友達と親友。
翌日。翠はいつものように仕事に向かう。
よし、今日も1日頑張るか!ー
いってらっしゃい。ー
蒼が優しく見送る。
おう!ー
あっ!今日は私の日だからね?
昨日みたいに遅くに
帰ってくるのはやめてね。ー
わかったわかった。ー
今日は週に1度の
蒼に身体を預ける日らしい。
夕方。
仕事が終わり、家に帰る翠。
お風呂に入り、蒼と入れ替わる。
ちゃんと12時までには帰るんだぞ?ー
わかってるって。ー
蒼は着替えを済ませ、
藍梨にメールを送る。
今日は何処で待ち合わせにする?ー
ピピッ
すぐに藍梨から返事が届く。
えー?今日、蒼の日なの?
ごめんね、今は茜と
茜の彼とその友達といるんだ。ー
そうなんだ。
じゃあまた連絡するね。ー
蒼は少しガッカリした。
でも折角の入れ替わりの日だし
このまま家に居るのもな…。ー
そう思っていると、
また藍梨から返事が届く。
蒼、なんかね。
茜の彼とその友達が蒼に会いたいんだってさ。
どうする?他の人が居るから
来づらいと思うけど…。ー
私、場違いじゃないかな?
いいのなら、私も一緒に遊びたい。ー
いいよ。おいで。ー
蒼はすぐに藍梨の居る
ファミレスへ向かった。
やっほー、蒼ちゃん。
久しぶりやな、元気してたん?ー
茜は蒼に気付くなり、走って抱きついた。
蒼はニコッと笑い。抱きつき返した。
もう茜ったら。いつもこうなのよね。ー
藍梨は呆れたように言った。
へぇー、君が蒼ちゃんか。可愛いね。ー
あんたね。
蒼に何かしたらタダじゃおかないからね。
茜の彼の友達が蒼の前に立ち、自己紹介をする。
俺の名前は緑藤 大正。よろしくな。ー
え?大正さん?ー
蒼は驚いた。そして丁重にこう紙に書いた。
はじめまして。私は斉藤 蒼です。
いつも兄がお世話になってます。
蒼はニコッと笑う。
えぇー!?
も、もしかして…翠の妹?ー
蒼は頷く。
はぁー。
俺にも彼女ができると思ったのに…。ー
落ち込む大正。
ちょっとあんた!翠と知り合いなの?ー
翠とは仕事場の同僚。
て事は何、藍梨ちゃんも紺の事知ってる訳?ー
え?あんた紺とも知り合いな訳?ー
紺とは学生時代の同級生、ちなみにこいつも。ー
そう言って茜の彼を指差した。
蒼は彼を見て驚いた。
何とそこには、金髪で瞳の青い。
外国人が居た。
彼は驚いた蒼に気付き、話しかけた。
驚いた?でも心配しないで、
俺は日本生まれの日本育ち、
完璧なジャパニーズだからね。
おっと。自己紹介が遅れたね。
俺の名前は高橋 ブラウン 永久恋愛。
父が日本人で母がアメリカ人なんだ。
まぁ永久恋愛って名前は、
呼びにくくて、誰も呼ばないから
ミドルネームのブラウンって呼んでくれ。ー
蒼は紙に文字を書いた。
よろしくお願いします。ブラウンさん。ー
紙に文字を書く蒼を見ていた大正は
蒼から紙とペンを取り上げた。
ちょっとあんたね!ー
藍梨が大正から紙を取り返す。
別に話せばいいじゃん。
紙に書くの面倒だろ?
俺は低い声とか気にしないから。ー
え?ー
蒼、藍梨、茜は驚いた。
なぁブラウン。
蒼ちゃんはな、喉の病気で
声が低くなっちゃったんだよ。
それを気にしていつも紙で会話してるんだ。ー
そうなんだ、俺はてっきり話せないのかと。
別に俺も気にしないから話しなよ、蒼ちゃん。ー
大正はブラウンに嘘を教えたが
蒼、藍梨、茜はそれに合わせた。
大正さん、どうして…知っているの?ー
紺ね!きっとあいつよ!ー
蒼の問いかけに、藍梨が割り込む。
違う違う。紺はペラペラ話す奴じゃないさ。
翠だよ。翠から聞いたんだ。
過去の事、蒼ちゃんの事も。
だから気を遣わなくていいよ。
何かあったらいつでも相談しておいで。ー
蒼、私もそうだよ。ー
ウチも、ウチも。ー
俺も茜を通してくれれば、
相談くらい乗ってやるよ。ー
蒼は自分の秘密を共有してくれる。
友達、親友がこんなにいると涙した。
涙が溢れて止まらなかった。
それにつられて藍梨、茜ももらい泣きした。
蒼はしばらく泣き続け、みんなに抱きついた。
一通り会話が弾んだ頃、
大正が立ち上がり叫んだ。
よっしゃ。今日は俺とブラウンの奢りだ。
好きなものを頼んでいいぞ。ー
え?本当に?ー
ホンマにゆーてる?ー
藍梨と茜はそう言うとファミレスを出て
5人で寿司屋さんに向かった。
寿司屋に入り、カウンターに座る5人。
おい、大正。
お前、金持ってきてるのか?ー
ブラウンが小声で大正に問う。ー
少し多めに持ってきてはいるが、
回らない寿司屋は予想外だ。ー
大正は顔を引き攣りながら小声で答えた。
結局2人は何も言い出せぬまま、
食事を始めた。
寿司屋の中でも話は盛り上がり、
次はいつ会うか、どこに行くか。
次は紺も誘おうなどと話は続いた。
蒼は楽しかった。
人目を気にせず、喋り。笑い。語る。事を
今日は蒼の今までで一番楽しい日となった。
楽しい食事は終わり、お会計。
超老舗有名店だったらしく。
金額も驚くほど高かった。
ブラウン、ホンマにええの?
お金?ウチも出そうか?ー
茜はブラウンの懐を心配する。
大丈夫だよ。茜。
心配するなよ。ー
そう言うとブラウンは財布から
札束を出し、サラリと全額支払った。
…!ー
大正は驚いて、
すかさず財布ごとレジに出す。
最後には大正とブラウンで
半分づつ出すことになった。
ごちそうさま。ー
蒼、藍梨、茜は2人にお礼を言い。
5人は店を出た。
そして蒼は大正に
タクシーで家まで送ってもらった。
今日はありがとうございました。
ご飯までご馳走になっちゃって。ー
いいよいいよ、気を遣うなって。
翠によろしく言っといてくれ。じゃあな。ー
大正が蒼の家の戸を閉める。
バッ。
蒼が背後から大正に抱きつく。
あ…蒼ちゃん、まずいよ。
翠とは親友なんだ、親友の妹とそんな…。ー
バーカ。
何、人の妹に手を出してんだよ。ー
み、翠!お前、冗談キツイぜ。ー
抱きついたのは身体を入れ替わった翠だった。
今日はありがとな。
蒼から全部聞いたよ。
人生で一番楽しい日だったってさ。ー
俺も楽しかったよ。そう蒼ちゃんに伝えてて。ー
そう言うと大正は帰って行った。
翠、遅くまでごめんね。ー
いいよ、楽しめてよかったじゃん。ー
うん。
親友や友達っていいね…。
一緒に居るだけで、
辛い事、嫌な事を忘れられる。
楽しい事、嬉しい事が倍になる。
困っていたらがあったら助けてくれる。
辛い事があったら一緒に泣いてくれる。
楽しい事があったら一緒に笑ってくれる。
そんな友達や親友が私にもできたよ。ー
蒼は翠の心の中で笑顔のまま眠りに着いた。