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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
389/432

第389話 ペア決めの儀 その2

「はい、それではこれより、地区親善大会のペア抽選会を始めます」

部室の中央に透明なアクリル製の抽選箱を置き、本日の臨時総務係を務める一華が、ホワイトボードの前でぴしりと姿勢を正した。


「抽選は公正に、透明に、そして淡々と執り行います。決定事項に対する異議申し立ては一切受け付けません。個人的な感情は各自で勝手に処理してください」


「……名言、出た」

真映がぱちぱちと拍手をする。


「抽選箱はこちら。ご覧の通り、完全に透明なケースです。ズルはしません、できません、させません」

栞代が念には念を入れ、その箱の蓋をガムテープでぐるぐる巻きに封をし、さらにその上から「封印」と書かれた手作りのシールを貼った。仕事が早い。


男子が封筒を一枚ずつ引く。順番は男子の予備抽選で決めた。その封筒の中に、女子の名前が書いてあればペア決定。なければ他校との合同チームへ。どこかのなんとか会議に似たシステム。


ただ、こちらは、自分では開封せずに、自分の名札の横に、引いた封筒を並べていく。

一華が封筒を開け、全てを確認していく。


そして、全員に向って告げる。

「まず、事前に決定している固定ペアから発表します」

一華が紙を読み上げる。


「杏子部長・まゆさん組。……選出理由については……皆さん、ご存知だと思いますので、省きます。このペアだけ抽選をしておりませんので、異議の有無を確認します。異議の無い場合は、沈黙でお応えください」

その場にいた全員が無言で、しかし深く頷いた。


「それではこれより、抽選結果を男子二年生から発表していきます」


「まず、立川さん。ペアは──楓さんです」

「「わぁーっ!」」

最初の発表ということもあって、部員たちから小さな歓声が上がる。楓はちらりとも立川の方を見ずに「……よろしくお願いします」と言い、深く頭を下げた。立川が「はい、はいっ!」となぜか二回返事をした。……緊張しているのか、君は。


「次に山下さん。ペアは──紬さんです」

紬は"それはわたしの課題ではありません"とでも言いたげな完璧な無表情。山下は男子部長らしく、丁寧に深く頭を下げた。


「続いて、松平さん。ペアは──栞代さんです」

松平がこれまた深く頭を下げた。「あ、あの、よろしくお願いします!」

「ん。……ただし、必要以上に近づいたら刺すから」

栞代がにっこりと微笑む。……冗談なのか本気なのか、誰にも分からない。

「他の女に向いてるやつ、興味ないっすよね、若頭」真映がまたいつもの調子でイランことを言う始末。


「そして一ノ瀬さん。ペアは──あかねさんです」

「「はいっ!」」

二人の返事の声が無駄に美しく揃った。

そして──場が一瞬ざわつくその名前が。


「そして、二年生最後の海棠さん。ペアは──ソフィアさんです」

──沈黙。

からの、爆発。

「「「うおおおおおおおおおおおっっ!!!」」」

一年男子たちがその場で次々と崩れ落ちていく。


『初志貫徹!』

百折(ひゃくせつ)不撓(ふとう)!』

堅忍(けんにん)不抜(ふばつ)!』

滴水(てきすい)穿石(せんせき)!』

有志(ゆうし)竟成(きょうせい)!』


なぜか一年男子たちの悲痛な叫びは、海棠先輩への四字熟語大会になっている。

当のソフィアはいつもの穏やかな調子で、

"Kiitos. Nice to team up. ……よろしくお願いします"

と。

海棠はと言えば。「……ありがとうございます」と天に向かって五回ほど連続で呟いた後、完全に酸欠の金魚になった。


「……以上で二年生男子は終了です。残るは一組なんですが。一年生、鈴木くん。ペアは──つばめさんです」

一年生同士のペア。


「そして、最後のペアは、中村くんと、真映」

真映だけ「さん」付けなし。一華の不安が伝わる。


どうみても作為的なものが入り込む余地は無かったのに、ペアにならなかったのは一年生ばかり。

一年男子四名は、他校との合同ペアに回ることになる。自分で選んだ抽選の結果なのだから不満の持っていく場所はない。むしろ「いざ、外の世界へ! 武者修行に行ってまいります!」とその場で一瞬にして切り換え自撮りをしていた。たくましい。


読み上げるたびに起きた歓声と悲鳴。高校生らしいお祭り騒ぎだった。

光田高校は基本的に男女別で練習し、交流は少ない。これは杏子の祖父対策、という訳ではもちろんなく、それは副次的なことだ。以前部活が堕落した経験から得た、一種の防衛策の一環だ。悪い影響は受けないように、というシステムである。


抽選の間中、杏子とまゆだけは「完全に他人事」モードでにこにこと拍手を送っていた。


「ふふっ。わたしたち平和でよかったね」

そう言ったあと、杏子は急にぐっと声を潜めて「……あ、でもまゆ、ほんとは松平さんと組みたかった?」と真顔で訊ねる。この無神経さは無邪気さの裏返しだ。まゆはもう手慣れたもの。

「ううん。杏子と組めるのが一番の栄誉だよ。そんなことより、女子みんなの嫉妬が恐いわ~」

と、珍しくまゆが冗談で返した。冗談?

いや、決してそうではないようだ。


まゆのその天使の笑顔。発言を小耳に挟んだ松平はがっくりと肩を落としながらも、すぐに相好を崩した。推しの笑顔は強力だ。


「──では、この組み合わせで親善大会に向けて調整を開始します。大会の目標はあくまで"交流"です。が、ただし"交流"は"当たらない言い訳"には決してなりませんので、その点くれぐれも留意してください。真剣にならない場合はすぐに分りますので」


一華の視線と口調に慣れていない男子部員たちは、びくりと身体を震わせた。

気軽な交流じゃなかったの? 


そして、一部の女子から、まゆが恨めしい目で見られていたことも、言うまでもない。

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