あとがき
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
この本では「自分に甘く、多人にもっと甘く」という言葉を何度も繰り返してきましたが、最後に一つだけ、強調しておきたいことがあります。
「甘さ」と「妥協」は、まったく別のものです。
やりたくないことを無理して引き受けてしまうのは、甘さではありません。
ただ逃げるために自分を甘やかすことも、甘さではありません。
ときには、自分を厳しく律することすら、未来の自分を守るための“甘さ”になり得ます。
ここで私が言う「甘さ」とは、
心と関係にとって“栄養になるもの”のことです。
笑って力が抜けること。次の一歩を踏み出す勇気がわくこと。
人との距離が少し近くなって、関係がやわらかくなること。
そういう作用をもたらすものを、私は「甘さ」と呼んでいます。
そして「多人にもっと甘く」できる人は、
自分の心を自分で満たせる力を持っている人です。
心の食料自給率が高いから、他人に奪われることを恐れず、
むしろ「どうぞ」と分け与えられるのです。
この本で私が提案したのは、
厳しさをゼロにすることではなく、
厳しさと甘さのバランスを取り戻すことです。
現代社会は、少し厳しさ過多に傾いています。
だからこそ、意識的に甘さを足すことが必要です。
そうすることで、心がすり減らずに人と関わり続けられるようになる。
今日、誰かのミスを笑って許せたなら、それで十分。
明日、自分の失敗を「ネタがひとつ増えた」と笑えたなら、それで合格です。
あなたが自分に甘く、多人にもっと甘く生きることで、
世界はあなたのまわりから少しずつ柔らかくなっていきます。
私はそれを心から望んでいます。
人々の心の食料自給率が上がり、
奪い合いではなく、分け合いがあたりまえになる世界が広がることを願っています。
そして、この思いを土台にした新しい物語を連載として始めました。
ぜひ、そちらものぞいてみてください。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




