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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
選抜大会
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第96話 慰労会

親善大会は、去年女子がずっと光田高校に敗れていて、勝つということを印象付けたい青竹高校が優勝し、幕を閉じた。昨年、快進撃を続けた光田高校ではあったが、4位に届かす、最高でBチームの5位という結果だった。


去年の女子部員たちの快進撃に比べ、男子部員たちは奮闘したものの結果には繋がらなかった。しかし、その分、今年にかける熱い意気込みが全員から感じられ、試合の課題と得るものも多かった。それを象徴するのが、Bチームの松平清純による競射の場面だった。彼が外した瞬間、チーム全員の胸に悔しさが残ったが、同時に次への強い決意も生まれた。


女子は、つぐみ、杏子という飛び抜けたエースが居て刺激され。身近に見る高い目標に全体のレベルがあがった。特に瑠月の上達は目を見張るものがあった。

たが、男子には特にそういう存在は居なかったことが大きいのかもしれない。


拓哉コーチと滝本先生は、全員がほぼ同レベルで切磋琢磨している男子部員たちに、今後いかにしてさらなる成長を促すかが課題だと感じていた。一方で、親善大会という舞台を通して、男女が互いに刺激を受け、隔たりが少しずつ解消されたことは大きな収穫だった。


大会後の簡単な慰労会は、学校の教室で行われた。大会の緊張感から解放された部員たちは、それぞれのチームごとに席に集まり、にぎやかな声が飛び交っていた。


杏子は、さっさと祖父が連れて帰ってしまったが、まゆはあかねと一緒に慰労会に参加した。


「いや~、やっぱり親善大会っていうのも楽しいものだね!」

沙月が笑顔で言うと、冴子が静かに頷いた。

「緊張もしたけど、色々な学校の射を見られたのはいい経験になった。特に青竹高校の選手たち、あの一糸乱れぬ動きは見事だったよ」


「完全に勝ちに来ていたもんな。比べたらうちは少し緩い雰囲気ではあったな」

「まあ手を抜いた訳ではないからな。リラックスできた部分をぷらすに転じられなかったことは反省点だな」

「確かに、結果的に模擬試合の時と同じ的中数。安定しているといえば聞こえはいいが、もっと高いレベルでの安定を目指さないとな」

「BチームもCチームも、本番での結果の方が良かったからな」

真嶋と矢島も頷いていた。



選抜大会という本番で鍛えられていた栞代は、今大会でもきっちりと結果を出した。だが、栞代は自分のことよりも、紬の結果を讃えた。

「紬、本番でいきなり3本的中ってすごいな」

紬は黙って聞いていた。

「やっばり、あれか? 杏子方式で「姿勢だけ」を考えたか?」

「は、はい。杏子のおかげです」


「やっぱり俺が競射で外したのが響いたよな……」

松平がぽつりと言うと、隣にいた一ノ瀬が肩をポンと叩いた。


「気にするなよ。競射にはそれこそ、独特の雰囲気があるし、経験が最も物言う場面かもしれんしな」

「でが、それはそれとして、あの場面、かっこいいところ見せてやろうという気持ちがあっただろ」

一ノ瀬が笑いながら指摘すると、場が和やかな笑いに包まれた。

「確かにな。いいところを見せようとしてしまったな」

「それは、いいところがあるやつの言うセリフだ」

栞代が強烈な一言をぶつける。

「な、なんだと」

「やめとけやめとけ。今日のところはお前の方が分が悪い」

一ノ瀬が諭すと、松平はふてくされたが、

「おい、紬、お前はどう思うんだよっ」

と声をかけて、

「それは、わたしの歌題ではありません」

といつものセリフを引き出し、場を和ませた。


「でも、松平の悔しさは分かるな。次こそは勝とうぜ」

一ノ瀬がそう言うと、栞代がまた

「試合をすればするほど、杏子の偉大さが分かるだろ?」

と付け加える。

「まあ、確かにそれはその通りだ。あんなに大人しくて、どこに居るか分らないぐらい何も話さないのに、いっつも的に当ててるもんな」

「ふ~。まだまだ杏子のこと、分かってないな」

と栞代は呆れるが、それ以上はつっこまなかった。



混成チームとなったCチームは、瑠月を中心にまとまっていた、とは言えるのだが。


「ちょっと気を抜きすぎたが、来年はやるぜ。絶対に来年見に来てくれよな、瑠月さん」

海棠が真剣な顔でそう言うと、菊島が勢いよく拳を握りしめて応えた。

「おい!抜け駆けは無しだぞ」


「あのね~、あんたたちみたいな年下には、瑠月さんは興味ないの」

あかねが強烈な一言を放つと、横でまゆがくすくすと笑っている。

「そんなことないですよね、瑠月さんっ」

一番年下、と言ってもあかねとまゆと同じ歳の海棠が叫ぶと、

「さあ、どうかな?」

と微笑んだ。

「う~ん。その顔に弱いんです」

海棠が呟くと、

「あんた、この前まで、まゆに勉強教えてとか言ってたよね。いい加減にしろ」と、あかねにつっぱねられた。



やがてコーチの拓哉が教室に姿を現し、手を叩いて皆を静めた。

「みんな、お疲れさま。今日はゆっくり休んで、また次の練習から切り替えていこう。今回の大会で感じたこと、悔しかったこと、それを次にどう活かすかが大事だ。リラックスした状態でだせない結果は、緊張した本番ではもっとだせないぞ」


拓哉の言葉に、一同が真剣な表情で頷いた。


「さあ、そろそろ片付けだ。あと、食べ物残さず持ち帰れよな!」

拓哉の冗談めいた一言に、教室は再び笑い声で溢れた。


こうして、光田高校弓道部の慰労会は温かな雰囲気の中で幕を閉じた。次なる挑戦に向けた準備は、すでに始まっていたのだった。

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