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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
インターハイ
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第59話 新人戦部内選考試合 前日

新人戦のメンバー選考のための部内試合を翌日に控えた日、つぐみと栞代は、杏子の家に遊びにきていた。


テープルには祖父のいれた紅茶が乗っていた。

「相変わらず、杏子のおじいちゃんの紅茶は美味しいな~。」つぐみが感心したように呟く。

「そこだけは杏子が羨ましいな~。」

栞代が返す。

「いよいよ明日、選手選考の試合だけど、栞代の調子はどうなんだ? めちゃくちゃ必死で練習してるじゃねーの」

「まあな。やっぱり杏子と同じ舞台に立ちたいからな。」

「実績から行くと、県大会チャンピオンの瑠月さんだろ、ブロック大会優勝の杏子、そして、全国で準優勝だったわたし、の三人が順当なところだが、一発勝負のオソロシさがあるからな」

「そこは拓哉コーチの拘りがあるみたいだな。今はまゆが的中数のチェックをしているから、部員全員の的中率も分かるはずだから、そこで決めることもできると思うけど」

「だが、本番も一発勝負だからな。練習の的中率がいくら良くても、本番が良いとは限らないしな」

「その分、オレにもチャンスはあると思ってる」

「確かに、その意味ではほんとに平等にチャンスはある。杏子、聞いてる?

「うん、聞いてるよ」

「杏子はどう思ってるんだ?」

「う~ん。結果を考えて、いいことあった試しはないから、わたしはいつも」

『正しい姿勢でうつことだけ。あとはただ結果なだけ』か。三人が声を揃える。そして三人が声を揃えて笑う。

「それが杏子のオソロシさだよ。栞代も、そろそろ分かってきただろ、この怖さを」

「確かにな。姿勢のことを考えるのは当然としても、なかなか的から意識を外せない、やっぱり、あたれって思ってしまうし」

「まあ、杏子は変態オバケだから、あんまり気にせず、自分の矢を打つことだよ、栞代」

「ひど~いっ」

「いや、杏子、弓を引けば引くほど、杏子の凄さが分かるよ。」

「おだてるか、貶すか、どっちかにして~。」

そんな軽口を言っていたら、父祖が、夕食の準備が出来たと予備に来てくれた。


つぐみが杏子の家で夕食をとるようになってからしばらく経つ。今や、栞代とつぐみ、杏子は、仲のいい三人姉妹のようだった。

父母の世代ではなく、祖父母が相手をする、という、年代の差が、三人を素直にさせている要因でもあるだろう。


祖父がぼけて、栞代がつっこみ、つぐみが窘めて、杏子が笑う。食卓はいつものように楽しい笑顔で満ちていた。

食事のあと、また祖父の紅茶を堪能しながら、今度は祖父が明日の試合の話を聞いてきた。


「最近、ぱみゅ子は栞代やまゆさんの練習につきっきりらしいが、明日の選考試合は大丈夫なのかい?」

「ああ、なんか杏子、申し訳ないな、ずっと見てもらってて」

「いや、全然そんなことないよ。栞代の射を見てると凄く刺激貰えるし」

「わたしから見ても、最近の栞代の気合はすごいよ」

「ほほう。」

「まあ、杏子と同じチームになりたいしな」

「じゃあ、瑠月さんを越えないとイケナイけどな。言っとくけど、私は越えられないぜ」

「いや、それを狙ってるんだけど」笑

「私は杏子と違って、友達だからといって、一切カンケーないから。手加減も動揺も全くしないからな」

「もちろんさ。堂々と勝負しよ、と言いたいが、まだ胸を借りる立場だなあ」

「いやいや、栞代、一発勝負の怖さがあるからな。そさにさっきも言ったけど、最近の栞代の気合。何かが起こっても不思議じゃない」

「そうだろ・・・・って、つぐみ、上げ下げが激しいな」笑

「こりゃ、ぱみゅ子は大丈夫じゃわい」


「おじいちゃん、たしかに杏子は凄い。緊迫した試合になればなるほど杏子の強さは際立つからな~。」

「そうじゃろうそうじゃろう」

「わたしは身をもって体験してるからな。そうだっ、明日おじいちゃん、試合の見学に来てくれないか?」

「ん? それは構わんが、なぜじゃ?」

「杏子のペースを狂わせることができるのは、もう、おじいちゃんの暴走しかないからさ」

「どういう意味じゃ」

「だって、おじいちゃんが来たら、やっぱり杏子の気がそれるだろ?」

「そうは言うけどな、つぐみくん。杏子が弓を持ったら、ワシのことは一切興味なくなるぞ」

「そうだよ、つぐみ。そもそも杏子はおじいちゃんの干渉から逃れるために弓道してるんだから」

「栞代~、何言うのよ~」

「最近、おばあちゃんにもその能力があって、杏子もちゃんと受け継いでいることが分かったよ」

「なんだそれ?」

「だって、つぐみ、考えても見ろよ。このおじいちゃんの言うこと、全部まともに聞いてたら、身体がいくらあっても足りないぜ」

「たしかにな~、私たちも、その能力身につけないとな~」

「もう二人には紅茶は飲ませんっ」

「いやいや、おじいちゃん、うそだよ~~」

二人が声を揃えると、杏子をはじめ、おばあちゃんも吹き出した。

「もう絶対にぱみゅ子の試合は見に行かんんっ。ことはできんな、やっぱり」

そう言っておじいちゃんも大笑いした。


「考えてみるとじゃ、わしにいいところ見せようと思って余計に頑張るのが、ぱみゅ子だからのう」

「ま、そういうことにしとくか」

笑い声はいつまでも絶えなかった。


緊張とリラックスは隣にある。そう信じていた祖父は、明日の選考試合、全員ちゃんと実力が出せることを祈っていた。


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