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episode0魔界のヨゾラ

 菖蒲色の空に、閃々(せんせん)と輝く星々。

 何年も見上げて来た空はもう見慣れているのに、まるで名も知らぬ場所へ来た時のような緊張感と、未知なる胸の高鳴りを感じるのはどうしてなのだろう。

 これから行く世界なんて自分じゃ想像できないし、ずっと不安で胸が押し潰されそうだった筈なのに…そんな事も忘れてしまったくらい、今夜の()()の空は美しかった。


「“彼”の存在は吉なのか、それとも…」


 その先の言葉は、ひゅるりと身体をすり抜けていった風に攫われてしまったけれど。

 今は…それでも良かった。

 大好きなこの世界をこの目で、身体で、感じていたかったから。


「……いってきます」


 誰に呟くわけでもない少女の言葉は真暗闇に溶けて、消えていった。

 その姿と共に、ひっそりと――

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