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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校3年生
553/581

第553話 勝つための予定変更

「ソフィア、次の試合、弓を持った杏子、宇宙人杏子との、第三種接近遭遇を楽しめよっ」


その平和な光景の横では、熾烈な「黄金の卵焼き争奪戦」が勃発していた。みんなで分けなさい、と別に詰めてくれた卵焼きオンリーの重箱だ。

「あーっ! 葡萄、あんた今、私の狙ってた端っこの焦げたとこ取ったな!」

「真映先輩、早い者勝ちっすよ! ほら、苺も食べて食べて!遠慮してたら無くなるで」

「おまえら、アンナちゃんの面倒見る任務はどうしたっ」

「今はお姫様(杏子)とお食事タイムですので、大丈夫っす」

栞代が「お前ら。アンナちゃんより始末におえんな」と苦笑しながら、祖父が提案してくれたという「ねばり勝ちオクラ」を松平の弁当に放り込んでいた。


そのアンナは、杏子のお弁当箱に入っている卵焼きを、杏子から直接口に運んで貰ってる。

「…Tämä on tosi hyvää.Maista tätä myös!(……おいしい。こっちも食べて)」


今度はアンナが、自分のお弁当箱のミートボールを杏子の口に運んだ。


「Hyvää.(おいしい)」

二人は、ほんとの姉妹のように、同じ表情で笑いあった。


また、その様子を見ていた楓と滴は、羨ましそうに二人の様子を見て、互いのオカズを交換しながら、気持ちを紛らわせていた。

「仲良しやな~、楓、滴」

声をかけた真映を、なぜか悲しげな顔で見つめる二人だった。


一方、ほんとの姉妹のソフィアの方は、紬と一緒に、一華の送ってくれたチェックポイントリストを眺めながら食事をしていた。


南方武道館の敷地内の一角を、完全に光田高校の風景にし、午後から始まる決勝トーナメントに向けて、暫くの休憩時間を過ごしていた。


杏子とアンナ、そして葡萄、苺、滴、真映らの楽しそうな表情が眩しい。広い場所ではあるが、今は試合会場なので走り回れない。そこでメンバーはいろんな工夫をしながら、アンナと遊んでいた。


賑やかな輪から少し離れた場所で、まゆの両親が、まゆを抱きしめていた。

「まゆ、あなたは私たちの誇りよ。あの一本、本当に素晴らしかった」

「ありがとう、お母さん、お父さん。……あかねちゃんが、支えてくれたから」


まゆが隣のあかねに目を向けると、あかねは少し俯いて、自分の食べ終わった弁当を見つめていた。

「……私、不甲斐ないわ。まゆを支えるどころか、自分が気負いすぎちゃってて……」


まゆの母が「あかちゃん、それでも、すごくかっこよかったわよ」

と、慰めていると、そこへ、拓哉コーチが音もなく現れた。


まゆのご両親に挨拶をしたあと、コーチは二人に声をかけた。


「あかねさん、まゆさん。ちょっといいかな」


二人が連れ出されたのは、静かな木立の奥だった。

「トーナメント一回戦だが、続けてまゆさんに出場して貰おうと思う。そしてあかねさんが介添えに回ってほしい」


「えっ……?」


あかねの顔に衝撃が走る。試合に出られない悔しさ、けれどまゆが選ばれたことへの複雑な感情。コーチは淡々と続けた。

「まゆさんは調整が完璧に上手くいって、今がピークに合っている。対してあかねさん、君の武器である爆発力と勝負強さは、まゆさんを意識しすぎて、今のままでは『空回り』で終わるかもしれない。

二回戦には、多分川嶋女子が出てくる……あそこは執念をぶつけてくる。

あの気迫には、あかねさん、君のタフさが絶対に必要だ。そこで本来の力を取り戻すために、一度外から『まゆさんの背中』を介添えとして支え、本来の自分を取り戻してほしい。……行けるか、まゆさん?」


まゆが、あかねの立場を奪うことに躊躇していると、あかねが顔を上げた。瞳には、もう迷いはなかった。

「……大丈夫です、コーチ。私が、まゆを完璧にサポートします。その代わり、二回戦は任せてください」

力強く、コーチに宣言した。


よし。声には出さなかったが、コーチは力強く頷いて、滝本顧問の元へ戻っていった


あかねはすぐにまゆに声をかけた。

「まゆ、体力は大丈夫?」

「うん。お昼の休憩があったから、もう随分回復したけど、でも、あかね…」

あかねを気遣うまゆ。

「いや、コーチの言うことはもっともだ。このままだと、ますます力んでしまう。一旦、落ち着いて、まゆを支える、その原点に戻るよ」

「う…うん。わたしも全力で頑張るよ」


そう応えるまゆの顔を見ながら、改めてあかねは言った。

「そう思うと、やっぱり杏子ってすげーな」

「ふふ。ほんとに」

二人は、アンナと楽しそうに、心からの笑顔を見せて遊んでいる杏子を見た。


「あの無邪気さと、弓を握った姿。同一人物だとは思えないよなあ」

「ふふ。ほんとに」

「姿勢だけ、か。もう私たち、光田高校弓道部の鉄の掟、として叩き込まないとなあ」

「ふふ。ほんとに」


「まゆ、さっきから、それしか言ってないぞ」

「ふふ。ほんとに……あ、いけない」

二人は顔を見合わせて笑った。


弓道部全員が、短い休憩時間を、存分に楽しんでいた。


完全なリラックスがあってこそ、力は正しく働く。力みとは、解けきれない緊張が生んだ雑音にすぎない。体のどこにも余分な力がない状態――その静けさが土台となって、はじめて全力が一点に集まる。リラックスとは弱さではなく、力を生み出す準備の完成形である。




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