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ACT5

男達の話しを要約すれば、男達は今回の事件の被害者と顔見知りだったようである。



それも、一人目と二人目の被害者の両方とであった。調べられて、容疑者として疑われる事を恐れて、凛子の取材の邪魔をしようとしたらしい。



ただ、容疑者として疑われる事だけでなく、都合の悪い事が明るみになる事を恐れたようである。



「たちんぼ」というのが、数年前から一部で問題になっている。主に、新宿の大久保公園の周りで、一般の女性が売春行為を行う事である。風俗店などで働くのではなく、個人でお客をとって性行為をする。



金銭や行為の内容なども、個人間で交渉して決定する。風俗店などによって、ルールや女性を守るシステムがなく、個人でのやり取りであるがために、個人間の揉め事や犯罪に発展する事が多いという。



もちろん、最近では行政も動き出している。警察による摘発や巡回なども強化され、数は少しづつ減ってきているようである。しかし、警察の巡回を逃れた一部の女性達は、大久保公園の周りから場所を移し、この渋谷の一部の地域で売春行為を続けていた。



今回の事件の一人目と二人目の被害者は、この渋谷で売春行為をしていたのである。そして、この男達は、被害者の二人と関係を持っていた。男達にとって、一番知られたくなかった都合が悪い事とは、この事である。



容疑者として疑われる事も問題だか、このような女性達と関係を持った事が周りに知られれば、信用を失うからだろう。もし、仕事場に知られれば、クビになりかねない、とも男達は言っていた。



健吾は、男達の身分証などの写真をスマホで撮り、二度と凛子に近づかないように約束させた後、男達を解放した。



「佐伯さんが誘われたっていう、怪しいバイトってこの事だったのか」

男達がいなくなった後、健吾は呟いた。



「佐伯さん?」

凛子が尋ねる。健吾は、私を肩に乗せながら凛子の顔を覗き込んだ。あのド天然娘の事を話していいか考えているのだろう。



「二人目の被害者の関係者です」

健吾は思案した結果、凛子にそう話した。本人に迷惑はかけたくないという事も、同時に伝える。凛子なら配慮するだろう、という判断だろうが、ほぼ初対面の女をすぐに信じるところが、この男の甘いところだと思う。



まあ、結果的にこの判断は間違ってはいないのではあるが。

「それで、これからどうしますか?俺達は、さっきの男達が言っていたエリアに行ってみようと思いますが」



私達は、男達と争った場所から離れつつ、お互いの情報を簡単に交換した後、健吾は凛子に言った。



「私も一緒に行ってもいいですか?女性がいた方が、彼女達とも話しやすいかもしれませんし」



お互いの情報交換をしながら話した時間は、20分程度であった。その間には、世間話のような内容も含まれていた。このような会話をして、凛子は少なくとも私達を敵ではないと認識したのだろう。



あるいは、一人で行くよりも安全だという判断もあるのかもしれない。また、これには、健吾のゆるい雰囲気が一躍かっていると言える。あとは、私の猫パワーだろうか。人間は、猫を相手にすると警戒心が薄れるのかもしれない。



「わかりました。一緒にお願いします」

健吾は凛子に答えた。こうして私達は、男達が言っていたエリアに向かう事にした。ただ、現在は昼間である。夜になるのを待って、再度合流する事になった。




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