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名残り月
涼やかな風が口元を掠める
たった今
日本酒で熱を帯びた唇にキス
あの日の貴方に重ねて
ただ一人
センチメンタルにもう一口
触れるだけの
優しくて素っ気ないキス
二度と吹くことのない夜風
月明かりだけが残る
もうここに
貴方のぬくもりなどない
変わらぬ虫の声でも
多分もう
代替わりをしているのね
抱きしめるだけの
温かくて冷たい身体
二度と見えることのない薄雲
潤む瞳に映るのは
変わらない名残り月
いつも同じ顔を見せる
この夜はもうないのに
そよ風
虫の声
光の粒
あの熱も
鎮められてかえらない
秋だから切なさ増し