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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校3年生
549/581

第549話 『予選三位の通過、コケなかった親分』

射位に並ぶ五人。一人四射、計二十射で予選通過ラインを競う。

いよいよ、戦いの幕が開いた。


【一巡目】


一番手(大前)・栞代。

「パァン!」

極限の緊張感の中、迷いのない乾いた弦音が響く。矢は吸い込まれるように的の真ん中を射抜いた。チームに勇気を与える、見事な第一歩。


続く二番手のあかねも、持ち前の勝負強さを発揮し、鋭い気合と共に的中させる。

三番手、まゆ。

椅子に座った独特の構えに、会場が静まり返る。丁寧に、拓哉コーチと杏子が作り上げた射型をなぞる。放たれた矢は……惜しくも的の数センチ上を抜けた。


しかし、四番手・紬、五番手・杏子が崩れない。二人は呼吸を合わせたかのように、淡々と、精密機械のように的を射抜いていく。


【二巡目】


栞代が二本目を()て、チームのいい流れを維持する。

だが、ここで目に見えない魔物が顔を出した。あかねの二射目、気合が空回りしてわずかに力みが入った矢が、的を逸れる。

まゆも、前のあかねの動揺を肌で感じ取ってしまったのか、二本目も惜しくも的の枠を叩いて外れた。

「っ……」まゆの顔に焦りが滲む。


しかし、後ろの二人が全く動じない。紬が射抜き、そして杏子。

杏子の目は、完全に「宇宙人モード」に入っていた。入場前の小鹿のような震えは微塵もなく、周囲の音を一切遮断し、ただ透明な心で的と対話し、吸い込まれるように矢を放っている。


【三巡目:執念の弦音】


栞代が三本目。完璧な射形だ。

あかね、ここは持ち前の意地と筋力で強引に修正し、中ててきた。

そして、まゆ。

二本連続で外したあとの三本目。普通なら心が激しく揺れ、射形が崩れる場面。だが、彼女の耳には、試合前にアンナがかけてくれた『一番、杏子に似ている』という言葉が響いていた。


(……繋ぐ。私の矢を、みんなに、絶対に!)


大きく息を吸い、静かにかいに至る。

そして、離れ。

「カンッ!」

乾いた、心地よい音が武道館に響き渡った。

的中。まゆの高校生活、集大成となる一矢が、ついに真っ直ぐに的を捉えた。


会場から、より一層大きな拍手が響いた。


動じない紬が動じたほどの歓喜だったが、締める杏子は、一切の動揺を見せない。


【四巡目:静寂の結び】


栞代、圧巻の四射皆中。大前としての責任を完璧に果たす。

あかね、最後の一本を惜しくも外し、悔しそうに唇を噛む。

まゆも、四本目は体力が尽きたように外れたが、その表情には一片の悔いもない清々しさがあった。

紬が的中三本目を中てて、きっちりと締め、最後は、杏子。

彼女にとって、的がそこにあるのかどうかも、もう関係ないようだった。ただ、今朝飲んだ祖母のお吸い物のように、どこまでも澄んだ心で、正しい姿勢のまま矢を放つだけ。

「パァン……」

美しい残心。杏子もまた、堂々の四射皆中で予選を終えた。


【予選結果】

① 栞代  〇 〇 〇 〇 (4中)

② あかね 〇 × 〇 × (2中)

③ まゆ  × × 〇 × (1中)

④ 紬   〇 〇 × 〇 (3中)

⑤ 杏子  〇 〇 〇 〇 (4中)


合計        14中


合計十四中。

全体的な的中率としては決して最高とは言えないが、無事に予選通過ラインはクリアした。

奇しくも、小鳥遊つぐみ率いる千曳ヶ丘高校と同中となったが、大会規約の「立ち順(ゼッケン番号の若い順)」により、光田高校が予選三位、千曳ヶ丘が四位というシード扱いで決勝トーナメントへと進出することになった。


「……まゆ。中てたね!」

射場を出て控室に戻った瞬間、あかねがまゆの手を両手で強く握りしめた。自分の不甲斐なさに悔し涙を浮かべながらも、まゆの集大成の一射を、誰よりも自分のことのように喜んでいる。


「うん。……あかね。一本だけだけど……繋いだよ」

まゆも、涙ぐみながらあかねの手を握り返した。


「……よし、予選は通過した。次だ」

栞代が短く気を引き締めるように言い、杏子がいつものようにふにゃりと笑って緊張を解いた。

「みんな、お疲れ様。……緊張しすぎて、お腹、空いちゃったね」


栞代が呆れたように笑う。

「オレは、入退場で杏子が自分の袴の裾を踏んでコケなかった瞬間に、今日の予選突破を確信したよ」

杏子が「も〜、栞代~」と頰を膨らませる。

「なぁ、紬もそう思うやろ?」

栞代が話を振ると、紬は弓を拭きながら、いつものセリフを放った。

「……それは、わたしの、課題では、ありません」


予選通過。

拓哉コーチが頷いている。

「まあ、想定内だな。ゆっくりとお昼にしよう。ちょっと男子にハッパかけてやってくれ」

その雰囲気は試合前とはまるで違い、柔らかかった。


さあ、決勝トーナメントだ。

そこには、予選を上位で通過し、さらに鋭利な集中力を持ったライバルたちが、虎視眈々と光田の首を狙って待ち受けている。

すべての出場高にとっての憧れであり、倒すべき敵。それが今の光田高校だ。

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