真実と困惑。
藍梨と別れ、
藍梨の話を思い出し、考えながら歩く紺。
蒼ちゃんの秘密ってあの話の事なのかな…。
蒼ちゃんの、ってより翠の過去って感じなのにな。ー
ピピッ
紺の携帯が鳴る。
今、急いで向かっているけど
間に合いそうにないから、先に店に入っててくれ。ー
翠か。ん?もうそんな時間か?ー
紺は携帯の時計を見る。
時刻は午後4時45分だった。
やばっ、俺も遅刻しそうだ。ー
紺は、
わかった。と翠にメールを送り、
急いで待ち合わせの店へ向かった。
待ち合わせ場所の喫茶店。
紺は時間丁度に着き、翠の到着を待った。
10分後に遅れて、翠が店にやってくる。
悪りぃな。色々と用意しててな。ー
いいよ、気にするな。
とりあえず座れよ。ー
翠は紺の前の席に着く。
…。ー
数分間無言が続いた。
この間、初対面だったが
酒の力で盛り上がりすぎた2人は、
いざ素面で会うと、
何を話していいのか、
どんな風に接しればいいのかわからなかった。
…。何か話せよ。ー
あまりの緊張に紺が翠に問いかけた。
俺が?
話がしたいって言ったのは紺さんだろ?ー
翠も言ってただろ?ー
ふぅー、まぁいいわ。
単刀直入に言うぞ、
蒼は…蒼はもう紺さんの前に現れる事はない。
翠は急に真剣な表情を見せ、紺に言った。
どうしてだ?蒼ちゃんがお前の妹だからか?
蒼ちゃんが俺と会わないって言ったのか?
藍梨ちゃんから聞いたよ。全部。
お前の唯一の家族だからってな
もう蒼ちゃんを縛るなよ。
蒼ちゃんはお前の『モノ』じゃない!ー
紺は強い口調で翠に言い放った。
藍梨からはどこまで聞いた?ん?
紺さん、あんたは何も知らないんだ。
蒼は俺の『モノ』だ。
良いものを見せてやる。
ちょっと待ってろ。ー
そう言うと翠は席を立ちトイレへ入った。
10分ほど経ってトイレから人が出てきた。
えっ?ー
ガチャーン!
…どうして。ー
トイレから出てきた人影に紺は驚き、
椅子から転げ落ちた。
何とトイレから出てきたのは、
誰でもない、蒼だった。
ど、どういう事だ!?
何が何だかわからないよ。
蒼ちゃん…なのか?ー
紺は蒼?に近づく。
あぁ、蒼だ。
あんたが今か、今かと待ち望んでいた蒼だ。
姿形は蒼だが、声は翠の声だった。
紺は、頭がおかしくなりそうで
パニックだった。
あ、ダメだ。説明してくれ。
頭が爆発しそうだ。ー
蒼は俺と同一人物だ。
蒼が喋らないのは声が男だからだ。ー
じゃ、じゃあお前は!!
女のフリをして、騙せれている俺を!
男に惚れてるバカな俺を!
心の中で嘲笑っていたんだな!?
それは違う。
蒼は本当に紺さんの事を愛していた。ー
…。どう違う!
蒼ちゃんはお前なんだろ!?
お前は俺を騙してたんだろ!?
ふざけやがって!俺はな!
お前の事を口の悪い弟みたい思ってたんだぞ!ー
俺はあんたの弟じゃない!
妹が蒼に似てるって?
だからって蒼もあんたの妹じゃない!
紺さん、あんたの蒼への『愛』は、
1人の女性への『愛』じゃない。
亡き妹への『愛情』だ!
これが真実だ。もう蒼の事は忘れてくれ。ー
…なんだよそれ。ー
紺は疲れ果てたかの様に椅子に座りこんだ。
俺はこの数ヶ月、
無駄な時間を過ごしたって事か…。ー
紺はテーブルに置いてある、水を一口飲み。
気を落ち着かせ、無言になった。
紺さん、
あんたに話したかった話はこれで以上だ。
もう会う事はないと思うから。
これだけは言っておく。
普通に友達や先輩として出逢いたかったよ。
そしたらもっと仲良くなれてた気がする。ー
そう言って店を出ようとする翠。
いらっしゃいませ。2名様ですか?ー
2人の女性が店に入ってきた。
あ、蒼!ー
…藍梨ちゃん。ー
店に入ってきたのは藍梨だった。
ちょっとあんた!
蒼の事は忘れてって言ったよね!?
それに蒼!翠との約束を忘れたの?
あんた達が会うと、私が翠に怒られるんだから!ー
藍梨は2人に怒鳴りつける。
藍梨。俺だ。ー
翠は藍梨の方を向く。
え?み、翠?
紺にあの話をしたの?ー
ああー!全部、翠から聞いたよ!
藍梨ちゃん、君もグルだったんだな。
君も男に惚れてる俺をバカにしてたんだろ。ー
紺は藍梨を睨みつける。
話は以上だ、またな。ー
ちょ、ちょっと翠!ー
翠は藍梨を無視して、1人先に店を出る。
ねぇあんたどういう事?ー
藍梨が紺に詰め寄る。
俺が聞きたいよ。
どうして俺を騙したんだ?ー
あんたバカ?
翠から聞いたんでしょ?
まぁ翠も話を大まかにしかしてないでしょうけど、
いいわ。私が話してあげる。
あの2人の真実を。
藍梨は紺の前の椅子に座り、話し始めた。