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東宮さん宅の日々  作者: もらし たみお
桜の花よおいでませ、いってらっしゃい鴉君編
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聖奈の日常~2~

5月11日

工事第二段終了しました。

夕焼けが沈み辺りが外灯だけの暗さになりました。星や月が暗く照らしていますけれども人口の明かりにはかないません。


スタスタと手を繋がれやや早歩きで歩いているのは気のせいではないのでしょう。後ろからカツン、カツンと足音が聞こえてきます。常時なら家の方向とは違っていることに疑問に思いますが、今回のこれは何かが違います。聖奈さんや狼亜さんとの修練とも違い何かが背筋を這いずり回ってくるかのような嫌な感覚だけがあります。


そう、どれだけ人間のように見えても私は聖奈さんとは違う人間ではない化け物そう呼ばれる物の一つで。そう考えると少し足が重くなり速度が落ちました。不審に思ったのか空牙さんが


「姉様疲れましたか。」


と心配そうにこちらに視線を向けるも大丈夫と曖昧に笑って濁しました。後ろを確認した空牙さんの引っ張る手が少し強くなり好奇心に駆られた私が振り向こうとすると


「駄目ですよ姉様、振り向かないで。」


と言われ手を軽く引っ張られます。


「もう少しだけ待っててください姉様。少し前に馬鹿先輩に連絡を取りましたすぐに駆けつけて下さるそうですよ。」


こちらを見て軽く笑うと後ろを睨み付ける。


「これだから屑は嫌いなんだ。僕だけでなく姉様の手まで煩わせるとかマジで死ね、つか消えろよ。」


空牙さんが私に聞こえないようにぼそっと呟くとおもむろに手を振りかざしました。


「“我が願うは万物に司りし風の力、我が言葉を聞き我に従え”っと姉様すみませんが僕の後ろへ来て下さい。“風よ、汝が主空牙が命じる。全てを切り裂く刃となりて我が前にいる者を切り刻め。風切娘(かざきりむすめ)”」


そう言うと無理やり自分の後ろに私を回らせると同時に風の刃『カマイタチ』が発動し黒い影のようなものを切り裂きましてけれども、真っ二つに切り裂かれたくせにグイィンと水のように引っ付きました。


空牙さんがこちらにちらりとアイコンタクトをするので、コクリと首を縦に振る。逃げるんですよね。


「姉様、高度の術式使用許可を下さい。これは僕が足止めをいたしますので姉様は先にお帰り下さい、ついでに馬鹿先輩にあったら現在地を教えておいて下さると助かります。」


そこまで言うとジッと見つめられます。


高度の術式は普段は使用したら大変なことになる為、使用する際には私の血と言葉による解除の2つが必要で、ってこんなことを考えている間にも黒いのは迫って来ていて到着するまでの時間が無ありません。私は分かった返事を返し、ポケットからいつも常備している銀製のナイフを取り出すと手首に傷をつけようとしたところで聞きなれた声が頭上から聞こえてきました。


「聖奈、空牙またせた、大丈夫か?っとやばいなこいつ。聖奈、術式使用許可よこせ、浄化する。」


ダンッと音を立ててアスファルトに上空から着地すると悪いとあやまるが、時間が無いことを見て取れたのか急かすように許可を寄越せとせっついて来られます。


「遅いこの屑、もっと早く来いよボケナスが。」


「はいはい、来てくれたのにそんな事言わないの空ちゃん。うぃ流兄いっくよ~“汝が主聖奈が命じる、今一度汝の戒めを解き放ち束縛からの開放を許可する”」


それと同時に手首を切り裂くとピリッとした痛みが体に走りますが、それを無視して手首を流輝に近づけると口を近づけられてコクリッと血を飲まれます。続けて空牙さんも血を飲むと御二人は先ほどとは溢れる力が強くなっていました。


「空牙1分位時間を稼げ“燃え盛る紅蓮の焔、全てを焼き尽くす者よ。我が赤を喰らいて熾きよ『××××』”」


相変わらず召喚物の名前が聞き取れません。空牙さんはそこそこはっきり大きめに喋るから聞き取れるようになりましたが、流輝さんはボソボソとして口元を隠すように喋るし普段と違い声も小さいから聞こえないです。聞こえないことには何を召喚したのか分からず、真似が出来ません。聖奈さんからの宿題で術式の観察も入っているのに。どうしましょうか。


あっ、黒いの燃えて。うわぁー、空牙さんの風で炎をさらに焚きつけて青い火柱が上がってます…見た目的にはナメクジかなんかを火に放りこんだかのようにグチャッとしていて、この間聖奈さんに強制的に見せられたホラーゲームよりもグロテスクです。画面越しでは無い分かなり破壊力が強くて、うぅ、気分が悪くなってきました。


焼き跡を残さないように焼いたのかアスファルトで舗装された地面は焦げ跡ひとつ残っていませんでした。


「さっすが、流兄と空ちゃんのコンボだね最強だね。」


終わったのか辺りを軽く警戒している2人に気分の不調を気づかれないように声を掛けると


「たっくよ、ここの所自縛霊、しかもタチが悪いほう出現率高いよな。聖奈お前俺らに隠れて術使ってないだろうな。」


と、私になぜか飛び火が。私を何だと思っているんでしょうか今度じっくりと問い質したいです。聖奈さんからも変なことはするなとお咎めを喰らっていますのにする訳無いじゃないですか。酷いですよ。


「それはないよ、そこそこ前に姉様にお守りだって渡した奴に姉様が術を使ったらすぐに知らせるように術式仕組んだけど反応無かったから多分ない。まぁ、あのお守りを肌身離さずでは無いけど半径2m位近くにいたら反応するし今も持ってるよ、ほらこの鞄についてる青いクマのぬいぐるみ。」


言われてみれば数ヶ月前に見よう見真似でこっそりと術式を使用してミスって大事故を起こした時、流輝さん達に思いっきり叱られた後、空牙さんが術が暴発してもある程度は守れるお守りだって言ってこのヌイグルミくれましたね。そうですか、そんな仕掛けがあったとは、聖奈さんからも肌身離すなって言われていた結果が誰からも信用されてないですか。


「お前、よく聖奈にバレなかったな。」


「姉様の好きなものをデザインして特注で作ったからね、これ以上被害出すとガチでまた何とか結社だの何とか研究所だのに居所を知られるからね。」


ジロリと2人してこちらを見て来る。うぅ視線が痛い。はい、前科持ちですからね分かってますよ、でもあれは私だけではなく宿題を出した聖奈さんがと考えていると流輝さんにグシャグシャと頭を撫でられます。髪がいつもクシャクシャだけど気にしているのに、でも自分より大きい手で撫でられるのは気持ちがいいし安心します。それに自然と笑みがこぼれた。


「とっとにかく、二人とも無事でよかったな。じゃあ、家に帰るとするか今日の夕飯はコロッケだぞ。」


「うわぁ~い。流兄のコロッケ大好き。」


少しあせったような声は聞かなかったことにして流輝さんのコロッケですかぁ、外はサックサク中はしっとり、じゃがいもと玉ねぎ、ひき肉に塩コショウのみで味付けされたごくごくシンプルなコロッケは冷めても美味しかったですし。コロッケだと聞いた空牙さんは


「沢庵と冷えたご飯を所望する。」


と言った。冷えたご飯の上にコロッケそして好きなソースとトロリとかける、沢庵を2切れくらい乗せれば完成。といった簡単な作りでありながら魅了される食べ方で、私もその食べ方は好きになってしまいました。初めて食べているのを見たときは半信半疑だったですけども聖奈さんや狼亜さんに進められて口にするとはまってしまったジャンクな食べ方。外では決して出来ないです。


「あぁ、冷えたご飯と冷えたコロッケとソースにたまに沢庵のしょっぱさが美味しいです。」


「あるから、冷や飯。沢庵も切ってあるし。わざわざ冷や飯用に少し柔らかくした米用意してるからなっ、飯ももう冷えてる頃だろ。温かい飯もあるんだがな。」


だからさっさと帰るぞと言って先に歩いてしまった流輝さんをを二人して駆け足で追いました。




そんなこんなで夕飯のコロッケ飯を食べ終えて、お風呂にも入って化粧水もつけて後は寝るだけといったところで今日も思います、普通の生活ってなんだろうなと。


働きもせず家事もせず毎日毎日、結界の張り方と霊力の制御というか聖奈さんのお話を聞いたり遊ばれてたりの繰り返しの生活。


ポフリッとベットに寝転がり聖奈さんに渡された聖奈さんのケータイを弄くる。このケータイの所有者は聖奈さんで服だって本だってゲームだって家具だってなんでも聖奈さんの物。………私が聖奈さんの格好をしていてだからでも好いてくれているからでもなくただ、いつか私という存在が無くなってしまいそうになるのが怖いです。私は聖奈さんではなく冬桜なのに…。


そんな虚しい思いだけが私の頭の中をぐるぐると回って行きました。













さぁ明日も私を演じきりましょう“東宮聖奈”という哀れで孤独な化け物を…。

これで、聖奈編終わりました。次回は流輝、零夢、空牙、狼亜と続けていけたらいいです。

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