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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
363/432

第363話 代筆された反省文(顛末編)

光田高校 校内 

杏子、栞代、あかね、まゆ、そして真映、一華がまとまって弓道場に到着。

更衣室に入るが、杏子がなにかそわそわしている様子。

栞代、ピンと来る。しまった、と少し後悔。


栞代「……おい、真映」

真映「はい、なんでございましょう、若頭」


栞代 (じろり、と睨みつけながら)「おまえ、また頼んだな」

真映「え? は? な、なんのことでございましょう」


栞代「オレを誤魔化す気じゃないだろうな」

真映「 い、いや、若頭! め、滅相もございません!

あ、あの、その……親分から、「もう一回、おじいちゃんに頼んでも、いいんだよ」と……い、言われまして……」


栞代「……ほう。お前、その責任全部、杏子になすりつける気か? いつも、なんて言ってたっけ? 『親分と生死を共にする』? 」

真映「む、むぎゅう……(潰れた鳴き声)」

あかね「……その、潰れたカエルみたいな鳴き声、文章じゃなくて、ほんまに口に出すやつ、初めて見たわ。」


真映「そ、その・・・・」

栞代「分かった。今日、練習終わったら杏子ん家来い」

真映「は、はい!」

栞代「協力してやるから、今度こそ自分の力で書け」


真映「まことに申し上げにくいのですが、あ、あの、ワタクシ“疾風の真映”、スマホを没収中の身に付き、母上様に、連絡する術が、ございません!

栞代「そやな。今からオレが電話する」


真映「えっ。あ、あの、若頭、母上には、今回の件は、何卒(なにとぞ)ご内密に……!」

栞代「わたった。だが、先生から連絡があったら知らんぞ」


真映「あ、担任の北澤師匠は、仏の生まれ変わりで、めちゃくちゃ優しいんです。現段階では、恐らく、大丈夫かと……!

栞代「お前は、そんな優しい先生の期待を裏切ったんやで・・・・・」


(栞代、自分のスマートフォンを取り出し、真映の母親の番号に、電話をかける)


栞代(電話)「もしもし、真映さんのお母様でしょうか? いつもお世話になっております。光田高校弓道部の、栞代と申します。」

真映の母上 (電話の向こうで、明るい声がする)

「まあまあ、栞代ちゃん! こちらこそ、うちの真映が、いつもお世話になっております。大変でしょう、あの子の世話は(笑)。それで、急に、どうしたの?」


栞代「いえ、今日、練習の後に、杏子の家に行くことになりまして。真映さんのスマホが、ちょうどバッテリー切れまして、代わりに、お電話しました。……真映さんに代わりますね。」


(栞代、真映にスマホを渡す)


真映「あ、母上様。本日、親分に晩餐のお誘いを受けまして。親分の言葉には絶対に従わねば、渡世の義理が果たせません。よって、本日の夕食の用意は必要なくなりました。……もしも、万が一、帰らない時は、あなたの愛する娘は、宇宙人によって宇宙に連れ去られたものと、諦めてください」


真映母 (電話の向こうで、少しも、動じていない)

「……はいはい。いつもながら、よう分からんけど。気をつけて帰ってくるんやで。」

真映「夕食の準備、無駄にしてしまい、誠に申し訳ござらん」


真映母(電話越し)「ううん、まだ、全然、手もつけて無かったから、むしろ一人分減って助かったわ〜。じゃあねー。宇宙人に会ったら、よろしく言うといてな。」

真映「・・・・・・・・・・・・」

(電話が、ぷつ、と切れる)


栞代「……真映。お前、お母さんと話す時も、その口調、一切、変わらないんだな」

真映「当然でございます。これこそが、“疾風の真映”の、生き様なのでございます。」


(栞代は、呆れてため息をつくと、そのまま別の番号へと電話をかけた)


栞代「——あ、おじいちゃん? オレ」

祖父(電話の向こうで、弾んだ声がする)「おお、栞代か。電話とはめちゃくちゃ珍しいのう。練習はどうしたんじゃ? ま、まさかぱみゅ子になんかあったのか?」


栞代「いやいや、杏子はいつもと変わらず元気だよ。オレもついてるだろ。安心しろ」

祖父「そ、そうか。と、いうことは。

……は、は~ん。分かったぞ。

練習の前に、どうしてもわしのダンディな声が聞きたくなったんじゃな。

かわいい奴よのう。

なんなら、今からビデオ通話に切り換えて、わしの輝く顔も見るか?」


栞代「・・・・・・・・・・・・」


(しばらく無言で天を仰ぐ。……この二人、本当は、血ぃ繋がってんじゃねえか……?)


祖父「あれ? 電波が、悪いのか? 切れたのか? もしもし? もしもーし?」


栞代「……ふーっ。あのさあ、おじいちゃん。いつも、言ってるだろ。寝言は寝てから言うように、って。

ところで、おじいちゃん、今、杏子から“真映の反省文”の第二弾”の件で、連絡行っただろ?」


祖父「は? なんのことや? さっばりワカラン。記憶にございません」

栞代「 ……白々しい」

祖父「え? い、いや、全く、知らんぞ? あ、何も思い出せん。こ、ここは、どこ? わしって、だあれ?」


(わざとらしく、記憶喪失のふりをしている)


栞代「はいはい。もう、いいんだよ、おじいちゃん。真映が、全部白状したから。気をつかわなくて、大丈夫。」


(栞代、スマートフォンの、スピーカー機能をオンにする)


真映「ご、ご隠居ぉぉぉ……! すいませんっ。わたくしめ、若頭に全てバレ申した……!」

祖父 (スピーカーから、祖父の陽気な声が響く)「そうかあ……。栞代は目が利くからなあ。真映さんの敵ではなかったようじゃなあ」


栞代「ということで、もう反省文、書かなくていいから」

祖父「栞代、ぱみゅ子同様、栞代の頼みも喜んで叶えることこそが、わしの生きがいじゃ」


栞代「ほんっとに口がうまいんだから、おじいちゃんは」

祖父「——と言いたいところなんじゃが、栞代、もう遅いねや」

栞代「は?」

祖父「今、たった今、書き上げて、杏子に送ったところじゃよ」


真映「えっ……!」(パッと顔が明るくなる)

一同「「「はやっ!」」」


栞代「まだ全然時間経ってないやん。まさか、AIでも使ったのか?」

祖父「栞代くん。そこに座りなさい」

栞代「なんだよそれ?」


祖父「わしがそんな無機質なもんに頼むかい! この、天才ライターのわしを舐めるなよ!昔は本屋大賞にも推薦されたんじゃぞ?」

栞代「え? そんな話、初めて聞いたぞ!」


祖父「ま、推薦したのは、わし一人で、しかも書店員でも無かったから、まるで相手してくれんかったがのう。相手にしてくれたのは、嫁さん一人だけだったんじゃ」

栞代「はー。なんだ、おばあちゃんの苦労話だったんか」

祖父「な、なんじゃと。わしの力の凄さは、もう証明しただろうが」


栞代「はー……。そりゃ、えろう、すんませんでした。でも、今回は、さすがに真映自身に書かせないと、反省にならんからさ。」

祖父「えらいド正論じゃの」


栞代「ただ、まあ、可愛い後輩を見捨てるわけにもいかんからさ。

練習が終わったら、真映、連れて行くから。手伝ってやってよ。」


祖父「おう、了解了解。ところで何か食べたいものあるか?」

真映すかさず「カレーライス!」


祖父「ははははっ。分かった。用意しておくな。わし特製の絶品カレーをな」

真映「えっ? あの……できれば、おばあさまに、作ってもらってください……。」


杏子 (むっと、膨れて)「もう! おじいちゃんのカレー、すごく美味しいんだよっ!」

栞代「おじいちゃん、そういうことで、両方頼むね。もう、練習始まるから切るよ」


(栞代、電話を切る)


杏子、真映の頼みをこっそり聞いたことに少し罪悪感があった。


杏子「あ、あの……栞代」

(申し訳なさそうに、上目遣いで栞代を見る)


栞代(杏子の頭をくしゃっと撫でながら)「怒ってへんよ。優しいのはいつものことや。」

あかね「つーか杏子のおじいさん、筆速すぎやろ……」

まゆ「プロだね……」


(その時、それまで黙っていた一華が、すっと一歩前に出る)


一華「部長も栞代さんも、甘すぎます。真映にだけ、どうしてそんなに甘いんですか」

真映「ひ、ひどい! これは学内治安維持局による端末差し押さえという国家的弾圧であり——」


一華「ほら。こうして今も、事実をふざけて誇張して、反省の色が全く見えません」

栞代「……一華。困った時、杏子は相手が誰であろうと絶対に助けるよ。それは、お前が、もし困った時でも同じ。絶対に助ける。オレもな」


(ほんの一拍、静寂)


杏子「 う、うん! もちろん! 一華に困ったことがあったら、わたし、全力で助けるよ! 当たり前だよ!」

一華「……わ、分かりました。……私は、絶対に規律は守ります。ですが、相互扶助の精神は、否定しません」


栞代 「よし。ところで、杏子のおじいちゃんのカレー、ほんとに結構美味いぞ。一華も杏子こいよ」

楓「ずるいっ。栞代さん、わたしも食べてみたいですっ」

栞代「え? ちょ、ちょっと待って。もう一回連絡してみるわ・・・って、他にも今日時間空いてる奴いる?」


結局、一年生カルテットが杏子のところに行くことになった。二年生はまたの機会に、と決まる。

開始時間が少し押した。


更衣室に、ふわりと笑いがこぼれ、空気が練習前のものへと、戻っていく。


栞代「ほな、行くぞ。真映、お前の反省は、まず稽古で示せよ」

真映 (ビシッと、敬礼して)「押忍!」

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