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すくいたいきもち
両手で作った不格好な器が
水を零しつつ掬うのを見た
ああ この水は
手の甲を伝う水は
これからどんな旅をするのか
蒸発して雲になるのだろうか
土に浸みて草の根に飲まれるか
小さな虫の飲み水になるのか
僕には見えないミクロの世界がそこにある
五感で作った不格好な器で
君の心を掬いたいと思った
ああ この脳は
自動補正ばかりの脳は
君からどれだけ受け取れるのか
全ての言葉が本心だろうか
仮面に包まれた表情はないか
計算された仕草か否か
僕には見えないマクロの世界がここにある
想像することしかできないのが
こんなに怖いことだなんて
推測することしかできないのが
こんなにもどかしいなんて
君の心が零す涙を
残らず掬える器になりたい
できないかもしれないから動けないんだ




