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東宮さん宅の日々  作者: もらし たみお
桜の花よおいでませ、いってらっしゃい鴉君編
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泡沫の夢の中で

夢は夢、されどもそこでの経験はきちんと生きるよ。覚えていなくてもね。

はい、えっと。あの後、急に現れた黒い穴に三人で吸い込まれてしまい。聖奈さんと狼亜さんに教えて頂き、聖奈さんになるように努力しています。


いまは5日目らしいです。ここは、精神世界という所らしいです。ここで、時折休憩を挟みながら聖奈さんと狼亜さんに術式を教えて貰っています。術式の言い方も聖奈さんらしくなるようにしています。今は、とりあえず防御の術式だけを詰め込みで覚えています。2つなら諳んじられるようになりました。硬さはまだまだですけど、この調子で頑張っていきます。



「はいはい、よそ見しない“聖奈ちゃん”。“其が弾くは万物の剣、わが身を守りし悠久の盾【白磁の城】”はい、詠唱再開して。」


怒られてしまいました。けれども、聖奈さんから発せられた言ノ葉と共に出現した薄い透明な球体方の結界が張られているのを見て見惚れてしまいます。私もいつかあんな結界を張ってみたいです。


「はっはい。えっと“そっ其が弾くは…”なんでしたっけ?」


うぅ、また忘れてしまいました。


「万物の剣だよ。みぃ、これでも詠唱短い奴を厳選しているんよ。せめて防御5つと攻撃2つと解放の呪位は覚えて貰わんと、軽く困るのは君だぁよ。あのお馬鹿は感だけは鋭いから。」


「御主人、そろそろ休憩の時間に致しましょう。さすがに外が気になって参りましたし、面倒な気配がしているんですよね。」


休憩と聞いて聖奈さんの体がピコンと揺れましたが、それを表情にはおくびにも出さずに後ろにいる狼亜さんに手を振られてます。


「承知いてら〜。」


「頑張って下さい。」


狼亜さんを二人で見送りました。フッと狼亜さんが消えた事を確認すると聖奈さんはダラケモードに入ります。厳密に書くとするなれば、「ふぅ、行った行った〜。」といない事を確認すると、中央に大きめのマットと枕と本の山を取り出して寝転がり読み始めます。本の題名は『不思議の国のアリス』だそうです。これは初日にも聖奈さんから大プッシュされた本で、私も読んでみたのですが内容がよくわかりませんでした。


女の子が夢の中で過ごした世界をお話にするなんて、この作者さんも変わったお方です。本当に人間の方は何を考えているのか良く分かりません。聖奈さんにこの本の感想を聞いたら「ラブレターって説もあるし、うち的には置き去りにされた心残りって感じもする。一冊の本、一筋の言ノ葉でも人によって様々な感じ方があるんだ。これだから本は何代経ってもやめられない。」と狼亜さん曰くキショイ笑顔という顔で言っていました。良くそんなに何回も読んで飽きないものだと感心します。


「聖奈さん。私の特訓見てて下さい。」


「ん~、見てるよぉ。つかうちが“冬桜で”君が“聖奈”気をつけないと、またろあちゃんに二人して膝詰め折檻喰らうよ~、喋り方も気をつける。あぁ~ハンプティのおっさん好きだなぁ。かわいい、リアじゃこんなのお目にかかれないけど。」


ひらひらと私に手を振って、本の世界に没頭する姿にももう慣れてきました。このままではいけないと頭を振って、狼亜さんには内緒の術式を使用します。


「顕現せよ“桜ノ花ヨ舞踊レ”」


そう言うと、聖奈さんから貰った薄いピンクと濃いピンクの2色の混ざった腕輪が光り、私の周りに淡い桜色の光が散り丸い円に桜の花を模った模様が地面へと広がり、畳み3畳分の大きさになったところでドーム状に結界が展開しました。発動までにワードを言って10秒といった所でしょうか、張り終わると


「発動遅い。もちっと霊力練って、想像、イメージしっかり。」


「はっはいっ。」


横目でちらと見て指摘を受けました。初めて聖奈さんにこれを見せて頂いた時は、ワードを言い切る前に発動されていて色も形も強度も私が出したものとは比べ物にならないくらいでした。


聖奈さんのような喋り方をするのは私の中でかなり抵抗があります。それに、どうも一人称というものをうちに変えるのが嫌なんです。でもいくら訴えても「そっかぁ、なら私でもいいよ。ただし喋り方はうちっぽくね。」と言われてます。とりあえず目下努力中です。


「あっ、そういえば言い忘れてたけど。」


ペラリと本のページを捲った所で、私を見て聖奈さんが何かを言おうとしていて、私にはそれが何かとても嫌な予感が漂うものでした。


「明後日から繋げるから。だから明日までに喋り方だけはなんとかして。術は使えない設定にするから使えなくても大事。」


聞きたくないと思っていても聞いてしまったその発言は、私の動きを凍らせるのには十分すぎる一言で精神が乱れた事によりせっかく張った結界も消えてしまいました。


「…今なんて言いました。」


「動揺しとる動揺しとる。明後日に皆の夢と繋げる。期限はとくには設けないけど、あの子達には決して気取られない事。そっちに狼亜はサポート役として置いとくし、何かあったらうちも介入する予定だから。」


だから絶対にうちら二人以外に君がうちではないと気づかれないでね。そう笑顔で凄まれた時には反論はおろか、首を縦に振る事しかできませんでした。




~冬桜視点~


さて、預かり物ちゃん今はうちの名前を騙らせてはいるけれども気づかれるの確実。気づかれないように、記憶の改竄や多少黒い事に手を染めても大丈夫。どうせ後でネタバラシする予定だし、空ちゃんと流兄に怒られるのは仕方が無いことだとしておこう。


時間が無い、今までよりも圧倒的に時間が無い。今代は特にそう思った。長い時の記憶を持った弊害ではないことを祈るけれども、今代で全てを終わらせたいのに、そう言い続けてもう何代過ぎ去ったか。次代こそは終止符を打ちたいのに楔すら打てなかった。長かったけれども、今代で終わらせる。今度こそ確実に、終わらせてやる。


その前に、アレの息の根だけは止めたいなぁ。まぁ止めても代替わりされればあかんけど、それにやっぱり生かしておかないと流兄が苦しむ羽目になるのは目に見えて分かっている。だから頼りたくない奴にコンタクトを取って頼らなければいけないことが歯痒い、というかあいつも敵の一端だしなぁ。手の平で踊らされている感がパナイから頼りたくないけれども頼らなくてはいけないっていうのが人間の辛いとこだお。つか、人間つってももはや人間ではなく異端児、バケモノの領域にとっくの昔に両足突っ込んでんだけどねあっははははっははは。…虚しいお。


明日の特訓は喋り方のみにして、完璧に仕上げよう。最悪、うちが憑くってのもありだし。

誤字脱字などございましたら報告をお願い致します。

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