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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校入学から県大会
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第7話 花音先輩と瑠月さんが戻ってきてくれた。冴子。

花音(かのん)先輩と瑠月(るか)さんが今日、ようやく戻ってくると連絡が入ったとき、私はほっと胸をなでおろした。杏子やつぐみ、そして弓道部に二人が不在の時に起きたことを、二人にきちんと報告しなくてはならない。


あれから、部の中で問題があったわけではない。ただ、私はどうしても杏子のことが気になっていた。彼女は周囲に与える影響はとても大きい。つぐみも、もちろん目立つ存在だが、つぐみは自分が一目置かれる立場に慣れているようだ。それだけの実力を示し、礼儀も弁えている。先輩たちにもきちんと礼儀正しく接し、堂々とした立ち居振る舞いで実力を見せつけている。全国準優勝の実績は伊達じゃない。


しかし、杏子の場合は少し違う。彼女は自分の実力を示した結果として、先輩たちの面目を潰す形になってしまった。そんなつもりではなかっただろうが、結果として彼女は先輩たちに恥をかかせてしまったのだ。それがどんな波紋を広げるか、私は不安を拭えないでいる。


栞代(かよ)は、栞代自身が少し目を離したときにトラブルが起こったことを気にしてか、今は杏子のそばから離れようとしない。しかし、いつ突発的な事態が起こるか分からない。杏子はまだ人の悪意を経験していないのか、どこか無防備で、無垢さが滲み出ている。そんな彼女を見ると、心配が募るのを止められない。


杏子が目立たないのは、今のところ私にとってありがたいことだ。つぐみが的前で派手な射を見せる一方で、杏子は新入部員たちと一緒に基礎練習に励んでいるため、先輩たちの視線も今のところ彼女には向かっていない。穏やかな時間が続くことを願わずにはいられなかった。


そんな私の心配が伝わったのか、ようやく花音先輩と瑠月さんがクラブに顔を出してくれた。二人には、弓道部の新入部員のこと、そして、三年生たちが一方的に杏子に因縁をつけたことを報告した。二人は弓道部に新たに実力者が加わったことを喜んでくれたが、三年生たちの態度には困惑し、花音さんは軽く怒りさえ見せた。


「冴子も、ほんとに大変だったね。」いや、ほんとに結構大変だったんですよ、花音先輩。

「じゃあ、すぐに三年生と話をするわ。」と花音先輩がきっぱりと言ってくれたことで、私は少し安心した。杏子への心配がこれで少しでも軽くなることを願った。


その後、練習がひと段落ついたところで、杏子と栞代を呼び出し、二人を花音先輩と瑠月さんに紹介した。二人とも丁寧に挨拶した。瑠月さんが明るく「杏子ちゃん、大変だったんだね~。また、私にも杏子ちゃんが弓を引くところ、見せてね」と言うと、杏子もほっとしたように微笑んだ。杏子ちゃん、か。瑠月さんがそう呼ぶ気持ち、なんか分かるな。一見、とても前にでるタイプじゃないし、のんびりといえば聞こえはいいが、どこかぼんやりしてる感じもあるし、放っておけないタイプなんだよな、杏子は。栞代の気持ちが分かるよ。まあ、わたしにしてもそうなんだけど。その笑顔に、私は純粋とか、無垢とかの言葉の意味を思うよ。あと、幼稚園児、とか。


花音先輩は「三年生は根は悪い人たちじゃないから、心配することないわ」と杏子を安心させようと言ってくれたが、杏子は、まったくピンときていない様子だった。ほんとに平和なやつだよ。まるで、弓以外のことには全く興味がないかのようだ。そんな風にぼんやりした杏子を見ていると、私は思わず笑ってしまいそうになる。彼女の無邪気なところには、見ている者を安心させる不思議な力がある。


それでも、杏子と栞代は練習後もずっと居残りを続けている。いったい何時までやっているのかと呆れることもあるが、それでも弓道への情熱を見せる彼女たちを見ていると、私も背筋が伸びる。


コーチが「そろそろ杏子にも的前で練習させないとな」と言っていたことを思い出す。インターハイの予選が始まるまで、もう一月少々しかない。杏子もいよいよ本格的な練習に入る時期が迫っている。そして、コーチは練習試合も考えていると言っていた。つぐみと杏子が加われば、私たちが予選を突破する可能性もぐっと高まる。


レギュラー争いはますます熾烈になるだろうが、私も気を引き締めなければな。二人の存在は、新たな闘志と緊張をもたらしてくれる。


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