第一話『お忍びの精霊王女、城を抜ける』
お世話様です。
数ある作品の中、ご訪問頂きありがとうございます。
今回は、城を抜け出す描写となっています。
王女様なのに、ちょっとお転婆なミリィを感じて頂けたら嬉しいです。
どうぞ宜しくお願いします。
煌びやかな月が空に浮かぶ、精霊界の首都 《ルミナシア》。
その中心にそびえるのは、白銀に輝く 《精霊城エリュシオン》。
誰もが憧れるその城に住まうのが――
精霊界の第一王女、ミリシア・ハーヴァリィ・バレンタイン。
通称、ミリィ。
だが今宵、その王女は――
「よし、今だっ!」
真夜中の回廊を、スカートの裾を押さえながら走り抜けていた。
「護衛の精霊騎士ちゃんも、今夜はお茶会の見張りだし……うん、完璧っ!」
足音を忍ばせ、秘密の抜け道を滑り降りるように駆ける。
壁の裏、タペストリーの影に隠された小さな扉。
城の設計図を魔法で盗み見して発見した“裏口”は、今夜の冒険の始まりだった。
「ちょっとくらい……自由に遊んでも、バレないよね?」
いつもの王族用のロングドレスではなく、今日は少し控えめな貴族風のワンピース。
外ではメイド姿に変身するつもりだ。
彼女が目指すのは――人間界。
隣界にある春の祭りに、どうしても行ってみたかったのだ。
もちろん、王族が勝手に人間界へ行くなどご法度。
だが、そんなルールに縛られてばかりの毎日に、ミリィの好奇心はもう限界だった。
「精霊門まであと少し……でも、さすがに飛行魔法は使いすぎると魔素でバレちゃうだろうし……ここからは歩きかな!」
城から離れるにつれ、道はだんだんと森の中へ。
木々の間をすり抜ける月光に照らされながら、ミリィは軽やかに歩を進めた。
やがて見えてきたのは、七色に揺らめく光の柱――
「精霊門」――
精霊界と人間界を繋ぐ、古代の転移装置。
本来ならば、高位の精霊上位守護官の許可を得るか、精霊王家に伝わる《開門の詩》がなければ使えないが……ミリィには秘密の方法があった。
「この転移紋章に、王家の魔力をちょっと注げば……ふふん、王族特権ってやつだよね♪」
ぐっと指を伸ばし、光の柱へそっと触れる。
――キィィィン。
空気が震えるような音とともに、空間が波打ち、ミリィの身体はふわりと宙に浮いた。
「さあ、人間界のお祭り……待っててねっ!」
そして、ミリィは眩い光の中へと消えていった――
ここまで読んで下さり、心から感謝します。
作品作りのエネルギーは、やっぱり読者さんの声からもらっています。
ぜひ、評価やコメントなどで応援いただけると嬉しいです!
次の物語も、どうかお楽しみに!
ありがとうございました。