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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
223/432

第223話 個人戦の夜

大会初日の夜──宿舎に響く青春の調べ

個人戦の余韻と新たな始まり


全国選抜大会初日の個人戦が終了し、夕闇が宿舎を包む頃。栞代の驚異の 5位入賞 を祝って、光田高校弓道部の面々が集まります。


「栞代、おめでと」

杏子が満面の笑みで迎える。

真映が続いて

「3位まであと1センチも無かった。栞代選抜、わたしの魔力が及ばず、申し訳ありませんっっ」

と叫ぶ。

「いや、お前の魔力はあてにしてないから」と栞代は笑つ、そして続けた。


「そやけどな、真映。明日はもう大いにお前の魔力を発揮してくれ。何といっても本番は明日の団体や。みんな、今日以上の応援を、贈ってな」


その言葉を聞き、杏子も穏やかに頷きます。

弓道部に入り、事実上、常に全国に導いていた杏子だったが、目標としている団体戦に出場するのは、始めてだった。いろんな思いが去来し、緊張が高まってくる。


「栞代先輩、いつもはぼーっとしてるか、弓握って宇宙に行ってるかの部長が、珍しく緊張してんですよ~。珍しいから、わたし、動画録っておきましたっ」

ケラケラと笑いながら言う真映に向かい、栞代は、

「お前はやっぱりオレの警告に従わなかったな。あとで、部屋にこい」

と低い声で言い、真映を黙らせた。といっても、別に真映は特に気にしている風ではない。


後方に座る一華と紬は、資料を広げながら明日へ向けた最終確認をしている。一華の指摘に、いちいち「それはわたしの課題ではありません」と応えている姿に、横でソフィアが笑っている。


一瞬静かになったと思ったら、また、真映が口を開いた。


「部長~! 部長のことやからまた宇宙行くと思うけど、ちゃんとわたしの通信受け取ってくださいよ~」


栞代が笑いで応じ、

「お前の通信、なんか恐いわっ」

と返します。


栞代が静かに杏子の肩に手を置いた。

「ま、ほんとに大丈夫だとは思うけど、杏子始めてだもんな、全国団体の舞台。ちゃんとおばあちゃんにも見てもらお」

こう声をかける。杏子の祖母は、まさにこの選抜大会で全国2位。祖母が持っていない金メダルを送りたい。

杏子は、改めて思った。



対面のテーブルでは、弓道部の男子が喜びを分かち合っている。


「海棠、やったな!」

男子は、海棠哲平が、13位という好成績を残した。

普段は松平と馬鹿ばかりしている海棠の顔が、赤く染まりながらも嬉しそうに緩んでいた。13位という結果は、男子部にとって予想以上の快挙だった。全国の舞台で結果を残すことの難しさを知る部員たちにとって、この順位は希望の光そのものだった。


突然の懇願


明日団体戦があるので、女子は早めに部屋に戻ることになった。

その宿舎の廊下で、栞代が部屋に戻ろうとしていた時だった。


「栞代さん!」

振り返ると、海棠の親友である松平が駆け寄ってきた。いつも馬鹿ばっかりしている松平の顔に、珍しく切羽詰まった表情が浮かんでいる。


「どうした?」


「実は…海棠のことなんですが」


松平は周囲を見回し、声を潜めた。


「海棠、ソフィアさんの大ファンなんです。今日の結果も、ソフィア先輩の応援があったからこそ頑張れたって言ってて…」


栞代は眉をひそめた。「それで?」


「10分だけでいいんです。話をさせてもらえませんか?お願いします!」


180度折り畳んだかと思う松平の必死な頼みに、栞代は思わず苦笑した。


「幸せな奴やなあ。ま、ちょっと相談してくるから待ってて」


相談の連鎖


栞代はまず、部長である杏子のもとを訪れた。杏子は部屋のベッドに座り、明日の団体戦に向けて静かに心を整えイメージトレーニングをしていた。


「杏子、ちょっと相談があるんだけど」


事情を説明すると、杏子はニコニコして応えた。


「ソフィアさんが嫌じゃなければ。もし嫌なら、栞代が断ってあげてね」


「おっけ。じゃあ、紬にも聞いてみよう」


二人は紬の部屋に向かった。ドアをノックし、事情を話すと、紬は予想通りの反応を見せた。

「それはわたしの課題ではありません」


しかし、栞代も杏子も、紬がこういう時は決して否定していないことを知っていた。むしろ、こうした時の紬は、誰よりも相手のことを考えているのだ。


「じゃ、いよいよソフィアだな」


ソフィアの快諾


ソフィアの部屋は、みんなと同じ部屋なのに、なぜか異国情緒がする。事情を聞いたソフィアは、目を輝かせた。


「本当に?海棠が私のファンなの?」


「そうみたい。どうする?」


「もちろん大丈夫!」ソフィアは即答した。「日本は恋愛については奥手だと聞いていたけど、海棠は勇気があるのね。とても素晴らしいことじゃない」


10分間の会話


宿舎の談話室で、海棠とソフィアの短い会話が始まった。松平と栞代、そして杏子、紬が少し離れたところで見守っている。


海棠の緊張は手に取るように分かったが、ソフィアの自然な笑顔に少しずつ緊張がほぐれていく。


「今日は本当におめでとう。13位は素晴らしい結果よ」


「ありがとう。ソフィアさんの応援があったからです」


「そんな…私は何もしていないわ」


海棠は真剣な表情で続けた。


「夏の団体戦で総体に行けたら、またその時にお話しさせてください」


ソフィアは微笑んだ。「もちろん大丈夫よ。一緒に弓道を頑張りましょう」


その言葉を聞いた海棠の表情が、まさに天使のように輝いた。


海棠が立ち去ろうとした瞬間、紬が海棠になにかメモを渡していた。

「それ、ソフィアの好きなアニメ一覧。一話でも見てたら、話題盛り上がるから」

「あ、ありがとう、柊さんっっ」

「それはわたしの課題ではありません」


横で聞いていた栞代、杏子、そしてソフィアが笑っている。


男子部員の決意


松平が男子部員たちに報告すると、部屋は一気に沸き立った。


「ソフィアさん、やっぱり最高じゃん!」

「絶対に総体に行くぞ!」

「海棠だけじゃねー。今度は俺たちも話してもらうんだっ」

松平を除く全員が、ソフィア派だ。


遅れて戻ってきた海棠が松平に呟く。

「サンキューな、清純。総体に行けたら、俺が責任をもって、まゆさんにたのんでやるから」

松平清純は、「あ、あかねさんの壁は高いぜ」と言いながら、顔はまっ赤になっていた。



夜の対話


部屋に戻る途中、栞代がニヤニヤしながら杏子に軽く尋ねた。


「杏子、ソフィアが羨ましい?」


杏子は首を振った。「今はおばあちゃんに金メダルをプレゼントすることで頭がいっぱい。それ以外のことは考えられない。それに・・」


「それに?」


「おじいちゃんが居るからね」と杏子は笑い、


「栞代こそ、そういうのはどうなの?」


「杏子の夢を応援することで頭がいっぱいだわ」

栞代は一呼吸おいて、

「それに、おじいちゃんが居るからな」

といって、二人で笑った。


「ありがとう。でも無理はしないでね」


「無理はしてないよ。なあ、紬?」

隣を歩いていた紬が、いつものように一つも表情を変えずに答えた。

「それはわたしの課題じゃありません」


三人の笑い声が、宿舎の静かな廊下に響いた。明日の団体戦を控えた夜、光田高校弓道部はいつもと変わらない、いつもの姿がそこにあった。


リラックスと集中。

栞代は、杏子の祖父がしつこく繰り返していた言葉を思い出した。

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