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グレープフルーツ
舌の両側に酸味が広がっていく
どこからともなく湧き出るのは唾液
転がして喉にしまいこむ
懲りずにもう一つ口に含む
初めに広がるのは甘み
酸味の粒を覆い隠そうと
表面にまぶされた砂糖
とろけて安心してきた瞬間
弾ける酸味が喉を焼いて
鼻腔を駆け上り
涙腺を震わせ
頭蓋骨をノックする
懲りずにまた一つ口に含む
甘みに浸りながら待つのは
舌の先と両サイドを襲う酸味
虜になっていく
甘いのが好きだけど
今だけは
もう少し
焼けつくような酸味をちょうだい
優しいだけじゃなくていい




