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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
188/433

第188話 中間テスト

地区予選を突破したチームは、学校の中間テストを迎えることになる。


一つの教科で2期連続で赤点の場合、強制的にクラブ活動の参加が禁止される厳しいルールがある。

この中間テストで赤点を取り、期末も、となると、年末に控える選抜大会への出場ができなくなる。


本気で全国優勝を目指す弓道部には、特に杏子、栞代、つばめ、紬というレギュラーメンバーは、かなりのプレッシャーだった。


試験一週間前にはクラブ活動は休止され、弓道部恒例の勉強会が開かれる。

ただ、杏子が弓を握らないと精神不安を起こす、ということで、弓道部の特例で、早朝練習は許されてはいた。毎日欠かさず参加しているのは、杏子と栞代だけだったが、これはむしろ、杏子と栞代が相談して、強制した。特に一年生のつばめには、勉強を優先するように伝えた。


そこへ受験勉強に忙しいはずの瑠月も顔を出す。

「相変わらず、朝、弓引いてるんだね~、杏子ちゃん。むしろ、朝勉強した方がいい気がするけど」

「いや、瑠月さん、それすると、杏子、勉強イヤなもんだから、永遠に弓から離れないんですよ。朝だと授業が始まるので強制修了しますけどね」

と栞代が笑う。


杏子とソフィアは、お互い苦手な英語と国語を毎日少しずつはチェックしていたが、テスト対策、としては瑠月の持ってきた、先輩から受けついだ過去問、練習問題を真剣に解いていた。


瑠月はテスト勉強、受験勉強と忙しいはずなのに、一週間、びっちりと部員に付き合ってくれた。


さらにあかねは、まゆがつきっきりで、真映は一華がこれまたつきっきりで面倒を見ていた。


弓道部初の赤点は、あかねか真映かと言われていたが、圧倒的に支持を集めていたのは真映で、その分、心配と真剣が入り交じった。


中間テストの前日。

弓道部の部室は、弓を手にする代わりに赤ペンと蛍光マーカーが飛び交っていた。


畳の上に広げられた教科書とノート。武具棚に立てかけられたままの弓が、どこか寂しげにこちらを見ているようだった。

真映が、疲れ切った表情で叫んだ。

「あ~。早く弓を引きたい。テストの点は引いちゃだけだけどな~」

「くだらね~こと言ってないで、単語の一つも覚えんかいっ」

栞代がつっこむ。

「大丈夫ですよ、栞代さん。最後はパッションで乗り切りますから」」

「パッションで合格するの、たぶんダンス部だけやで?」

と、関西の血が入ったかのような一華の鋭いツッコミ。


真映は口をとがらせながらも、ペンを動かし続けている。


その隣で、ソフィアが淡々と杏子と英語の問題集をめくっていた。

「Kyokoは本を読むの好きだから、英語の本も読んだらいいのよ」

「読めないよ~」

「絵本から始めたらいいんですよ。Tsumugiなら、アニメで英語も勉強できます。実際にわたしは日本語をアニメで勉強しました」

紬とソフィアがドヤ顔で杏子を見ていた。



まゆは、あかねの国語のプリントを片手に、目線だけで指示を出している。

「……これ、まちがってるよ」

「あっ、ほんまや。まゆ、天才やな」

あかねはにんまりしていたが、まゆは「覚えたらいいだけだよ」と手をひらひらさせるように否定のジェスチャー。


その時、扉が軽く開いた。


「みんな。頑張ってる?」

引退したばかりの瑠月が、静かに顔を出した。

教科書の山を見て、「うん、壮観」と軽く笑うと、コンビニ袋を取り出し「ほら、差し入れだよ。糖分取らないと、頭働かないからね~」

と言って、ハーゲンダッツを配る。

「あ、わたし、これ」

「あっ、真映、それわたし」

と騒がしいのを見た瑠月は「しまった。一種類にしたら良かった」

と呟いた。


そして、瑠月は、ノートを差し出した。


「これ、過去問の分析とまとめ。まずここから抑えて」

「ありがとうございます、瑠月さん」

杏子が深くお礼をする。

「今日も時間まで居るから、分らないところがあったら言ってよ」


明日の教科に向けて全力スパート。これがテスト期間中続く。

そんな中、

「瑠月さんがわたしに変装して、わたしが瑠月さんに変装して、交代で受けましょうよ~」

真映が叫ぶ。栞代がすかさず

「おい、真映。瑠月さん、学年でトップ争ってるんだぞ。代わりになるかよって、だいたい、お前、一年じゃん。三年生のテスト、ワカランやろ」

「マークシートならなんとか」

「なるかっ」

「でも、そうすると、わたしが学年トップに」

「こらっ。そんな手が使えるなら、わたしがとっくにやってる」

とあかねが参加しだす。

「よしよし、じゃ、ま、アイス食べたら、勉強に戻るぞっ」

と栞代が締める。

そんな様子を見ながら、瑠月は、にこにこしてた。去年は沙月が締めてたっけな。


テスト本番。

終了。


解放された喜びから、弓道部は一気に、県大会に向けてスパートをかける。


そして迎えたテスト返却日。


「ぬあああああ! 英語のリスニング、まさかの満点!!」

真映が教室のドアを揺らす勢いで叫ぶ。

「ありがとう、ソフィア先輩っっそして、一華っっっ。今度ハーゲンダッツ分けたげる」

一華が頭を押さえながら、「……わたしの心労も報われました」と目頭を押さえているふりをした。「でもハーゲンダッツは一個まるまるちょうだい」


杏子は、そっと通知表を閉じてソフィアの方を向いた。

「ソフィア。ありがとう」

ソフィアは、小さく微笑んでうなずいた。本物の英語が身近に居るのは、とても強い。


まゆは、堅実に上位をキープし、あかねもまずまず。


心配されたソフィアの国語系のテストも問題なし。そして杏子の英語も。


全員、赤点なし。


真映が「これで選抜大会に出場決定ですね」

と叫ぶので

「県大会勝たないとあかんけどな」

とあかねが返す。


祖父に報告する杏子は、言葉数こそ少なかったが、「ソフィアのおかげで、英語の苦手意識がなくなったなあ」という一言に、祖母は、かならず家に招待するように言いつけた。


こうして、光田高校弓道部は、心置きなく、次なる戦場――県大会に向けて、再び弓を握ることができた。

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