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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校3年生
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第528話 遠足 その8 『黄金色の寄り道と、パレードの祝福、サミット・マーチと、それぞれのVサイン』

「おっ、松平。幸せそうな顔しちゃって。ニヤけすぎててキモイぞ」

あかねの遠慮のない、けれど遠慮のない声が響き、絶叫マシン『サミット・オブ・ドラゴン』を制覇、あるいは無惨に返り討ちにされたメンバーたちが合流してきた。

松平は、まさにこの世の春といった表情で、まゆの傍らに立っている。


続いて、強風で少し髪を乱した栞代が、無口な巨漢・一ノ瀬の背後に回り込み、その広い肩にポンと手を置いて不敵に笑った。

「一ノ瀬、お前……明日から、いや、今晩から夜道を歩く時には絶対に一人になるなよ。背後には気をつけろ」

「……?」

一ノ瀬が頭上に「?」マークを浮かべて首を傾げると、栞代が説明を始めた。

「5分以上、1m以内に杏子の側に居た男子は、即杏子のおじいちゃんの標的(ターゲット)リストに入るからな。覚悟しておいた方がいいぞ」

ぶっそうなことを言いながらも、栞代は楽しそうだ。


一ノ瀬は身長一八五センチを超え、筋肉質。どう見ても杏子の祖父より圧倒的に強そうなのだが、孫娘を護ろうとする異常な執念を想像したのか、明らかに顔色を変えた。

「い、いえ、私はただ……松平に呼ばれて、壁の役割を……!」

激しく首を振り弁明する一ノ瀬の姿に、ドッと笑いが起こる。


そんな冗談を言い合える、いつもの馬鹿馬鹿しい空気に触れ、杏子は自分の中に張り詰めていた緊張の糸が、ふっと解けるのを感じていた。

麗霞(れいか)の悲報を聞いて以来、どこか心が水底に沈んだままだった。しかし、こうして栞代やあかねたち「いつもの喧しい仲間」の姿を見るだけで、心の底から安らいだ。


「お、これ松平が買ったの? 気が利くじゃん。いただき!」

あかねが、松平がまゆへの「献上品」として用意していたチュリトスやドリンクを遠慮なく手に取り、豪快に口に運ぶ。

「あ、あかねさん! それ俺がまゆさんのために……」

「細かいこと気にすんな。いい思いさせてやったろ!」


四人だけだった静かな場所取りの輪は、いつの間にか十一人という大所帯に膨れ上がり、パレードルート沿いで一番の熱気と喧騒を放っていた。



「まゆ、杏子。場所取りご苦労さん。ずっと座りっぱなしで逆に疲れただろ? パレードまで少し時間あるし、オレらで荷物見とくから、ちょっと散歩でも回ってくるか」

あかねの粋な提案で、まゆと杏子、そして付き添い役の栞代の三人は、少しだけ場所取りの列を抜けて、パーク内を散策することにした。

「一ノ瀬、付き合えよ」栞代が声をかけるも、一ノ瀬は両手でぶるぶると拒絶し、頭も降っていたが、栞代が「いいからっ」と言って強引に連れて言った。

「ボディーガードにほんと最適なんだよ、一ノ瀬は」


WSWウィナー・サミット・ワールドは、絶叫マシンや大型アトラクションに乗らなくても十分に楽しめる、映画の魔法と仕掛けの宝庫だ。


『名シーン・フォトスポット』では、往年のハリウッド映画のワンシーンに入り込めるスタジオセットが解放されていた。杏子とまゆが、カメラマン・栞代の厳しいディレクションの元、「絶体絶命のピンチから生還したヒロイン風」にポーズを決めて撮影を楽しむ。


『ストリート・シネマ・マジック』では、路上で突如としてギャングと警察のスタントショーが始まった。キャストが目の前で建物の壁を蹴り、華麗なアクロバットを披露するたび、まゆは目を輝かせて拍手を送った。


『幸せの青い鳥・ヴィヴィの泉』では、透き通る泉にコインを投げ入れると、マスコットのヴィヴィの可愛らしい声で「君の願いは、最高の頂きへ届くよ!」というメッセージが流れる仕掛けに、杏子は真剣な顔で何度も頷いていた。


四人が充実した散歩を終えて戻ってきた頃には、パレード開始の直前。

レジャーシートは男子たちの手によって手際よく片付けられ、全員が起立して「その時」を待っていた。

最前列には、車椅子のまゆのために確保された特等席。その後ろを、松平や一ノ瀬をはじめとする男子部員たちが、強固な壁となって立っている。


西に傾き始めた七月の太陽が、パーク全体をドラマチックな黄金色に染め上げる「ゴールデンアワー」が訪れた。

遠くから、心臓の鼓動とリンクするような、力強いバスドラムの音が聞こえてきた。


『サミット・マーチ:ロード・トゥ・グローリー』の開幕だ。


先頭を切って現れたのは、巨大なフィルムロールとカチンコを模したフロート(山車)に乗った、パークの総支配人『レオ・ザ・サミット』だ。

黄金のスパンコールが輝くタキシードを纏ったレオが、特大の指揮棒(タクト)を頭上で高く振る。その瞬間、沿道のスピーカーから、地響きのような壮大なオーケストラが炸裂した。


「ウィナーズ! 今日の主役は君たちだ! 最高のエンディングへ向かって、行進(マーチ)を始めよう!」

レオの力強いアナウンスに、沿道のゲストたちから大歓声が上がる。


続いて、青い鳥の『ヴィヴィ』と赤いリボンの『トリー』が、真っ白な雲を象ったフロートで登場した。

軽快なステップで踊りながら、沿道のゲスト一人ひとりに向かって「君が主役だ!」とばかりに指差しでエールを送る。


「まゆさん、見て! ヴィヴィがこっち見ましたよ!」

背後の松平が必死にアピールすると、それに気づいたヴィヴィが、まゆに向かって可愛らしくウィンクを投げた。まゆは嬉しそうに頬を染めて、一生懸命に両手を振り返した。


パレードのハイライトは、巨大な龍のフロートだった。

先ほど絶叫組が体験した『サミット・オブ・ドラゴン』の迫力をそのままに、リアルなスケールの龍の口から白い蒸気が「プシューッ!」と吹き出し、鋭い瞳が怪しく赤く光る。

「うわ……さっきの百十二度の落下、思い出すわ……吐きそう」

海棠が青い顔をして腹を押さえながら呟くと、隣のソフィアが「海棠、腰が引けています。龍は逃げる者を追いますよ」と冷たく、けれど楽しそうに言い放った。


パレードの終盤、全てのフロートがルート上で一斉に停止した。

音楽がより一層華やかなダンスチューンに変わり、カラフルな衣装のダンサー(キャスト)たちが沿道のゲストの元へと駆け寄る。

「君の夢は何だい?」

「最後まで、一緒に走り抜けよう!」


ダンサーたちとハイタッチを交わし、ゲストも一緒に両手で「Vウィナー」のポーズを作って踊る。


杏子と栞代は顔を見合わせ、自然とリズムに乗って手を叩いた。黄金色の西日の中で、杏子の横顔は、これまでにないほど澄み渡り、輝いていた。


紬は、相変わらず無表情で微動だにしなかったが、ダンサーたちのステップとフォーメーションを「……黄金比に基づいた完璧な動線配置」と分析しつつ、その目にしっかりと焼き付けている。


男子連中の中でもひときわ目立つイケメンの立川は、その持ち前のイケメンぶりを発揮し、通りかかった美しい女性ダンサーから赤いバラの花(造花)を手渡され、背後の男子連中から「なんだよお前だけ! 許さん!」と激しいブーイングと嫉妬を浴びていた。


そして、男子部長の山下と、無口な一ノ瀬。

硬派な二人は最初こそダンサーたちのノリに戸惑い、棒立ちになっていたが、フロートの上のレオ監督から「そこの君! 胸を張れ!」と直接指を差されると、思わず弓道部らしい、背筋のピンと伸びた凛とした敬礼で応え、周囲の笑いを誘った。


やがて、パレードがゆっくりと通り過ぎていく。

空には、祝祭の終わりを告げる無数の黄金色の紙吹雪が、夕風に乗って舞っていた。

それは、これから自分たちが進む「栄光の道」を、そして「最後の夏」を祝福しているかのようだった。


「……あー、楽しかったなあ。なんか、明日からまた全力で頑張れる気がするな」

あかねが、夕空に向かって大きく伸びをする。

杏子は、ショップで買った『ヴィヴィ&トリー』のストラップの入った小袋を、ギュッと握りしめた。


「……うん。みんなでここに来られて、本当に良かった」


夕暮れ時のWinner Summit World。

彼女たちの物語は、まだ終わらない。

この非日常の魔法を胸に刻み、ここからが本当の「クライマックス」への助走なのだ。

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