act10.物語り
ちょうちょや ちょうちょ
こちらに おいで
きれいな うたには うらがある
うまい うそには みつがある
ちょうちょや ちょうちょ
あちらへ こちらへ
どこへいこうか
どこまでも
ちょうちょや ちょうちょ
こちらに おいで
おまえは わたし
わたしは おまえ
ちょうちょや ちょうちょ
あちらへ こちらへ
どこへいこうが
わがもとへ
むかし、むかし、あるところに、魔法が使える妖精の王がいました。
妖精の王は、ひどく気まぐれで、飽き性で、退屈な時間が大嫌いでした。
ある時、臣下の一人が、妖精の国ではない国を覗ける水晶を手に入れて、妖精の王に捧げました。
妖精ではない生き物には、たくさんの種類と性格があり、男と女という性別があります。
妖精の王はとても興味がわいて、色とりどりの魔法の蝶を人間の国に放ち、その蝶を通じて、様々な場所の様々な生き物を観察しました。
中でも、人間という生き物がたいへん面白く、話してみたいと思いました。
手始めに、小さな男の子を連れてきました。
話してみると、なるほど面白く、臣下の提案で魔力を注いでみたら、半分人間、半分妖精のような生き物になり、自分のそばに置くことにしました。
ある妊婦の胎児に魔力を注いだら、爪が伸びすぎて
少し残念な結果になりました。
ある国に生まれてくる男は長髪になる、という魔法をかけると、それ自体が風習となりました。
竜も鳥も虫も、人間と交わると面白いことになりました。
以前、連れてきた男の子は、人間でも妖精でもない生き物になってしまったので、今度は、大人の男と女、一人ずつを連れてきました。
二人と一緒に、たくさん、たくさん、遊びました。
遊び飽きた後、男と女を人間の国に帰そうとしたら、帰りたくない、ここにいたい、と言われ、妖精の王は二人に住む場所を与えました。
すると、その二人は愛し合うようになり、子どもが四人も生まれました。
男と女が妖精の国に留まってしまったので、代わりに、生まれた子どものうち二人を、人間の国に送ることにしました。
一人は、男が持っていた鎖鎌と一緒に、もう一人は、女が持っていた貝殻の首飾りと一緒に。
妖精の国に残った二人の子ども達は、両親に愛情を注がれ、妖精達とも遊びながら、すくすくと育っていきました。
子ども達が大人になると、妖精の王は、妖精と結婚させました。
妖精の王は、たびたび人間を連れてくるので、妖精だけだった国に、人間達が生きていく、"理想郷"というコミュニティが出来ました。
そこは、人間も妖精もない、差別も偏見もない、まさに理想の集落でした。
結婚はいいことだと思った妖精の王は、お気に入りの妖精三人と結婚し、それぞれと子を成しました。
妖精ばかりが生まれることに飽きてしまった妖精の王は、人間との子を成すことにしました。
人間の国から女を一人連れてきて、第四の妻としましたが、子どもが産まれる前に、ふと、人間の妻に飽きてしまい、妖精の国の記憶を消して、妊婦のまま、人間の国に帰してしまいました。
妖精の王は、退屈な時間が大嫌いでした。
そのせいで振り回される、臣下達や、妖精の国の妖精達、連れてこられた人間や生き物達。
それでも、妖精の王に逆らおうとする者は、誰もいません。
みんなみんな、今の幸せな暮らしがずっと続けばいいと、そう思っているからです。
妖精の王は、退屈な時間が大嫌いです。
「つまらん。」
その一言で、また誰かの運命が、大きく変わることになるのです。




