第五章 笑顔をふやす習慣
笑顔は偶然ではなく、仕込みでつくるもの
私は長いあいだ、「笑顔は自然に出るもの」と思っていた。
でも現実は違った。疲れているとき、イライラしているとき、自然に笑えと言われても無理だ。
そして、無理やり口角を上げても、写真の証明写真みたいな顔になるだけ。
あるとき気づいた。
笑顔は仕込みが必要だと。
日常のどこに笑える瞬間があるかを探し、拾い集めるだけで、表情はだんだん柔らかくなる。
「笑いメモ」をつけるだけで日常が変わる
私はスマホのメモ帳に「今日の笑い」というフォルダを作った。
・取引先の人が資料を共有しようとして、間違えてペットの写真を画面共有した
・スーパーで見つけた謎の貼り紙「本日限り、キャベツ多め」
・子どもが「パパ、今日“はんたいの言葉”習ったよ。“おやすみなさい”の反対は“おはようございません”!」と真顔で言った
こういうのを毎日一行ずつ書き留める。
たったこれだけで、「今日もおもしろいことあったな」と一日を終えられる。
そして、誰かと話すときに取り出せる“笑顔の種”になる。
先に笑う人が場を制する
人が集まる場では、最初に笑う人が空気を決める。
会議が重いとき、食卓が沈黙しているとき、
一人が笑うだけで全員が少し緩む。
私も意識して「場の最初の笑い」を取るようにしている。
オチはいらない。ちょっとした観察でいい。
「さっきエレベーターで知らない人に手を振られて、思わず振り返したら全然違う人だった」
こんな話だけでも場がほぐれる。
笑顔は、もっとも低コストでできる場の調整術だ。
笑えない日は「人の笑顔を借りる」
人間だから、どうしても笑えない日がある。
そんなときは、笑おうとしなくていい。
代わりに、人の笑顔を借りる。
動物動画を見る
お気に入りの芸人のネタを観る
友人との思い出写真をめくる
人の笑い声を聞くだけで、自分の口角がほんの少し上がる。
それで十分。笑顔は種火みたいなものだから、借りていい。
笑顔は「未来の自分のための貯金」
笑顔の数が増えると、思いがけないところで回収できる。
たとえば、先週コンビニで軽く挨拶した店員さんが、
次行ったときににっこりしてくれる。
職場で冗談を言った次の日、別の人が笑い話を持ってきてくれる。
笑顔は一方通行ではなく、タイムラグ付きで返ってくる投資だ。
だから、今日の笑顔は未来の自分を少し助けてくれる。
笑顔は選択であり、戦略
「今日は笑う日だ」と決めると、
意外と笑える瞬間が見つかる。
選択して笑う人は、場をやわらかくする人になる。
次の章では、甘くすると損するのでは?という不安に対して
優しくしても感謝されなかったり、逆に図々しいお願いが増えたり、いいことないんじゃないか。
そうならないためには。




