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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
インターハイ
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第50話 インターハイ団体戦。

インターハイ団体戦が始まった。


とにかくまずは目標は予選突破。

今年は、三年生全体がインターハイの舞台に立つ、そのことが部の目標になっていた。


必ずしも一枚岩での決定では無かったが、杏子の決断によって決まり、二年生の冴子、沙月も、杏子を信じて従ったところがある。


そして奇しくも、その杏子の唯一の条件である瑠月の登録は、予選突破という戦略においても、重要な意味を持っていた。


拓哉コーチは、予選突破ラインを10本的中と見ていた。9本だとぎりぎり挑戦権があり、8本以下なら無理だろう。ただし、9本で競射になったことき、瑠月と花音の二枚看板での突破は厳しいだろう。


だからこそ、予選の舞台でなんとか10本の的中数を確保したかった。



インターハイ団体戦が始まった。何といっても、高校弓道の大会の華は団体戦である。日本全国から選ばれた強豪校が集まり、技と精神力を競い合うこの場は、選手たちにとって青春の全てを懸けた戦いの場だった。


光田高校にとっての今年の目標は、まずは予選突破。それが第一の壁であり、ここを越えなければ次の舞台に立つことはできない。そして今年の光田高校にはもう一つ特別な目標があった。


三年生全員がインターハイの舞台に立つこと。


この目標は、部員全員が心から望んだわけではなかった。団体戦の結果だけを求めるのであれば、杏子やつぐみを加えたメンバーが最適解であることは明白だった。しかし、この決定に大きな影響を与えたのが杏子の決断だった。


国広花音の提案という名前のお願いをされた時、まず瑠月がその道筋を示したが、杏子の決断が全員の方向性を決めた。

必ずしも一枚岩での決定では無かったが、杏子の決断によって決まり、二年生の冴子、沙月も、杏子を信じて従ったところがある。

そして、団体戦には三年生全員が登録された。


そして奇しくも、その杏子の唯一の条件である瑠月の登録は、部員全員の希望でもあり、予選突破という戦略においても、重要な意味を持っていた。


予選を突破するための目標的中数は10本。5人が4射ずつなので、半分の的中数が目標だ。

拓哉コーチはそのラインを明確に定めていた。10本に届かない場合、9本だとギリギリで、競射の権利は得られるかもしれない。しかし、競射となれば、花音と瑠月の二枚看板の力だけでは、突破は厳しい。

さらに、8本以下では可能性がほぼ消えるだろう。この厳しい条件の中で、予選突破の鍵を握るのはやはり瑠月の存在だった。昨日の個人戦でも見事に5位入賞した実力者だ。


「瑠月と花音とで7本。あとの3人で3本。それが実現可能なギリギリの数だろう。」

拓哉コーチはそう冷静に判断しながらも、全員で戦う姿を叶えてやりたいと心の中で祈っていた。


堂本海、西門理子、榊原夏美の三年生3人で3本を確保する。その上で、国広花音と奈流芳瑠月がそれぞれ3本以上の的中を決める必要があった。特に、安定感がある瑠月が皆中を出してくれれば。国広花音はプレッシャーに弱い面があり、試合本番では力を発揮しきれないことが多かったが、それでも彼女を信じるしかなかった。


試合は緊張の中で進んだ。堂本海が1本的中、西門理子が2本、榊原夏美も1本的中させる。そして国広花音が3本、奈流芳瑠月が皆中で4本。合計11本的中で見事に予選を突破した。


結果が発表された瞬間、部員たちは歓声を上げた。全員が肩を叩き合い、涙を浮かべる三年生たちの姿に杏子たち後輩も心を打たれた。


決勝トーナメント一回戦の相手は陽炎館高校。予選では13本的中という結果を残していた。この相手に挑むためには、予選以上の結果が必要だった。


しかし、光田高校は、最初の予定通り、純粋な三年生チームで戦うことになった。

瑠月も当初の予定通りを主張し、そして部員の誰もが改めて賛成した。試合は純粋な三年生チームで行われることになった。


試合の結果は、決勝で初めて的前に立つ咲宮さくらが緊張の中で1本的中、西門理子、堂本海、榊原夏美がそれぞれ1本、国広花音が2本。合計6本という成績で敗北となった。陽炎館高校の的中数は14本。勝敗は明確だった。


それでも、三年生たちは笑顔だった。本気で弓道に向き合った3カ月間の努力が、この結果に表れていたからだ。


試合が終わった後、三年生たちは後輩たちに何度も感謝の言葉を述べた。特に杏子には、この流れを作ってくれたことへの感謝、そしてかつての陰険な嫌がらせへの謝罪が繰り返された。


「杏子、ありがとう。本当にありがとう。」

涙を流しながら言葉を紡ぐ三年生たちに、杏子は穏やかに微笑むだけだった。


「もう覚えていません。それより、今日は本当に素晴らしかったです。」

杏子の言葉に、三年生たちはさらに涙をこぼした。


その場で涙を浮かべなかったのは杏子だけだった。つぐみが小さな声で言う。

「一番泣きそうなのは杏子だけど、杏子は泣かないね」


栞代が静かに答える。

「杏子は泣かないんだよ。泣いたら、おじいちゃんが死ぬほど悲しむんだ。だからおじいちゃんとの約束なんだ。悲しい涙じゃない時は、いいと思うんだけどな」


インターハイ団体戦は鳳城高校の優勝で幕を閉じた。雲類鷲麗霞の快進撃はまだまだ止まる様子はない。だが、杏子たちはすでに次の目標に目を向けていた。


栞代、紬、あかね、冴子、沙月、そしてもちろん、マネージャーとして支えてくれているまゆ――頼れる仲間たちとともに、杏子は夢を叶えるための挑戦への覚悟を、改めて固めた。





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