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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
高校入学から県大会
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第20話 学生生活

連休明け、遠征から帰って来た次の日、弓道部は朝練習が休みだった。しかし、杏子は昨日弓を引いていなかったため、中田先生の道場を訪れ、じっくりと1時間ほど引いてから登校した。彼女にとって、弓を引かない日はどこか落ち着かないものだった。


学校に入学してから一か月が経ち、杏子は新しい環境にも慣れてきた。中間テストまであと二週間、その直後には地区予選が控えている。この時期は勉強と部活の両立が求められるため、部員たちも忙しさを増していた。



練習試合明けの今日は、視聴覚室でミーティングが行われた。遠征メンバーと1年生全員が集まり、滝本先生の指示で練習試合の振り返りをすることになった。試合で感じた課題や改善点を洗い出し、地区予選への準備を進めるためだ。特に遠征に参加しなかった1年生にとっては退屈な時間になりがちだったが、これも重要な部活動の一環だと皆理解していた。


話し合いでは、男女別に意見を交換し、共通して浮かび上がった課題は、「二順目で崩れた」ことだった。特に女子は、試合の緊張が出る一順目は、杏子が大前(一番目)でいつも通りの落ち着いた射を示してくれたおかけで、安定して射てたが、一順目でリードしたことによって、試合に勝ちたいという欲が出て、射が乱れた。

二順目は、まだ体力的には問題が無かったため、集中力の問題もあるが、多くの部員が「メンタルトレーニング」の必要性を挙げた。弓道そのものが精神力を鍛える面を持つものの、より意識的な取り組みが求められているのだ。


この中で、2年生の瑠月が「練習ノートをつけるべきではないか」と提案した。練習内容や反省点を記録することで、各自の課題を可視化しやすくなるという意見に、部員全員が賛成した。瑠月は、自ら崩れたこともあり、メンタルトレーニングの重要さについて自力で調べていたようだった。ノートに書く項目については、滝本先生の助言を受けながら決めることになった。


さらに、部長の花音から、日々の的中率の記録を部として共有する案も出された。これまでは個々の責任で管理していたが、部全体で統一的に記録をつけることで、課題の共有と改善がスムーズになるという期待があった。1年生が基礎練習の時間を利用して記録を取る案や、マネージャーの必要性についても話し合われた。


1時間にわたる話し合いの後、部員たちはまとめた内容を滝本先生に報告。滝本先生はこれを受けて、テスト前後の練習方針について報告した。


例年、テスト一週間前から部活動は全面禁止だったが、今年は地区予選がテスト終了直後に迫っているため、特別措置が取られるようになった。朝練習は禁止のままだが、放課後は時間制限付きで練習が許可されることになった。この変更は、昨年から滝本先生が学校側と交渉を重ねた成果だ。ただし、赤点を二回連続で取った生徒には練習制限がかけられるルールも追加されたが、幸い現時点では該当者はいなかった。

期末テストは、県予選の後なので、勝ち抜いていたら、全国大会への練習期間になる。次のためにも、今回も赤点はなんとしても避けなければならない。


また、この時期の練習は基本的に自由参加となった。光田高校弓道部は、いつも弓道部の練習は自由参加なのだが、この期間は参加しない方に重点が置かれた。1年生は特に理由がない限り参加しないことが決まった。これにより、1年生が勉強に集中しやすい環境が整えられた。


その後の練習では、試合後の穏やかなムードの中、部員たちが感覚を取り戻そうと各自で基礎練習に励んでいた。コーチの姿がまだ見えない間、杏子が他の部員たちの射型を丁寧に助言していた。試合で見せた彼女の美しい射型が記憶に新しい部員たちは、その安定感に改めて感心していた。


実際に弓を射っても、練習していないはずの杏子の安定感がずば抜けていたため、皆が感心すると、「今日の朝、道場で引いてきたの」と杏子が何気なく話した。部員たちは驚きの表情を見せた。杏子は、当初、学校ではほかの一年生と同様、基礎練習だけしていたが、学校の練習だけでなく、自分で時間を作って道場で弓を引いていることが明らかになった。


杏子の弓道への熱意が一層際立った。時間や労力を惜しまない姿勢に、部員たちは彼女への尊敬の念を抱かずにはいられなかった。


とはいえ、杏子にとっては、自分にとって楽しいことをしているに過ぎなかったのだが。


「学生の本分は勉強」とはよく言われるが、文武両道を目指す弓道部の部員たちにとって、どちらも疎かにはできない。これから迎える中間テストと地区予選の両方に向けて、部員たちはそれぞれの目標を胸に、忙しい日々を乗り越えようとしていた。杏子にとっても、この時期は弓道への情熱と勉強の両立を試される大切な時期だった。


試合で得た課題を胸に、弓道部の部員たちは次なる試合に向けて小さな一歩を踏み出した。それは決して派手ではないが、確実に未来につながる大切な一歩だった。

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