがなんだっていうのという顔をしながらミサキはそれでも黙って聞くことにしたようだった。
「もっと言えば、この店には2つの顔が存在するという事さ。おそらく何らかの秘密結社のアジトになっている。」
「アジトって…」
「根拠はまだあるよ。この店が全く広告を出していないこと。グーグルマップにも載っていないなんて今どき考えられないよね。これだけでもこの店が『あやしい』存在だっていうのは誰だってわかる。そして最後に決め手になったのはこの店の名前そのものなんだ。」
「フライド・スパゲッティー・モンスター?」
「そう。ミサキ、試しにこの店名でググってご覧。グーグルマップではなくて通常の検索で。」
「え、ちょっとまって…え?なにこれ!?空飛ぶスパゲッティ・モンスター教!?どういうこと!?」
「フライングスパゲティモンスター教(FSM)は架空の宗教でね、いや、一部では宗教法人として認められてる国もあるから架空とも言い切れないんだけど、パロディ宗教と言われている一種のジョークなんだ。この店の名前はそこに更にフライングとフライドをかけてるのは遊び心があってちょっと面白いね。」
「そんなものがどうして」
「インテリジェントデザインという考え方があってね。この世に生きとし生けるものは神の様な存在、『知能のある何か』による意図によって創造されたとする考え方なんだ。そしてFSMはこの考え方を否定するための皮肉を込めた活動として始まったんだ。この店、ハンバーガーショップというのは仮の姿で実態は宗教団体FSMの活動拠点だったというわけだ。番号札の種類で通常の客と、団体の客を区別して対応しているんだろう。まぁこのインテリジェントデザインの考え方は科学と神の関わりにおいて重要な議論のネタにはなるんだけど今は置いておこう。今は小説フィキュメントについて話を戻さないといけない。」
そう言いながら僕はフィキュメント内に登場するSNSアカウントIDiotの画像を自分のスマホに表示させました。
「IDiotのIDがなぜ大文字なのか、ちょっと引っかかってたんだ。普通にIDとパスワードという意味でのIDと考えてだけれど、これはもしかするとインテリジェントデザインを意味しているんじゃないかな。IDiotのユーザーたちの一部がある種の思想にとらわれた集団だと仮定してみる。私たち人類の創造になんらかの知能や意識が介在しているのだとすると、私たち自身の意識の中にも神の意識が内在していることになる。ネット社会における神とは、こうした第三者の意識が生み出す「空気」の中に存在していて。IDiotこそが現代人にとっての神となる。そういう宗教的な思想が仮にあるとしたらどうだろう。」
「自分が死ぬことによって、ただのSNSアカウントを神さまにしちゃうってこと?」
「そう。それが僕の考えた小説フィキュメントの犯人の自殺の動機さ。」
「そんなことって…ちょっと信じられないけど。それにしたってわかんないよ!じゃ、じゃあ櫻井さんは一体何のためにこんな謎解きを作ったっていうの?真さんをそのなんとかっていう変な宗教に勧誘するとかそういうことのため!?そんなのおかしくない?」
ミサキは少し櫻井さんを気にする様子をみせながら話していました。
「まぁこれは『お話』の中の話だからね。あまり本気にしちゃダメだよ。さて、それじゃあ次に僕らの世界の話だ。つまり佐藤真の身に起きた、櫻井ルカの思惑と誤算について僕の口から話しても差し支えないかな?」
今まで少し伏し目がちに黙って聞いていた櫻井さんは少し諦めたような寂しそうな顔で
「どぞ」
と手を出して促す仕草をしました。妹は櫻井さんのそんな様子に驚いているようでした。
「櫻井さんはさ、ただこの謎解きを真と一緒に解決したかったんでしょう。彼の良きパートナーとして。」
「え!ちょっとまって、それって!」
「まぁ、あくまで僕の想像だけどね。」
櫻井さんは下を向いて少しばつが悪そうに笑いました。
「あーあ、なんでそんなことまでわかっちゃうのかなぁ...本田くんエスパー?」
「えぇ!?じゃあ本当に!?」
「ミサキちゃんの前でこんな話するなんて意地悪だなぁ本田くんは。でも私もずるいか。正直に白状しちゃうとね。私、まこっちのことが好きなの。中学の頃からね、ずっと夢だった。まこっちの書いたお話のヒロインを私が演じるの。真実と虚構の間で、ずっと一緒にいれたらってそう思ってた。でもあいつは私の気持ちなんてこれっぽっちも気づいてないし、そのうえ夢を諦めるとか言い出すし。ちょっと思い知らせたかったの。自分がどれだけ幸せ者か、私の事がどれだけ大切か。」
「ルカさん…」
「でも嘘は良くないよね。私たぶん、ばちが当たったんだなって初めてミサキちゃんを見たときに思ったよ。私は自分の醜い願いのためにずるをしたんだ。そしたら彼の隣には別の女の子がいたんだもん。」
櫻井さんは目に涙を蓄えながら話し続けます。
「そんな!ルカさん!私…」
ミサキは動揺しおどおどと取り乱してしまいましたが櫻井さんは続けます。
「私サイテーだね。こんな話したらミサキちゃんが困っちゃうよね。」
無理に微笑んだ彼女の目から涙が一粒、頬をつたってこぼれました。
「全然そんなことない!ルカさんの気持ち、全然醜くなんてない!!すごく素敵です!!」
「ミサキちゃん?」
「真さんが鈍いのが悪いんですよ!!私そんな事全然知らなくて。ごめんなさい!でも私、真さんとはなんにも無いですから!!真さん私なんかのことなんとも思ってないです!!ほんとに!!あの日だって私、呼び止めてくれた真さんにひどいことを…あ」
「……うん、それで?」
私は静かにミサキに聞きました。
「何があったの?」
「えっと、あの、一緒にうそぶに入ってほしいって言われて…その。」
「断った?それだけ?」
「うう、あの、真さんと目があって…その、目を閉じてくれたんですけど…私逃げちゃったんです。」
なるほど、そういうことですか。
「だから、私なんか真さんに嫌われてるに決まってます!ルカさんが心配するような事…ってあれ?…なんか…え?」
さっきまで涙を流していた櫻井さんがけろっとコーラを飲み、方杖をついている私と一緒にミサキの話を聞いているので、彼女も違和感を覚え始めたようです。かわいそうなので流石のぼくもここらで種明かしをします。
「ミサキごめん。実はいままでの全部嘘なんだ。」
「え?ええ??」
「あはは〜ごめんねミサキちゃん。」
「今までって!?全部って!?一体なにが!?」
「んー「全ての黒幕は君だよね」あたりから全部。」
「うそぉ!」
「いや、だから嘘なんだよ。ミサキがちゃんと真と何があったのか話さないからいけないんだろー?」
私は先ほど櫻井ルカに差し出した番号札をミサキにも見せました。番号札には私がメモ書きで書いた「ミサキがなにか隠してるから僕に話をあわせて!」というメッセージ。
「こうでもしないとミサキ話してくれなかったじゃないか」
「じゃ、じゃあ真さんのこと好きっていうのは…」
「あー、あはは嘘にきまってんじゃーん。だーれがあんなへたれ好きなもんですかー。ごめんねびっくりさせて。」
「そんなぁ…」
「まぁそれに関しては僕もびっくりしたよ。熱演だったね。さすが役者と言うべきかな。」
「あはは、久しぶりのエチュードでちょっと調子に乗ってしまったよ〜。本田君も何よ?フライングスパゲッティモンスターとかそれらしく聞こえるような話次から次へと出てきてびっくりしたんだからー。ほんとにうちのお店ちょっとヤバいんじゃないかと思ったじゃんか!てか、そもそも私うそぶの部員でもなんでもないしね〜。」
「もうやだ。お兄ちゃんもルカさんもひどい!やっぱ私、嘘なんて大っ嫌い!」
「悪かったって、お詫びに猫プリンおごるよ。」
「そんなのでつられませんから!」
「んー…でもさミサキちゃん。」
少しゆっくりと櫻井さんは飲み終えたコーラを置きながら話します。
「なんですか」
「もし、ほんとに私が真のこと好きって言ったら、あなたは譲ってくれるの?」
「え…?えっと」
「そのへんはちゃんと考えた方が良いかもよ?自分のためにもね。」
「そんな事言ってまた嘘なんですよね。」
「私の気持ちが嘘か本当かで、あなたの答えが変わるのはおかしいでしょって意味よ。」
「それは…」
「さ、それじゃあおなかもいっぱいになった事だしそろそろ行こうか」
と私は頃合いを見て彼女たちの話を遮り立ち上がります。
「あ、待って、大学行くんでしょ?私もバイトいま終わったから一緒に行く!」
と櫻井さんも乗ってきました。まったく本当に適当なバイトです。
それにしても、私も言えた口ではないですが、櫻井ルカもとんだ嘘つきですね。このときの話は、今この文章を読んでいる皆様と私たちだけの胸にしまってどうぞ真のやつには秘密にしておいてやって下さい。
あ、そういえば真といえば、大事な事を忘れていましたね。
「まってください。大事な事を忘れてませんか?」
ミサキが席を立とうとする私たち二人を呼び止めます。
そうです。私たちにはまだ解決していない謎が…
「猫プリン!!おごってもらいますから!!」
「あ、そうだ私もおごってもらおう猫プリン!!」
あ、そっちですか。
まったく真も不憫ですね。
それでは、佐藤真がいなくなったという、彼女たちにとっては猫プリンよりどうでもいい事件の真相については、次回本人に語って頂く事にしましょう。さて、余興まででしたが私、本田スイリによるもうひとつの⚠FICUMENTはこれにて一度幕を閉じさせていただきます。そして、次回より本作のサブセクションを1つ繰り上げ、私たちうそぶの日々の活動を我らが色男、佐藤真からお届けしようと思います。
あ、そうそう。最後になりましたが、
みなさんよくよく気をつけてくださいね。我々「うそぶ」は嘘をつきます。そしてあなたは嘘を嘘として楽しむ権利を持っている。
それでは、お待たせいたしました。⚠FICUMENT2.0「シュレーディンガーの小説」お楽しみ下さい。