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グロス・アンサー
グレーのロングコートに
雨の粒が滲む
夜景を前に蘇るのは
ネオンを反射するピアス
君のリップグロスが
メークに紛れたガードのようで
「光らせなくていい」と
強引に拭った
その瞬間がたまらなく好きだった
グロスがはがれると知ってて唇を重ね
「塗り直せばいいだろ」と
君を困らせた
俺がいけなかったんだ
困らせてたんじゃなく
苛立ちを与え続けてたんだ
新しい唇を知ったというのに
この腕の中
まだクロエの残り香が消えない
新しい香りを上書きしようとするほど
あの日の香りが懐かしい
「大好きよ」と真っ赤な唇に求められるたび
躊躇いながら啄むことしかできない
失った痛みが大きすぎる




