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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校3年生
529/581

第529話 遠足 その9 『ロード・トゥ・グローリー、一つのチームになった日』

パレードが完全に通り過ぎた後の沿道には、スピーカーから流れる陽気な余韻と共に、まだゲストたちの興奮の熱が、薄い霧のように漂っていた。

空から無数に舞い降りた黄金の紙吹雪が、杏子や栞代、あかねの髪に、そして少しばかり緊張した面持ちの男子部員たちの広い肩に、等しく降り注いでいる。


「……あーあ、終わっちゃったな。でも、なんかめっちゃ元気出たわ」

あかねが、隣でまだパレードの熱に当てられてボーッとしている松平の背中を、バシッと遠慮なく叩く。

「いってぇ! な、何するんですか、あかねさん!」

「何、腑抜けた顔してんだよ。パレードは終わりだけど、あたしたちの『ロード・トゥ・グローリー(栄光への道)』はここからだろ?」


あかねの何気ない、けれど核心を突く言葉に、先ほどまで静かに紙吹雪を見つめていた男子部長の山下が、ゆっくりと顔を上げた。


「……そうだな。俺たち男子は、今年ようやく、本当に久しぶりのインターハイ出場だ。正直、女子みたいに『優勝』を公言するのは、まだおこがましいと思ってた」


光田高校弓道部。

女子は、杏子という規格外の実力者の入部以来、それに引き上げられるように全国の頂点を争うまでに急激に頭角を表した。

しかし、男子はここ数年、あと一歩のところで涙を呑み続けてきた。かつては全国準優勝を二度果たし、女子と完全に肩を並べる実績もある「古豪」だった。今の部員たちにとって、それは道場に飾られた歴史の教科書の中の話に過ぎない。


「でも、今のパレードを見て……あの『レオ監督』の言葉を聞いて、思ったんだ」

山下が、ギュッと握りしめた自分の拳をじっと見つめる。

「俺たちも、ただの『インターハイ出場者』の肩書きだけで終わりたくない。高階会長たちが立っていたあの景色を、もう一度、俺たちの代で取り戻すんだと」


普段、光田弓道部は男女で別メニューの練習をこなしている。合同合宿以外では、ろくに踏み込んだ会話もしない。

けれど、このWSWウィナー・サミット・ワールドという魔法のような空間が、そして共に過ごした非日常の時間が、彼らの間にあった見えない壁を少しずつ溶かしていた。


「山下……おこがましいなんてこと、絶対にないぞ」

栞代が、最前列で車椅子に座るまゆの肩にそっと手を置きながら、静かに、けれど芯のある強い声で言った。


「オレたち女子だって、杏子が居なければ、歩みは男子よりもずっと遅かったかもしれん。オレたちと男子の違いは、純粋に『杏子が居たか、居なかったか』しか無かったと、オレは思ってる」


栞代の言葉に、男子たちがハッと息を呑む。

「新年会の時、一華がデータに基づいて話した通りだ」

栞代は、まゆの肩に置いた手を軽く握りしめながら続ける。

「お前らのどん底からの復活劇は、オレたちから見ても十分すごいぞ。……ただ、あいつは説明のつかない『宇宙人』だからな。お前らは、『人間』として最大の結果を出し続けてきているんだ」


栞代の真っ直ぐな視線が、そして隣で真っ赤な顔で俯いている杏子の上目づかいの視線が、山下から海棠、松平、立川、そして一ノ瀬へと順番に向けられる。


「……一緒に、行くぞ。全国の頂点へ。オレたちは男女揃ってテッペンを獲りに行く。男子は女子よりも層が厚くて激戦区だが……お前らがこれまでどれだけ苦しい練習に耐え、悔しい思いをしてきたか。一番近くで見ていたのは、オレたち女子だ。……思い切りやろうぜ」


「栞代さん……」

松平が、少し目頭を熱くして鼻を啜った。山下も、言葉にならない思いを噛み締めるように、深く頷く。


「……あー、もう! 湿っぽいのは今日までな! 海棠、お前さっきドラゴンで死ぬほどダサい声で叫んでたろ? あの勢いで、的のド真ん中にぶち当てろよな! 一ノ瀬、お前も本番で緊張して自滅してる余裕なんてないぞっ!」

あかねが豪快に笑い飛ばすと、重苦しかった空気が一気に弾け、周囲に明るさが戻った。


「よし! 男女アベック優勝狙うぞ! 女子にだけ良い思いはさせないからな!」

山下が気合を入れ直すと、海棠が「当然だ!」と力強く吠えた。


松平が、ニヤニヤしながら海棠を茶化す。

「ソフィアさんにいいところ見せないとアカンもんな、海棠!」

「うるせえ! お前だって、まゆさんにいいとこ見せたいんだろうが!」


「わざわざいいところを見せないと相手にしてもらえないなんて、お前らの高校生活は悲劇だよなあ」

弓道部イチのイケメンであり、先ほどのパレードでもダンサーから花をもらっていた立川が、涼しい顔で火に油を注ぐ。


「な、なんだと〜っ! 呼吸してるだけでモテるお前に、俺らの血の滲むような努力と純情が分かるか!」

激昂する海棠と松平の間に、無口な巨漢・一ノ瀬が黙ってすっと割り込み、物理的な壁となって場を収める。


「なんや、男子も結構面白いネタもってんな」

あかねが、コントのようなやり取りに感心したように呟いた。


夕陽が、サミット・マウンテンの巨大な影に隠れようとする瞬間。

黄金色の光に包まれた十一人のシルエットが、パレードの跡地に長く、美しく伸びていた。


女子の「絶対」と、男子の「挑戦」。

二つの情熱が一つに溶け合い、光田高校弓道部は、この日、本当の意味で一つの「チーム」になった。

掲げたロゴ、Winner Summit Worldの名に恥じない、最高の夏にするために。


「じゃ、最後にもういっかい、入り口でお土産見てから帰ろっか!」

杏子の明るい号令で、再び歩き出す十一人。

その足取りは、朝パークに足を踏み入れた時よりもずっと力強く、自分たちの目的地へと真っ直ぐに向かっていた。


そして一行は、予定通り、駐車場に待機していた大型バスに乗り込み、地元の街へと帰路についた。

車内は、名残惜しそうな空気が漂っていたのも束の間、心地よいエンジンの揺れが深い眠りへと誘う。

ほんの数十分後には、バスの中は誰一人喋る者もなく、穏やかな寝息だけで満たされていた。


夢の世界の余韻と、来るべき熱い夏への決意を胸に抱いて。

光田高校弓道部の三年生たちは、静かに、それぞれの明日へと運ばれていった。

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