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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校3年生
545/579

第545話 『Prinsessaniと、小さな勝利の女神』

決戦の地、南方武道館。

大型バスが専用駐車場へと滑り込んでいく。


「……よし、行くぞ」

部長の山下が短く号令をかける。

車中では滝本顧問の『地獄の四時起き合宿』宣告にビビったり、自暴自棄に笑ったりと情緒不安定だった男子部員たちも、バスを降りて朝の空気に触れると、覚悟が決まったのか顔に精気が戻り、アスリートの気合が入っていくのが分かった。今日は先に男子の予選が行われる。


女子陣は客席へと向かい、応援と待機のためのスペースを陣取る。

拓哉コーチに荷物を任せ、部員たちは体をほぐすために、会場周りの散歩を始めた。

徐々に他校の選手も集まり、ピリッとした緊張感が高まってきている中、杏子は少し違う方向を見ているようだった。


「おじいちゃん、ちゃんと真面目に散歩してるかなあ?」

ぼんやりと列の先頭を歩きながら、辺りをキョロキョロと見渡す杏子。


「部長、足元に気をつけて。段差がありますよ」

一華が注意を促した、その瞬間だった。

杏子の口から、驚きの声が漏れた。


「……あれ?」

遠くの広場。他校の集団に紛れるようにして、祖父の姿を見つけた。そしてその隣には、ソフィアの祖父であるエリックさんの姿。

だが、驚いたのはそこではない。エリックさんの他にも、見覚えのある、いくつかの金髪の人影があるのだ。

気がついた杏子が、慌てて後ろを歩くソフィアを振り返って声をかける。

「ソ、ソフィア〜っ!」


杏子が声を出したのと、ほぼ同時だった。

「!! Sofiaaaa!! Kyōko!」

(ソフィアーーー!! 杏子!!)


朝の静寂を切り裂くような、透き通ったハイトーンボイスが広場に響き渡った。

見れば、激しく飛び跳ねている小さな金髪の少女が、手を振りながらこちらに向かって一直線に全力疾走してくる。


「……Ei voi olla tottaありえないわ

ソフィアが、吸い込まれそうな青い瞳をさらに大きく見開き、その場に立ち尽くした。


弾丸のような勢いで、小さな金髪の影が飛び込んできた。

ソフィアの妹、アンナだ。

彼女はまず、勢いそのままにソフィアの腰にギュッと抱きついた。満面の笑顔だ。ソフィアもその場にしゃがみ込み、力強く妹を抱きしめ、金色の髪を優しく撫でる。


その尊い様子を、笑顔で見守る杏子。

そして、光田の部員たちも、突然の出来事に目を白黒させていた。

初対面となる一年生には、一華がタブレットの情報を元に手短に説明を入れる。

「えっ、ソフィア先輩の本当のご家族!? フィンランドからわざわざ来たの!?」

「試合に合わせて極秘来日したようですね」



ソフィアの父母、ヨハンとミーナが微笑みながら近づいてくると、アンナはパッとソフィアから離れ、今度は杏子に向かって、文字通り「目がキラキラの星」のまま、飛びついた。


「Kyōko! Kyōko!

Kyōko, minun prinsessani!

Minä olen kaivannut sinua niin paljon!」

(わたしのお姫様、杏子! すっごく会いたかった!)


杏子が屈み込んで優しく頭を撫でると、それまで満面の笑みだったアンナは、感情が昂ぶったのか突然ポロポロと泣きだした。

呆気に取られていた、杏子の両脇を固めていた楓と滴も、そんなアンナの小さな肩にそっと手をかける。

「アンナちゃん、何言っているのか全然分からないけど……気持ちは痛いほど分かるわ。会いたかったのよね」

楓が真顔で呟き、滴は「……手強い、小さなライバルねっ」と言葉には警戒心を滲ませていたが、表情はとても穏やかで、アンナを優しく撫でた。


その横では、父ヨハンと母ミーナが、感動に目を潤ませてソフィアを抱きしめている。

「ソフィア、本当によく頑張ったわね。エリックから送られてくる練習や試合の映像は何度も見ていたわよ。日本の弓道着、とても似合ってるのね。すごくかっこいいわ。今日着替えたら、一緒に記念写真撮ってよ」

「信じられない……。Kiitos, äiti, isä. ありがとう、お母さん、お父さん」


エリックじいさんが「してやったり」という茶目っ気たっぷりの顔をしているのは分かるが、なぜか横にいる杏子の祖父までもが、自分が企画したかのような得意げなドヤ顔で腕を組んでいる。


一方、弟のラウリはというと、日本の武道場の独特の雰囲気に圧倒されたのか、あるいは姉の友人である日本の女子高生たちからの視線が恥ずかしいのか。手元の携帯ゲーム機を慌ててポケットにねじ込み、顔を真っ赤にしてペコペコと会釈を繰り返していた。


「がははは! 驚いたか、ぱみゅ子! エリックと極秘裏に仕組んだサプライズじゃ!」

祖父が、エリック爺さんと肩を組んで高笑いしている。


アンナは、杏子の首に抱きついたまま、小さな手を絶対に離そうとしない。

その様子を少し離れて見ていた真映は、

「子供の特権はオソロシイ……代わってほしい」

と羨ましそうにハンカチを噛んだ。


しかし、すぐに気を取り直して腕を組む。

「まあ、北欧から本物の勝利の女神が来てくれたわけやし。これで、地獄合宿のかかった男子も、そこそこやるかもしれんな」

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